シナリオ【友情結婚】 8 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●浅草(昼前)

 

雨が降っている。観光客のなかに睦美と母がいる。仲見世、浅草寺にお参り、甘味処で休憩など。

 

渚の声「(先行して)なんですか話って(軽い口調)」

 

 

 

 

●プレジール・個室(午後)

 

渚と丸山が向かい合って座っている。

 

丸山「(目を伏せていて)ここを辞めたいと思って」

 

渚「(思いも寄らず笑顔が消え)え、ちょっと待って、なんで急に?」

 

丸山「――(一礼)」

 

渚「理由は?」

 

丸山「――」

 

渚「もっといい店、引き抜きとか?」

 

丸山「いいえ」

 

渚「自分でお店、名古屋の実家に戻るとか?」

 

丸山「そんな予定は(首を振る)」

 

渚「じゃあなに。次は決まってるの?」

 

丸山「なんも」

 

渚「だったらなんで。急にはそんな、困ります。みんながんばって育ってるけど、丸山さんなしで今のクオリティー維持できないでしょ? すぐは無理でしょう?」

 

丸山「代わりのシェフは、俺が探してもいいです。知り合いに声かけても」

 

渚「それはありがたいけど、そんなすぐ見つかるか」

 

丸山「見つかるまでは、辞めずにいます」

 

渚「なんでそこまで――そこまでしてくれるのになんで? 理由教えて下さい」

 

丸山「――」

 

渚「そりゃ、辞めるのは自由だし、とめられないけど――言えない事情もあるだろうし。でもどうするのか、心配は心配です。丸山さんの腕ならどこでも通用するだろうけど、もう3年以上一緒にやってきたんだし、披露宴も来てもらえたし」

 

丸山「店長は新婚生活、うまくいってますか」

 

渚「え?」

 

丸山「幸せですか」

 

渚「――なんでそんな。順調は順調ですけど」

 

丸山「お見合いだそうですね、1年ちょっと前って、披露宴で小耳に挟んだ」

 

渚「まぁ(目をそらす)」

 

丸山「同棲してる恋人がいるって、前は聞いたけど」

 

渚「あれは――(睦美との同居をそう言っていた)」

 

丸山「そちらとは別れて? いや、詮索する気はありません。とにかく自分は眼中になかった」

 

渚「え?」

 

丸山「同棲してる恋人がいるってのは、自分みたいのが寄ってこないように、面倒避けるための嘘だったんじゃって」

 

渚「――」

 

丸山「狙うとかそんな野心は、てんでなかった。こっちはこのツラだしわきまえてる。ただそばに――でももう、ちょっとしんどくて」

 

渚「――そう」

 

丸山「どうしようもない。承知して下さい(一礼して席を立つ。個室を出ていく)」

 

渚「――」

 

 

 

 

●銀座

 

睦美と母が傘をさして歩いている。母がブランド店を指さし入っていく。

 

 

 

 

●明の会社・オフィス(夜)

 

パソコンの並ぶ広いオフィス。明が残業している。周囲の席に他のスタッフはいない。

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

英司と帰ってきた渚が軽い晩酌。

 

英司「渚さんは気づいてたの? その人の気持ち」

 

渚「なんとなく」

 

英司「睦美ちゃんとの同居を、同棲って言ったのはあえて?」

 

渚「まぁ」

 

英司「ルームメイトって言って、希望持たせてもいけなかったしね」

 

渚「うん――」

 

英司「もし僕らがストレートだって、好かれれば好きになるってもんじゃないから」

 

渚「うん」

 

英司「しょうがなかったんじゃないかな。その人の言う通り、どうしようもなかった」

 

渚「――」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・リビング

 

仕事帰りの明に、睦美の母が買い物した洋服を自分の体に当て見せている。明は「いいッスね。いやそれも、今のとガラッと変わって」とおだてている。睦美は明の夕飯準備。

 

渚の声「(前シーンのボリュームのまま)思い込んで、決めつけてる感じもあったけど」

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

渚「店には欠かせない人だったから、気持ちに気づいててもとぼけて、私は無神経なとこあったのかもしれない」

 

英司「でも気を持たせたわけじゃないし。前から同棲って言って、結婚もした。それでも今まで辞めなかったのは、彼の意思」

 

