シナリオ【友情結婚】 9 | Novel & Scenario (小説と脚本)

Novel & Scenario (小説と脚本)

お越しいただきありがとうございます。
このサイトはKATARAのオリジナル小説とシナリオを掲載してます。

このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●田園風景(昼前)

 

常磐線が通過していく。

 

 

 

 

●走る常磐線・車内

 

ボックス席に明と睦美。明はスマートフォンを見ている。睦美は離れた席を見ている。

 

そこにいる母子。抱かれた男の子が睦美の方を向いていて、目が合うと笑顔になる。睦美も微笑する。

 

 

 

 

●マンション・通路

 

明と睦美が帰ってくる。

 

明「いろいろありがとう」

 

睦美「ううん」

 

明「ゆっくり休んで」

 

睦美「うん、じゃあ(ドア前でとまる)」

 

明「ああ、また(自分の家へ)」

 

睦美「(ドアの鍵をあける)」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・寝室

 

渚が眠っている。ドアのあく音。しかし熟睡で目覚めない。

 

寝室を覗いた睦美が起こさないように、入らずそっとドアを閉める。

 

 

 

 

●英司と明の家・ベランダ

 

英司「(洗濯物を干していて)どうだった?」

 

明「(リビングのソファーにだらけて座っていて)しんどかったね」

 

英司「お疲れ」

 

明「家族って面倒(ため息)わかってたけど、改めて」

 

英司「立て続けだったもんな、明はこの1ヶ月」

 

明「墓穴掘った気分」

 

英司「ん?」

 

明「ま、自業自得だけど」

 

英司「なに。なにあった」

 

明「いい。思い出したくない。今はしゃべりたくねぇ(と立って奥へ)」

 

英司「――(見送る。そっとしておこうと思う)」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・ダイニング

 

渚「(寝起きで茨城土産の菓子をつまんでいる)大変だった?」

 

睦美「うん――(キッチンでお茶をいれている)渚も大変そう。いつ寝た?」

 

渚「2時か3時」

 

睦美「臨時営業そんなに?」

 

渚「店は夕方6時から9時までだったけど、それからなんだかんだ」

 

睦美「なに?」

 

渚「お店のスタッフと飲んで」

 

睦美「へぇ」

 

渚「チーフが辞めてもなんとかなるって若い子たちは言うの。新しい人に大きな顔されたくないってあるらしく」

 

睦美「そう」

 

渚「みんなを納得させるようなシェフだとまたね、それなりにお給料出さなきゃいけないし」

 

睦美「大変」

 

渚「帰ってベッドに倒れて(時計を見て)10時間以上か。ヤバイな」

 

睦美「たまってんだよ寝不足」

 

渚「睦美はうまくいった? 親戚とかご両親」

 

睦美「うん――まぁ(と微笑)」

 

 

 

 

●明の会社・オフィス

 

明が働いている。若いスタッフに指導している。

 

 

 

 

●公園(夕方)

 

睦美が公園脇の道を通りがかってとまる。公園内を見る。

 

その視線の先に笑い合う母子。睦美と同世代の母親。すがって楽しそうな子供。

 

フォーカスのズレた背景には複数の親子がいる。言うことを聞かない子を叱る母親。泣きやまない子に困っている母親。しかし睦美の目には入らない。

 

 

 

 

●スーパー・店内

 

会社帰りの英司が買い物を終えてレジに並んでいる。奥のレジに並んでいる睦美に気づく。睦美も視線に気づき「あ」となる。

 

 

 

 

●夜道

 

英司と睦美が買い物袋を持って歩いてくる。

 

英司「大変だった? 茨城」

 

睦美「あぁ――なんか言ってました?」

 

英司「ううん、疲れた顔してたから、詳しく聞かなかったけど」

 

睦美「そう」

 

英司「大変だった感じはなんとなく」

 

睦美「お兄さん夫婦がデキ婚だったのは?」

 

英司「いや、聞いてない」

 

睦美「だったみたい。もうすぐ7ヶ月って。それで式が急だったらしく」

 

英司「そうか」

 

睦美「で、あちらのお母さんにこっちはどうなんだって、子供、予定」

 

英司「あぁ――」

 

睦美「詰められて。あるあるだけど(苦笑)」

 

英司「なんて返した?」

 

