続・農業ITがうまくゆかない理由 | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一









私は、農業におけるIT活用は、今後必須だと考えています。しかし、何故、日本での取り組みについて批判的な意見を書くのかをもう少し書いてみます。




モニタリングが役に立たないと言う理由は、簡単です。


例えば、土壌化学性分析を見てみましょう。


土壌pHが作物に対してどのような影響を与えているのかわからない、という時代だということを想像してみてください。


土壌のpHをいくら細かく調べても、土壌のpHが作物に対してどのような影響を与えているのかを知らなければ、なんの役にも立たない。


土壌のpHがどのくらいであれば、健全に生育しやすいくのかをまず調べ結果がわかっていれば、土壌分析をするのは意味はあるが、土壌pHがどのように影響を与えているのかを知らなければ、リアルタイムでpHがモニタリングされようが、精密にモニタリングされようがなんの意味もないというのはだれでもお分かりだろう。pHを測定できるようになったら、まずpHがどのように影響をあたえるのかを調査し、土壌のpHをどのように調整すべきなのかを知らなければ、現場で活用できないのはアタリマエである。


簡単にいえば、土壌のpHの意味がよくわからないのに、土壌pHを測定しても意味が無いということである。pHは測定できました、後は現場で活用してくださいというだけは、全く実用性がない。現在のモニタリング中心のIT活用は、そのような状態なのだ。


モニタリングはデータを得る活動で、データを得たあとに以下のようなプロセスを経て、栽培の現場で利用できる。


1.データがある


2.データが栽培に意味しているところを把握する


3.どのように対処すればよいのかを、検証する(対費用効果を考える)


4.データを生かし、実用化し、栽培に活かす


1-3は、研究開発で言えば、研究に当たる部分にあたる。まず、モニタリングが出来たのであれば、そのデータが栽培にとってどのように影響しているのかを研究しなければ、栽培には役に立たない。いくらモニタリングの精度が向上しようと、遠隔で知ることができようと、リアルタイムで知ることができようと、現場では全く活用できない。まず、データの意味を明確にするべきなのである。(本当は、データからのアプローチ自体も間違っていると思うが、せめて上記のような考え方で進めるべきである)


研究と開発の考え方を分ける必要性は、以下のエントリーで書いている。


栽培研究をしてはならない!!!

http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/entry-11468996041.html


現在、栽培のために利用しようとしているIT技術の大部分がモニタリングに重きを置いているが、これは研究段階のものであり、現場に投げかけるものではないのである。


モニタリングにおいて、最も重要なのは、精密にたくさん測ることではなく、何をいつどの程度の精度でモニタリングすべきでそれによって何を得たいのか、かということがポイントであるにもかかわらず、そのようなことが全く意識されていない。


栽培において何らかの形でIT技術を利用するのであれば、栽培が最も重要であり、必要な情報が何かということを念頭おくべきである。


当然、多くのプロジェクトからお話を頂いた時にそのような話をした。しかし、何ら顧みられることもなく、聞き心地の良い、見栄えのよさそうな物に向かって無駄にIT投資をしている。どう考えてもうまくゆかないのは、アタリマエなので、IT業界、農業界にとって双方に無駄である。


重要なのは、モニタリングではなく、栽培にとって必要な情報はなにかだけであり、主役は栽培をどのようにするのかということである。


言い方を変えると、手段と目的の切り分けができていない。ITという言葉に騙されてはならない。あくまでIT技術というのは、栽培をよくするための手段にすぎない。資材や栽培技術と同じようにIT化ということも、手段にすぎない。何ら万能でもないし、道具の一つにすぎないことに気づけば、自ずと活用の方法は見えてくるはずである。

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