シナリオ【逃避行】 2 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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5月30日に小説「逃避行」のビデオコンテを公開しました。

 

 


 

●荒野(早朝)

 

動くものが何もない。晴天。

 

わずかに動く石。薄く平らな石で、地面に蓋をするようなそれが静かにスライド。そして地面から男が顔を出す。周囲を見る。

 

 

 

 

●小屋

 

眠っていた少女が目を覚ます。一方を見る。

 

男が防寒の上着を身に着け弓矢を準備していて少女に気づく。

 

男「少し出てくる。食い物がもうない」

 

少女「(体を起こす。自分のせいだと思い小さくお辞儀)」

 

男「あんたのせいじゃない。いつもより冬が長いんだ(と出ていく。扉を閉める)」

 

 

 

 

●荒野

 

男が地面から顔を出し、周囲を警戒したあとよじ登ってくる。石を動かして穴を塞ぐ。

 

 

 

 

●洞窟

 

少女が奥に進む。天井のふさいだ石を見つけ、動かしてみる。上げると外からの光が射す。穴から顔を出す。

 

見渡す限りの荒野。雪がだいぶ解けているが何もない。男の姿もない。

 

 

 

 

●荒野

 

男が身をかがめて進む。とまる。

 

視線の先に野ウサギ。気配に動きをとめ周囲を警戒する。

 

男が物音を立てず弓矢を構え、引き絞って狙いを定める。矢を放つ。体を起こして走る。

 

 

 

 

●洞窟

 

少女が温泉の溜まりに戻ってくる。置いておいた自分の衣服を温泉で洗い始める。

 

 

 

 

●荒野

 

野ウサギを仕留めた男が後処理をしている。遠くに気づく。

 

鹿が1頭いる。男には気づいてない。

 

男は指を舐めて風向きを確認。鹿に気づかれないよう一方へ。

 

 

 

 

●洞窟

 

少女が服を脱ぎ温泉につかる。生き返るような心地よさに笑顔。

 

 

 

 

●荒野

 

地面から芽吹いたわずかな草を食べる鹿。男が物音を立てずに接近し、矢を放つ。

 

鹿の後ろ足に命中し鹿は逃げる。男が追う。

 

後ろ足を引いて走る鹿。男は追いながら次の矢を準備し、とまって膝を着き射る。

 

 

 

 

●小屋

 

湯上がりの少女が洗った衣服を干している。物干し兼用の梁に背伸びする。しかし少女は背が低くふらついて壷の1つを蹴倒す。壷から小粒の砂金が散らばる。拾って驚く少女。

 

 

 

 

●荒野(夕方)

 

仕留めた鹿の処理をする男。大きな獲物に笑顔。しかし一方に気づく。狼の遠吠えが小さく聞こえる。それに呼応する遠吠えが別方向からも。

 

危険を感じて男は急ぐ。鹿をかつぐ。

 

 

 

 

●小屋

 

少女が砂金を壷に戻す。壷の位置も元に戻す。

 

 

 

 

●荒野

 

夕闇のなかを3匹の狼が距離を取って走る。

 

鹿をかついで逃げる男。重くて荒い息。狼の接近に気づいていて鹿を投げ出し後方に矢を構える。

 

静寂。

 

男が別方向に気づき矢を放つ。キャンと狼の鳴き声。

 

次の瞬間また別方向から狼が迫り男に飛びかかる。

 

かわしてすぐ矢を射るが当たらない。別の1匹が襲いかかり男の左腕を噛む。短刀を抜いて切りつけるとひるんだ狼は離れる。しかし別の2匹に囲まれる。

 

狼の剥き出しの牙。唸り声。絶体絶命。

 

男は足元の鹿をかつぎ1匹に突進。狼が鹿に食らいつく隙に逃げる。

 

追ってくる1匹に振り向き短刀を構える。睨み合い。

 

男の眼力。狼はじりじり迫る。

 

しかし男の気迫にひるみ、狼は仲間の元に戻っていく。ほかの2匹と共に鹿を食う。

 

男は走って闇の中へ。噛まれた左腕を押さえて走る。

 

 

 

 

●小屋

 

少女が囲炉裏に薪を足している。壷の方を振り向く。

 

 

 

 

●荒野

 

男が懸命に走る。足がふらつく。

 

 

 

 

●洞窟の奥

 

蓋の石がずらされ月光が射す。男が落ちるように下りてくる。左腕をぶつけ痛みに声を上げ、

 

 

 

 

●小屋

 

少女が振り向く。扉をあけて声のした奥に向かう。

 

 

 

 

●洞窟

 

男がふらつきながら来て上着を脱ぐ。少女が駆け寄るとその足元に上着を投げる。上着に縛りつけた野ウサギの凍った屍に少女が驚く。

 

男は構わず衣服を脱ぐと上半身は血だらけ。少女は固まって何もできない。男は左腕の傷口を温泉で洗い、痛さに声を上げ歯を食いしばる。倒れ込む。

 

それを支えて少女が肩を貸す。

 

 

 

 

●小屋

 

少女が男を寝床に寝かす。男は意識が朦朧としているなか少女に指示する。

 

男「そこの薬草を、干したそれ」

 

少女は言われた通り動く。

 

男「湯に浸してくれ。もっと。そう。毒消しだ。ここらの狼は毒がある。震えが来て(と手を見る。痙攣している)おさまるまで飲まないと。1杯くれ」

 

少女「(椀に入れて手渡す)」

 

男「(飲み干したあと力尽きる。しかし少女の片手を離さない)」

 

 

 

 

●荒野(夜)

 

静寂。細い月。

 

 

 

 

●小屋

 

男が目を覚ます。まだ全身の震えがおさまらず意識は朦朧。少女の手を握っていることに気づく。少女は男の横で眠っている。

 

男が手を放すと少女は目を覚ます。男の顔を見てから毒消しをよそいに囲炉裏へ。

 

見ている男。

 

少女が椀を持ってきて男の上半身を起こし飲ませる。男は飲み干してうなずく。

 

少女は再び男を寝かせ、寝具を整える。男が見ているのに気づき少し離れる。

 

男「(例の壷を見て)その壷の中を見てくれ」

 

少女「(男の視線を追って壷の方を見る。別の壷に手を伸ばす)」

 

男「その横だ」

 

少女「(例の壷を手にして中を見下ろす)」

 

男「砂金だ。この洞穴の奥でとれた。町で売れば金になる。俺が死んだら持って行け」

 

少女「(男を見る)」

 

男「持って行け(うなずいて目をつぶりまた眠りに落ちる)」

 

少女「――」

 

 

 

 

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