渚「そうだけど」

 

英司「(苦笑し)わかってるよね、そんなこと言われなくても」

 

渚「ううん、改めて言われれば、だよねってありがたいけど」

 

英司「だいじょうぶ?」

 

渚「うん――元気だす」

 

英司「なんも悪くない。みんなそれぞれ自分の都合で動いて、他人のそれを自分なりに解釈して、食い違う、バラバラ。そんなもんだと思うから、噛み合った時はちゃんと大事にしないとって――酔ってるね、言うことが(と苦笑)」

 

渚「ううん、酔ってない」

 

英司「言い出すのがもう酔ってる。そろそろ寝るよ(と立つ)」

 

渚「そう」

 

英司「話を聞くぐらいいつでもできるから」

 

渚「ありがと」

 

英司「おやすみ」

 

渚「おやすみ」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・寝室

 

明がいびきをかいて熟睡。睦美はうるさくて眠れない。

 

 

 

 

●鎌倉(昼前)

 

睦美と母が神社仏閣めぐり。観光客で混雑している。

 

睦美の声「もう3日目よ」

 

 

 

 

●喫茶店

 

睦美と母がいる。

 

母「だから?」

 

睦美「まだ新婚なんですけど」

 

母「邪魔?」

 

睦美「困ってるよ父さんも」

 

母「なんか連絡あった?」

 

睦美「今日はないけど」

 

母「昨日は?」

 

睦美「3日もひとりじゃご飯なんてどうしてんのか」

 

母「お姉ちゃんいるでしょ」

 

睦美「毎日来ないよ世話に、働いてんだし」

 

母「なんとかしてるよ。そう連絡あったんじゃない?」

 

睦美「まぁ」

 

母「ほら見なさい」

 

睦美「気が済むまでしょうがない、迷惑かけるってLINE」

 

母「まだ気が済んでないし」

 

睦美「浮気したわけじゃないでしょ、父さん」

 

母「キャバクラ行ったじゃない」

 

睦美「そこの子とどうにかなった?」

 

母「でもいい歳して、来年還暦よ? それが孫みたいな子とよろこんでお酒飲んで」

 

睦美「孫は言い過ぎよ」

 

母「こっちも楽しむの。たまってんだから発散する」

 

睦美「大目に見ないとギスギスするじゃん。ちっちゃなことはスルーして」

 

母「キャバクラだけじゃないよ」

 

睦美「競馬?」

 

母「そういうわかりやすいのじゃなくて、毎日毎日あるでしょいろいろ。結婚したんだからわかるでしょ」

 

睦美「そりゃ」

 

母「新婚でまだ新鮮だろうけど、そのうちね、男なんてガサツで自己中でなんも考えてなくて」

 

睦美「――わかんなくないけど」

 

母「私のことは気にしないで、いないもんと思って。明さんにもそう言っといて」

 

睦美「そんなの無理じゃん」

 

 

 

 

●明の会社・オフィス

 

明が働いている。疲れた顔。

 

 

 

 

●プレジール

 

丸山が厨房で普段通り働いている。渚もホールで普段通り働いている。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・リビング

 

風呂あがりの睦美の母が足裏を自分でマッサージしている。

 

睦美「(電話していて)お、いいねそれ、出して出して(スマートフォンを横にして画面を操作し)母さんこれ」

 

母「うん?」

 

睦美「父さんはずっと自粛してるってよ。おー舞。こんばんは。元気?」

 

母「舞?」

 

睦美「はい(と渡す)」

 

スマートフォンの画面に睦美の姪、母の孫の舞が映っている。

 

舞「ばぁば元気ー?」

 

母「あぁ舞。いい子にしてる?(デレデレになる)」

 

舞の母(睦美の姉)の声が「いつ帰ってくんのって、早く帰ってきてって」と言ってるのが聞こえる。

 

舞「いつ帰ってくるー?」

 

睦美の母「さぁいつだろうねぇ、ウフフ」

 

 

 

 

●マンション・通路

 

明が足取り重く帰ってくる。睦美の家の前でとまり、ドアに向かうがあけずに通過する。

 

 

 

 

●英司と明の家・キッチンとダイニング

 

英司「(食器を洗っていて)一緒に寝てるわけないだろ。あっちとそっちだよ」

 