睦美「明君は予定ない、期待しないでって」

 

英司「――お母さんは?」

 

睦美「機嫌損ねたみたいで、昨日帰る時もなんとなく冷たかった」

 

英司「そう――明は子供ダメだから」

 

睦美「――昔から?」

 

英司「うん――睦美ちゃんは?」

 

睦美「私は姪いるし、姉の子」

 

英司「かわいい?」

 

睦美「かわいい」

 

英司「いいな(微笑)」

 

睦美「英司さんは? 子供」

 

英司「憧れるね。いたらどんなだろって――まぁ無理だから、余計なんだろうけど、ファンタジーで」

 

睦美「うん――」

 

英司「いつまでも言われるの嫌だから、明としては思い切って言ったんじゃないかな、お母さんに」

 

睦美「わかるけど」

 

英司「自分は勿論、睦美ちゃんもしつこくされないように」

 

睦美「わかってるけど」

 

英司「僕らも言われるな、どんどんこれから」

 

睦美「対策話し合ってる?」

 

英司「いや、合ってない」

 

睦美「そう」

 

英司「まぁ僕は、明みたいにスパッと言う勇気ないけど、今んとこ。親がどう思うか考えると」

 

睦美「――」

 

英司「たぶんのらりくらり、誤魔化し誤魔化し、親たちがそのうち諦めるのを――意気地がないね」

 

睦美「ううん」

 

英司「彼女の方がつらいかもだから、考えないと」

 

睦美「――うん」

 

英司「渚さんは最近どお? 元気?」

 

睦美「仕事が忙しいみたい」

 

英司「そう」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・キッチン

 

渚「(帰宅したところで冷蔵庫から水を出し)スープもサラダもいらない。店でしっかり食べた」

 

睦美「そうなの?」

 

渚「閉店したあと若いスタッフの調理、練習あって」

 

睦美「それでこんな遅く?」

 

渚「できたの試食してお腹いっぱい(グラスに注いだ水を飲む)」

 

睦美「だったら連絡してよ。準備しない」

 

渚「ごめん。急にやること決まって(グラスを洗ってカゴに置く)」

 

睦美「――今日ね(英司に会ったことを言いかけるが)」

 

渚「(かぶせて)お風呂入ったよね?」

 

睦美「うん、まぁ」

 

渚「じゃ入ろ。また1時すぎちゃうな寝るの。先に寝ていいよ(と慌ただしく行く)」

 

睦美「うん――」

 

 

 

 

●走る電車内(朝)

 

英司が吊革につかまり揺られている。スマートフォンの振動に気づき尻ポケットから出す。画面を操作する。

 

睦美の声「おはよう。昨日は話せてよかった。ありがと」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・脱衣所

 

睦美が洗濯物を干す準備。渚が「いってきます」と声をかけて廊下を通過する。

 

英司の声「おはよう。こちらこそ。短い時間でつまんないこと言ったんじゃって、反省した。ひっかかることあっても気にしないで。スルーして」

 

 

 

 

●英司の会社・オフィス

 

英司が働いている。

 

睦美の声「うん、全然だいじょうぶ。もう少ししゃべりたかったけど、また今度」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・ベランダ

 

睦美がシーツなどを干している。

 

英司の声「OK。いつでもなんでも、いくらでも」

 

 

 

 

●英司の会社・社員食堂

 

英司が同僚とランチ。

 

睦美の声「でも会ってじゃ言えない気がするから――」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・リビング

 

睦美が掃除機をかけている。

 

睦美の声「ほんとは私、子供が欲しいの。明君には勿論、渚にも言ってないけど」

 

 

 

 

●公園(午後)

 

数組の母子が遊んでいる。睦美が公園脇の道を通るが、今日は母子たちを見ない。

 

睦美の声「英司さんと同じ。無理ってわかってるから余計ね。いたらどんなか。大変だろうけど」

 

 

 

 

●スーパー・店内

 

睦美が買い物している。

 

睦美の声「苦労してもそれが子供の身になって、ちゃんと報われそうなのがいいなって。最近どんどん」

 

 

 

 

●マンションに続く道

 

睦美が買い物袋を両手に持って帰ってくる。

 

睦美の声「いま働いてなくて、まだ求職中で、できそうなのがなかなかないから、気が弱くなってるのかもしれないけど」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・風呂場

