今回、Agsoil株式会社が提供する土壌硬度の評価サービスは、圃場内の土壌硬度の均一性を評価するものである。
いろいろな具体的なデータに触れる前に、なぜ、圃場の均一性が重要なのかということについて書いてみたい。
このブログで度々書いてきたように、土壌硬度分布(深さ60cmまでの硬さの分布)によって、ほとんどの作物は収量や品質に大きく影響されている。いずれ紹介するが、無理に土壌硬度分布を変えてみると、1.5倍から2倍近くも生長スピードを変えることができる。
逆に言えば土壌硬度が圃場内で違っていると、出来がまるで違うということになる。
篤農家と言われている方の圃場を見てほしい。整然ときれいに揃っていないだろうか。
そう、圃場内が整然ときれいに揃っていることが最低限の条件なのである。しかし、多くの方はそういったところに着目せずに、「なんの肥料を使っているのか?」「品種は何?」「特別な資材を使っていないか?」ということを気にする。
優れた農家はきれいに揃えて作ることを無意識のうちに行っているので、それを説明したりしない。当然ながらわざと揃いを悪くするようなこともしない。
実際の農家の大部分は出来の揃いなどあまり気にしていない。だが、作物の出来を揃えるというのが農業の基本中の基本でなのである。
面白いことに成果を出している優れた農家は、圃場内の出来の揃いの話をすると、賛同してくれるが、経営的に問題ありそうな農家は耳をかさないと言っていい。興味がなく、もっと高度な話を聞かせてほしい、というような素振りになる。
困ったことに成績が悪く、圃場内の揃いが悪い人ほど気にしないのである。
圃場内の揃いは経営にも直結する最大の技術課題なのである。
多くの農家の出荷歩留まりは6-7割程度である。植えられたものの、6-7割程度しか出荷できていないのである。そこそこ優秀な農家で8割程度。
これがどの程度経営に直結するのか気づいていない農家が多い。
6-7割だろうが、最優秀農家の9割出荷を比べると栽培管理の手間、経費はほぼ同じ。優秀な農家が9割出荷するとすれば、量が多いので出荷の手間が増えるというだけだ。(実際には多くの場合、出荷量は増えても揃いが良いと選別の手間が格段に少ないので手間がかからなくなる。)
つまり、出荷経費以外は同じなのである。
ということは、100%出荷して売上3000万円の農家が2/3の6.6割出荷だとすると2000万円の売上。8割出荷の農家は、2400万円の売上。この400万円は経費が対して変わらないために、純粋に利益が400万円増えるということを意味する。
9割出荷だと売上は2700万円で純利益が700万円増えるということになる。
なぜ、揃えて作らないと出荷量が減るのか。
極端な例は、圃場内に起伏がある場合。僅かな起伏とはいえ、低い場所には水が貯まる。大雨が来ればそこに水がたまり周囲の作物に悪影響を与えるだろう。場合によっては病気になったり、出荷できない。そして品質も大きさも当然違うということになる。圃場内での選び出荷などとなれば、出荷の手間もかかり、二度目の出荷物の品質劣悪である。
細かい圃場内の揃いが悪い原因については、次回に譲るとして、農業という産業において、なるべく揃えて作り、出荷できる物を増やすというのは基本でありそれが出来ない農家は到底儲からないというのは誰でもわかるだろう。
平均的に6-7割程度の出荷しか出来ていない農家がなんとか生きているのだから、出荷量を増やす、歩留まりを上げるというのが農家の経営にとって最も重要な観点なのである。
はっきり書けば、圃場内の出来を揃えるだけで経営は安定するだろう。余計な細かい技術を導入するよりも圃場内を揃えて作るほうが遥かに重要だ。
もっと高度な〇〇理論だの、〇〇資材などは不用である。まず最初に、同じように出荷できるものをたくさん作る。これだけでいい。
小難しい技術論はその部分をクリアしてから始めても遅くはないのである。
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