シナリオ【逃避行】 3 | Novel & Scenario (小説と脚本)

Novel & Scenario (小説と脚本)

お越しいただきありがとうございます。
このサイトはKATARAのオリジナル小説とシナリオを掲載してます。

5月30日に小説「逃避行」のビデオコンテを公開しました。

 

 


 

●荒野(朝)

 

遠くに動きが見える。馬に乗った一団。少女を追っていた男たちが来る。

 

 

 

 

●小屋

 

男が目を覚ます。だいぶ気分がいい。周囲を見まわす。血だらけになった衣服が綺麗に洗われ干されている。少女は離れた場所で眠っている。その手首に紐が緩く結ばれ、紐は男の手元まで伸びている。男がいつでも少女を起こせるようにしたもの。

 

男が紐をつかんで引くと少女が目を覚ます。手首の紐をほどきつつ毒消しをよそいに行く。男は自力で上半身を起こし、少女はそれに気づいて回復に安堵。椀を手渡す。

 

男「(飲み干して椀を返す)逃げなかったのか」

 

少女「?」

 

男「(囲炉裏の土鍋を見て)つくったのか」

 

少女「(囲炉裏を振り向いてうなずく)」

 

男「腹が減ったな」

 

少女「(うなずいて囲炉裏へ。干し肉を茹でたスープをよそう)」

 

男「(見ている)」

 

少女「(椀と匙を手渡す)」

 

男「ああ(受け取って)あんたも食ってくれ」

 

少女「(うなずいてよそいに行く)」

 

男「(食べる)」

 

 

 

 

●川

 

雪原に崖があってその下に流れている。川幅は広い。馬に乗った追手たちが川辺に来る。「この川は渡ってない」「むこうだ」と川下に馬を進めていく。

 

 

 

 

●小屋

 

男が寝床で上半身を起こし、傷口に巻いていた布を少女が取り換える。

 

 

 

 

●洞窟

 

少女が血のついた布を洗っている。洗い終えて絞る。水音がやむと静寂。その中で少女が気づく。洞窟の入口へ。

 

 

 

 

●断崖絶壁

 

少女が洞窟から顔を出し海を見おろす。岩場に砕けている波。落ちたら助からない高さ。波音は聞こえない。

 

少女が気配を感じ崖の上を見上げる。そして身を隠す。

 

崖上に追手たちが来たところ。「この辺か」「おそらく」「断崖の一番でっぱりだ」「どうする」「下りて探すしかあるまい」「下りられるかよこんな崖」

 

少女、洞窟内に急いで引き返す。

 

 

 

 

●小屋

 

男が野ウサギと刃物を持って出てくる。

 

男「(少女に気づき)洗濯はもういいか。こいつをさばく。片手でできるかわからんが」

 

少女「(男の服を引いて入口へ)」

 

男「どうした」

 

 

 

 

●断崖絶壁

 

洞窟の入口から少女が崖上を見上げ、あとから男が顔を出して見上げる。

 

追手たち「生きてないだろ。この高さだぞ」「だったら死体を探すんだ」「とっくに海だよ」「娘の服でもいい。とにかく死んだ証拠だ」「小娘ひとりになぜこんな手間を」「根絶やしにした証拠が欲しいんだ、オカシラは」

 

男「(少女に小声で)あんたのことか」

 

少女「(うなずく)」

 

追手たち「しかしここからは無理だ」「さっきの川も同じ。滝になってる。下りられん」「この崖に沿って2日戻れば、なんとか下りられる場所があるらしい」「そこから2日かけてまたこの下に?」「岩場だからもっとかかる」「岩場が続いてるのか」「それもわからん」「ここだ。ある綱を全部つなげば足りるだろ」「誰が下りる」「おまえさ」「勘弁してくれ」「明日の朝までに準備しろ」

 

追手たちが引き返していなくなる。馬の足音やいななきも遠くなる。

 