 

睦美が掃除している。

 

睦美の声「そんな甘いもんじゃないだろうし。だいたい無理だし――ごめんね、愚痴です。これこそスルーして」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・キッチン(夜)

 

睦美が夕飯をつくっている。

 

 

 

 

●走る電車内

 

英司が吊革につかまりスマートフォンを見ている。

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

英司と明が夕飯後。テレビがついている。間あって、

 

英司「そう言えば昨日睦美ちゃんに会った」

 

明「昨日?」

 

英司「帰りのスーパーで。明が遅かったから、言わなかったけど」

 

明「急ぎの仕事入ったんだ」

 

英司「茨城のこと少し聞いたよ。兄さん夫婦デキ婚だったって?」

 

明「ああ」

 

英司「明たちも子供の予定聞かれたって、お母さんに」

 

明「まぁ」

 

英司「しんどいよな、ほんと」

 

明「うん――」

 

英司「結婚したら次はって、親がそうなるのわかるけど」

 

明「しんどかったって? 彼女」

 

英司「明さ。日曜帰ってすぐ言ってたろ」

 

明「うん――」

 

英司「期待すんなってズバッて言ったって(聞いた)さすがだよ」

 

明「巻き込んじゃったかな」

 

英司「ん?」

 

明「俺と結婚したばっかりに」

 

英司「しなくても言われたろ、彼女は彼女で、自分の親に。同じこと、もっと別のことも」

 

明「そう思ってしたけど」

 

英司「そうだよ」

 

明「しなきゃ俺の親、他人の親にあんなこと言われなかったし」

 

英司「うん――」

 

明「ほんとに軽くなってんのか、考えっと微妙」

 

英司「ここんとこ続いたから、そう思うんだ。まいってんだよ。そのうち回復する」

 

明「ならいいけど」

 

英司「――子供は無理だよな」

 

明「当然」

 

英司「友情結婚でも欲しい人は、人工授精、シリンジ法とかするみたいだけど」

 

明「それ以前の問題だよ。俺はいらないんだ」

 

英司「――だな」

 

明「なに。彼女がなんか? 言ってた?」

 

英司「いやぁ、なんも」

 

明「そお?」

 

英司「こっちがある程度年取れば、親は自然に諦めて、逆に同情されたり――それもまたアレだけど、そんな風にするしかないかって今は思ってんだ。どう思う?(と話をそらす)」

 

明「うん――」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・ダイニング

 

渚「ただいま(と来る)」

 

睦美「(続いて来て)今日早番じゃなかった? 食事は?」

 

渚「食べた。あるの?」

 

睦美「そりゃあるよ、早番て言うから」

 

渚「じゃあ食べる、せっかくだし。なに?(と料理を聞きキッチンで手を洗う)」

 

睦美「――ムリにはいい」

 

渚「ムリじゃないよ。小腹は減ってる」

 

睦美「いらないなら連絡して」

 

渚「急に食べることあるから」

 

睦美「そのとき連絡して」

 

渚「忙しかったのよいろいろ。わかるでしょ」

 

睦美「なに」

 

渚「いろいろはいろいろよ」

 

睦美「――じゃあ基本つくらないことにする。欲しい時だけ連絡して」

 

渚「なに怒ってるの」

 

睦美「怒ってないよ」

 

渚「怒ってるじゃん」

 

睦美「怒ってない!(と廊下に出ていく)」

 

渚「――(ため息)」

 

 

 

 

●朝の住宅地・情景

 

 

 

 

●マンション・ゴミ置き場

 

睦美がゴミ袋を持ってくる。捨てる。

 

 

 

 

●マンション・玄関

 

睦美がオートロックの暗証番号を入力し入っていく。

 

 

 

 

●マンション・通路

 

睦美がエレベーターホールから来る。自宅の鍵をあけて入る。

 

ドアが閉まるとそのむこうに明。自宅ドアをあけたところ。出勤姿。鍵を締めて来る。

 

閉まるのを見かけた睦美たちの家のドアが気になり、前を行きすぎて立ち止まる。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・玄関

 

睦美がシューズボックスの気になるところを片づけているとチャイム。

 

睦美「(玄関の覗き穴を覗いてからドアをあけ)どうしたの?」

 

明「おはよう」

 