明「(テーブル席に座っていて)ふーん、こっちは寝室一緒」

 

英司「寝らんないか」

 

明「休まらないねぇ。寝てる時も起きてる時も。あのお母さんがまた早口でペラペラ」

 

英司「がんばれよ。もうちょっとの辛抱」

 

明「どうだか」

 

英司「行った方がいいって。いつまでグズグズしてんだ」

 

明「やだ。ふたりが寝るまでいる」

 

英司「渚さんそろそろ帰ってくるって」

 

明「邪魔か?」

 

英司「気にするだろここいてボヤいてたら。睦美ちゃんだって寝ないよ。いつまでも寝ないで待ってる」

 

明「あーもう(と立つ)」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・リビング

 

睦美の母「(買った土産などを整理していて)お世話になったけど明日帰ります」

 

明「(ダイニングで夕飯中で)え」

 

睦美「(キッチンで片づけしていて)そうなの?」

 

母「舞の世話しないとね。しょうがない」

 

明「あぁ」

 

睦美「まぁね(キッチンから来て)姉ちゃんも困ってたし」

 

母「ご迷惑かけました。また来ます」

 

明「(急に元気に)ええぜひぜひ、もういつでも」

 

母「孫はホントかわいい。早く作ってねふたりも。披露宴はもういいから」

 

明「はぁ」

 

母「私がここにいちゃそういう意味でも邪魔でしょ。妨害」

 

睦美「なんてこと言うの」

 

明「ヘヘ、ヘヘ」

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング

 

仕事から帰った渚が着替えてきて、

 

渚「LINE見た?」

 

英司「ああ、明日って(サラダを用意している)」

 

渚「ほっとしたでしょ(座って英司の手元を見て)ありがと」

 

英司「何が?」

 

渚「明君が戻ってくるの。私が戻ってくの」

 

英司「それはそっちでしょ。ここじゃ落ちつかなかったんじゃない?」

 

渚「まぁ、普段使ってるいろんな物なくて、不便は不便だったけど」

 

英司「こっちは元からここだし(サラダを出す)でもま、ふたりで何日もって今回はじめてで」

 

渚「そうね。いただきます」

 

英司「旅行はいつも4人だったし、実家に泊まったりもまだだし」

 

渚「うん」

 

英司「いい経験になった」

 

渚「ナニそれ。やな感じ(微笑で睨む)」

 

英司「そお? なんで?」

 

渚「なんとなく」

 

英司「どう答えんのがベストだった?」

 

渚「(野菜を口に入れて答えない。さぁ、ととぼける)」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・寝室

 

ベッドで横になった明がニヤニヤしている。

 

睦美の声「ほっとした?」

 

明「(隣りのベッドを見て)うん?」

 

睦美「(天井を見ていて)だよね」

 

明「まぁ――いや、そんなことないよ」

 

睦美「いろいろごめん。ありがと」

 

明「お互いさまだって。明日は我が身だし」

 

睦美「今度お礼する。英司さんにも。おやすみ(背を向ける)」

 

明「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

●自宅マンションの最寄駅(昼前)

 

雨が降っている。

 

睦美が改札口で母を見送る。買い物や土産は宅配を頼んだので母の荷物は少ない。手を振って遠くなる。

 

 

 

 

●英司と明の家・ダイニング(夜)

 

英司と明が缶ビールで乾杯。テーブルには弁当。

 

明「(飲んで)あー、やっぱいいね我が家は。解放感(と見まわす)」

 

英司「お疲れ」

 

明「(弁当をあけにかかるとスマートフォンが振動。画面を見て)ん? お袋だ。なんだ? はいもしもし(と出る)」

 

 

 

 

●渚と睦美の家・ダイニング

 

帰宅した渚と睦美が夕飯。

 

睦美「狙ってたってこと?」

 

渚「本人そういうんじゃないって言ってたけど」

 

睦美「こわっ」

 

渚「一緒に働くのはもう無理って」

 

睦美「辞めてもらった方がいいよ、そんな人」

 

渚「なるべく早く代わり探す」

 

睦美「ダメなのわかっててそばにいるなんて、ヤバイじゃん」

 

渚「心配?」

 

睦美「当然だよ」

 

渚「ありがと」

 