男と少女が無言で顔を見合わせ、

 

 

 

 

●小屋

 

脱出準備のモンタージュ。男が弓矢や短刀の準備、残りの食料などを袋に詰め、砂金は懐に入れる。少女に毛皮の上着を渡す。それらに男の声が重なる。

 

男の声「なぜ探してる? 追われてる?(間)まぁいい。このそばで下りられたら、ここは見つかるかもしれん。逃げるなら今夜だ。逃げてもここが見つかれば、あんたは生きてるんじゃって探される。そいつを着ろ」

 

少女が最初に着ていた上着を男が海に捨てる。

 

 

 

 

●日没後の空

 

雪が降り始めている。

 

 

 

 

●洞窟内

 

たいまつを持った男が来る。そのあとを少女。男がたいまつを捨て天井の石を動かす。

 

 

 

 

●荒野(夜)

 

雪はやんでいるが薄く積もっている。男が地面から顔を出す。雪に舌打ちし、見まわす。少し離れて追手たちの野営地。狼除けのたいまつが焚かれている。

 

男「(頭を引っ込め考える。それから少女に)ここにいろ(と言って地上に出る。野営地に向かう)」

 

仮設のテント。内部に明かりはなく寝静まっている。男が忍び寄ると追手のひとりが出てくる。男は身を伏せ息を殺す。出てきたひとりは寝ぼけている感じ。フラフラと歩いて寒さに震えながら立小便する。テントに戻っていく。

 

男は馬用のテントを探し侵入。馬たちは地面に打たれた杭に手綱がつながれている。出口近くの1頭(片耳が白い特徴のある馬)の手綱をほどき、鞍を盗んで連れていく。

 

少女の待つ穴のところに男が馬を引いてくる。少女は穴を出る。

 

男「これで逃げる(鞍をつけ荷物を下げる)足で逃げるのは無理だ。足跡ですぐ見つかる」

 

少女「(それでも石の蓋を動かして穴をふさぐ)」

 

 

 

 

●モンタージュ

 

雪を蹴散らして走る馬。乗っている男と少女。川辺に来る。崖になってない場所から川に入り浅瀬を走る。冷たい水のしぶき。馬の吐く息が白い。馬の全身から湯気が上がる。雪の少ない川辺から馬を上げる。足跡がつかないようにするため。明るくなり始める空。雪原を疾走。それらに男の声が重なる。

 

男の声「馬を盗んだのに気づかれるのは早くとも朝。それまでにこいつなら遠くに行ける。まずは北の川を遡って、足跡を消す。それから南だ」

 

 

 

 

●荒野(早朝)

 

追手の野営地。早起きしたひとりが雪に残された馬と人の足跡に気づく。馬用のテントから続いている足跡を追う。

 

時間飛んで、野営地から男たち数人が来る。足跡を辿る。

 

暗闇。石の蓋が剥がされ男たちが覗く。

 

 

 

 

●太陽

 

強い陽射し。

 

 

 

 

●岩山

 

雪が解けて湿った大地から草が芽吹いている。雪解け水のせせらぎ。春の兆しはあるが風景の大半はまだ荒涼とした冬景色。

 

岩陰で立小便した男が少女と馬の元に戻ってくる。

 

男「行こう(と手綱を取ろうとするが)」

 

少女「(渡さない。馬を見る。馬は走り疲れて息が荒い)」

 

男「この山を越えれば小さな町がある。もう少しだ(手綱を取って馬にまたがる)」

 

少女「(馬をなでていたわる)」

 

 

 

 

●山

 

枯木が多く緑は少ない。男と少女の馬が山道を登る。

 

山頂付近。男の腕の傷に少女が新しい布を巻いている。

 

男が樹々の隙間から遠くに目を凝らす。北の荒野を見渡すが視界に動きはない。

 

 

 

 

▼クリック感謝! 
にほんブログ村 
人気ブログランキング