睦美「おはよう」

 

明「いま入るの見かけて」

 

睦美「そう。ゴミ出し行って」

 

明「そっか」

 

渚の声「おはよう(と奥から聞こえ)」

 

睦美「(振り向く)」

 

明「あ、おはよう(と奥を覗くと)」

 

渚「(寝起きのパジャマ姿で顔を隠し)あ、ダメ、見ないでスッピン(と洗面所に急いで入る)」

 

睦美「(苦笑し明に)なに?」

 

明「いや、英司と会って話したって、昨日聞いて」

 

睦美「あ」

 

 

 

 

●洗面所

 

渚「(水を出しかけたところで手をとめ、玄関の方を見る)」

 

 

 

 

●玄関

 

睦美「(洗面所の方を少し気にし)うん」

 

明「いろいろ嫌な思いさせたなって、改めて(思っていた)ごめん」

 

睦美「ううん(目を伏せる。子供について聞いてないことに安堵し、でも隠している後ろめたさがある)」

 

明「お詫びするよ今度、ごちそうする。それだけ言おうって、LINEしようと思ってたら見かけたんで」

 

睦美「そう。わかった。出勤?」

 

明「ああ、もう(腕時計見て)いってきます」

 

睦美「うん、いってらっしゃい」

 

 

 

 

●マンション・通路

 

明がドアを離れエレベーターホールに行く。ドア閉まる。

 

渚の声「(先行して)英司さんに会ったの?」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・玄関

 

睦美「(シューズボックスの整理を続け背を向けたまま)おとといの夕方ね、スーパーで偶然。一緒に帰ってきて」

 

渚「(洗面所の出入口にいて)言わなかったじゃない」

 

睦美「言うヒマないでしょ。いつも遅くて、時間に追われて、疲れて」

 

渚「茨城でなにあったの」

 

睦美「よくあるやつ。子供はまだか。渚もちょいちょい言われてるあれ、おんなじの」

 

渚「――日曜に話せたじゃない、帰ってすぐ」

 

睦美「気ぃつかったのよ。話してもどうなるもんじゃなし、暗くなるし」

 

渚「でも英司さんにはそれ、話したんでしょ?」

 

睦美「いいじゃない。渚だって前に相談したんでしょ。あいこよ(睦美を一瞥し奥へ)」

 

渚「あいこって(追う)」

 

 

 

 

●リビング

 

睦美「もういい(と来る)朝っぱらから(窓から外を見る)」

 

渚「(来て)朝しかちゃんと話せないし」

 

睦美「そんなの知らないよ。なんで私ばっか合わせるの」

 

渚「――他にはなに? なに悩んでる?」

 

睦美「別に悩んでなんか」

 

渚「わかるの様子で。私たち4年もつき合ってるの」

 

睦美「5年」

 

渚「5年もつき合ってるの。見てればわかるよ。なに?」

 

睦美「――」

 

渚「私に言えないこと? 私に話しても解決しないこと?」

 

睦美「子供が欲しいの」

 

渚「え?」

 

睦美「子供。急に――前からそういう気持ちあったけど」

 

渚「子供って」

 

睦美「最近それが強くなっただけ。無理なのわかってる。つくりようないし今の生活壊したくない。でもそういう波で――すぐ収まるよ。ねじ伏せる。放っとけば冷めるから、安心して」

 

渚「――」

 

睦美「心配ない」

 

渚「英司さんにそれ、話したの?」

 

睦美「――」

 

渚「明君には?」

 

睦美「彼は子供嫌いだし」

 

渚「――英司さんはなんて?」

 

睦美「なんも。愚痴だからスルーしてって私が言ったし」

 

渚「――そう」

 

睦美「英司さんは子供好きみたい」

 

渚「――」

 

睦美「いたらどんなか憧れるって――渚は全然? いまだ願望なし?」

 

渚「想像できないし、産むのも育てるのも」

 

睦美「そうよね。私らには資格ない」

 

渚「――」

 

睦美「遅れるよ仕事、そろそろ準備しないと」

 

渚「――うん」

 

 

 

 

●走る電車内

 

幼児を抱いた母親がいる。幸せそうな笑顔。

 

それを離れた席から渚が見ている。

 

 

 

 


このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


▼クリック感謝! 
にほんブログ村 
人気ブログランキング