睦美「そんなことあったんだ。言ってくれればいいのに」

 

渚「余裕なかったでしょ今週は」

 

睦美「まぁ」

 

渚「いいの。英司さんに話したし、聞いてもらったし」

 

睦美「そうなの?」

 

渚「これでも一応夫婦だから、相談した」

 

睦美「それで? どうだった?」

 

渚「うーん、元気になった」

 

睦美「ナニそれ」

 

渚「妬かないで」

 

睦美「つまんない。つまんない!」

 

 

 

 

●夕陽

 

 

 

 

●マンション・通路

 

英司と明が自宅を出て、渚と睦美の家に来る。前まで来るとドアがあき睦美が顔を出す。

 

 

 

 

●渚と睦美の家・ダイニング

 

ホットプレートで焼肉をする準備ができている。

 

英司「いいのかな渚さんいないのに、始めちゃって」

 

睦美「(キッチンから肉や野菜の皿を持ってきつつ)シェフの面接が急にできることになったって」

 

英司「あぁ、新しい?」

 

睦美「もう帰ってくると思うけど」

 

明「なに、新しいシェフ?」

 

英司「うん――それよりいいの、言わなくて」

 

明「ああ、睦美ちゃん悪いけど今度はこっちだ」

 

睦美「こっち?」

 

明「昨日お袋から電話あって、俺の兄貴が結婚すんだと」

 

睦美「そう。おめでとう」

 

明「急な話で来月、1ヶ月後に式挙げるってんで、その時ふたりで行かなきゃなんない」

 

睦美「あぁ、わかった。泊りがけ?」

 

明「たぶん1泊は。なんで俺らだけ次々にね」

 

睦美「(苦笑し)しょうがない」

 

明「ね、明日は我が身だろ。お互いさま」

 

睦美「うん」

 

 

 

 

●太陽

 

真夏の陽射し。セミの声。

 

 

 

 

●茨城の田園風景

 

田んぼの稲が風にそよぐ。

 

 

 

 

●結婚式場

 

礼服の明と睦美が来ている。明の母に紹介されて睦美が親戚たちに挨拶している。明の兄とその妻にも。

 

明の声「(先行して)それにしても急だったね」

 

 

 

 

●明の実家・居間(夜)

 

婚礼あとで親戚が数人いる。明と睦美と明の母が座卓にいる。

 

明の母「大変だったんだバタバタ。式場もなんとかんとか見っつけて」

 

明「(苦笑し)なんでそんな慌てて」

 

母「そりゃお腹目立ってきちゃうでしょ」

 

明「お腹って――そういうこと?」

 

母「言わなかったっけ?」

 

明「聞いてない」

 

母「もうすぐ7ヶ月」

 

明「そう――」

 

睦美「へぇ――」

 

母「ま、あっちの親御さんと違って私は順番なんて気にしないけど。おめでたいことだしついでだし。あんた方の予定は」

 

明「予定?」

 

母「子供よ。式は式で挙げた方がいいけど、子供もなるべく早い方が」

 

明「ないよ予定なんて」

 

母「ないってどういうこと(睦美を見る)孫同士いとこ同士、年が近い方がいいでしょう。一緒に遊べたり服のお下がりとか。今はそんなの流行んないか。かわいいの好きに着せたいよねぇ」

 

明「子供は俺がね、別にいいやって」

 

母「いいってなに」

 

明「まず苦手だし、金かかって手間かかって、責任も重い」

 

母「みんな普通にやってるでしょ。できてみればかわいいんだ。なんとかなる」

 

明「そういう期待しないでよ」

 

母「それは明の気持ちでしょ。睦美さんはどうなの」

 

睦美「ええ――」

 

母「ひとりでそんな決めるもんじゃねぇ。よく話し合いな。今は新婚でよくても」

 

明「兄貴んとこに生まれんならいいじゃない、それで」

 

母「年取った時どうすんの。世話する人いなくて困るでしょ」

 

明「そのために作るなんて親のエゴじゃない。丸出しじゃない。勝手につくって子供の人生縛って」

 

母「なに言ってるかわかんねぇ」

 

父の声「(別室から)母さん、母さんちょっと」

 

母「(立って向かう)」

 

明「――」

 

睦美「――」

 

 

 

 


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