シナリオ【逃避行】 1 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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5月30日に小説「逃避行」のビデオコンテを公開しました。

 

 


 

●黒い画面に白い文字が出る

 

昔々あるところに…

 

 

 

 

●隠れ家・小屋

 

F.I.

 

毛皮の寝具をかけられた少女が目を覚ます。15歳くらいの少女。うつろな目で周囲を見まわし、一方に気づく。

 

薪の燃える囲炉裏のむこう、髭を生やした男が縫物をしている。少女に気づいて見る。

 

少女は怖がり自分の衣服を確かめ、寝具にもぐって身構える。

 

男「安心しろ(少女から目をそらして縫物を続ける)どこから来た」

 

少女「――(警戒)」

 

男「なぜここに――落ちたのか。身投げか」

 

少女「(目が泳ぐ。記憶を辿ろうとする)」

 

少女の荒い息が先行し、

 

 

 

 

●記憶・雪の荒野

 

わずかな月明かりのなか、何もない雪原を少女が走る。後ろを振り向く。たいまつの火が遠くにいくつも見える。

 

たいまつを持って馬に乗り少女を探す追手たち。雪上の少女の足跡を辿る。

 

逃げる少女の行く先が突然途切れ、足元は崖。その下に川がゆったり流れ、川幅は暗闇ではっきりしないが渡れないのはわかる。

 

少女は引き返して追手が来るのとは別方向に逃げる。

 

迫る追手たち。

 

疲労と深い雪で少女の足がもつれ転ぶ。

 

少女の目の前が再び途切れる。見下ろすと断崖絶壁。月光に照らされる波。

 

少女は絶望の表情。後ろを振り向く。追手たちがそばまで来る。ひとりの男が馬を降りてたいまつを片手に来る。

 

追手の男「おとなしく来い」

 

少女は無言のまま後ずさり、背中から崖下に身を投げる。

 

海から突風が吹くなか追手たちが駆け寄る。眼下は闇。少女の姿は見えない。

 

追手たち「クソ」「なんてことを」「命はあるまい」「引き揚げるぞ」

 

追手たちは再び馬に乗り、雪原を去っていく。

 

カメラが絶壁を下りていくと窪み。落ちる時の突風で煽られた少女がその窪みの雪の中に落ちて気を失っている。

 

雪の吹きつける寒風のなか目を覚まし、周囲を見る。崖の途中になんとか歩けそうな幅がある。

 

しかし少女は諦める。目をつぶる。

 

間あって再び目をあける。崖の途中にわずかな湯気が見える。

 

寒さに凍えながら体を起こし、少女はなんとか立ち上がって湯気の方に向かう。

 

狭い足場をカニ歩き。絶壁を伝って強風に耐えながら進む。眼下は死を感じる闇。

 

 

 

 

●記憶・洞窟

 

大人がかがんでやっと入れるような狭さ。そこから流れ落ちる水が湯気をあげている。水量は多いが強風で撒き散る。

 

少女が触れてお湯と確かめ、洞窟に入る。入口は狭いが中は広く天井も高い。湿気がこもっていてあたたかい。奥にわずかな明かりがある。

 

流れるのは温泉。いくつか堰き止められ段になっている。人の手が加えられているのは明らか。上流に行くと温泉はさらにあたたかく、少女は寒さに震える手を浸して辿る。

 

一段登り角を曲がったところで気づく。奥に小屋がある。壁の隙間から漏れる明かり。少女は恐怖で近寄れない。しかし寒さと疲労が限界でしゃがむ。岩のあたたかさに気づき、うつ伏せになって頬をつける。震えがとまらないまま目をつぶる。

 

小屋の扉があいて男が顔を出す。物音に気づいていて洞窟の闇を窺う。少女が倒れているのに気づく。

 

 

 

 

●現実・小屋

 

冒頭の隠れ家。

 

男「(縫物を続けていて)探して来られる場所じゃない(少女を見る)」

 

少女「――(男から目をそらし、何か話そうとするが言葉が出てこない。苦しい表情)」

 

男「(気づいて)話せないのか」

 

少女「(涙目で見る)」

 

男「言葉はわかるか」

 

少女「(小さくうなずく)」

 

男「――そうか(目をそらして縫物に戻る)」

 

 

 

 

●断崖絶壁(朝)

 

夜が明けている。雪がしんしんと降り続く。風はない。断崖の突端、洞窟の入口から流れ出た温泉はまっすぐ落ちて湯気を立てている。しかし湯気は崖上まで届かない。崖上から気づかれない場所に洞窟はある。

 

降り続く雪で少女と追手の足跡は消えかけている。

 

 

 

 

●小屋

 

少女が再び目を覚ます。男が扉をあけて入ってくる。

 

男「(少女に気づき)腹は減ってるか」

 

少女「(警戒)」

 

男「(座って囲炉裏のそばに置いた土鍋の1つからスープ状の食事を椀によそう。少女に差し出し)食え(と寝ているそばの床に置く)精がつく」

 

少女「(空腹が限界で唾ごくり)」

 

男「(別の土鍋から濁った液体をもう1つの椀にそそぎ)こっちは薬だ。まずいが毒じゃない(と置く)」

 

少女「(見ているが手を出さない)」

 

男「食え(背を向けて縫物を始める)」

 

少女「(ゆっくり上半身を起こして食事に手を伸ばす。男の視線を避けるように横向きになって食べはじめる)」

 

 

 

 

●断崖絶壁と雪原(夜)

 

また天気が荒れ吹雪。

 

 

 

 

●小屋

 

小さな火の残る囲炉裏のむこうで男が背を向け横になっている。

 

少女がそれを見ていて寝床から起き上がり、静かに寝床を抜け出す。

 

男が気配に気づき振り向く。少女は驚いて固まる。

 

男「小便か」

 

少女「(目を合わさず怯える)」

 

男「(そばの縫い上がった衣服を持って立ち)来い(と小屋を出ていく)」

 

 

 

 

●洞窟内

 

男「(出てきて少女が来るのを待ち)小便はむこうだ。全部海に落ちる(と洞窟の入口の方を指さす)洗濯や洗いものはここ(とそばの溜まりを指さし)体を洗う時は奥。あったまる(と奥を指さす)大きいかもしれんが着替えろ(と少女に衣服を押しつけ小屋に入る。扉は閉め切らない。閉め切ると洞窟内が暗くなるため)」

 

少女「(言われた通り洞窟の入口へ)」

 

 

 

 

●荒野(昼)

 

雨が降っている。雪原のところどころに地面が見え始めている。

 

 

 

 

●小屋

 

男がいびきをかいて眠っている。

 

少女は寝床で小屋の中を見まわす。

 

わずかな明かりのなかに天井からぶら下がっている干し草や干し肉。調理場にある刃物。面した岩肌から落ちる水滴。それを受ける水がめ。別の場所には薪が積まれている。籠には落葉。囲炉裏には常に火がある。土鍋で常に湯を沸かしている。壁に下がった弓2本と矢筒。毛皮の上着。床に置かれたいくつかの壷。

 

男が大きなくしゃみをする。少女はビクッとする。

 

男が壁の上着を取って体にかける。少女は急いで寝たふり。

 

男が少女を見る。眠っていると思い再び横になる。すぐいびきをかきだす。

 

少女はまた目をあけて男を見る。

 

 

 

 


小説【逃避行】を元にしたビデオコンテを5/30よりYouTubeで配信します。

https://www.youtube.com/@katara_novel_scenario

 

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