東京の桜もどうやら満開。小学校の入学式以来、桜に良い思い出がない私としては心騒ぐ思いがない。写真は10年以上前に撮ったものの蔵出し。熊本・南阿蘇村の「一心行の桜」。樹齢400年を超えると言われる。桜には菜の花が似合っている。
私の両親は熊本の産で、私も熊本の生まれなのだが、私が3歳になるころには家族そろって東京に住むことになったので、私には熊本時代の思い出というものがほとんどない。
ある時、老母が元気なうちに一度熊本に帰りたい、女学校時代の友達にも会いたいというので私が予定を立てて、姉と姉の娘に付き添ってもらって4人で熊本に行った。まだ3月で肌寒さが残っていたが熊本城の桜は満開で、だったら「一心行の桜」も見に行こうとここに来たのだった。
旅は母の生まれた村、すでに知る人もないその村で祖先と仲の良かった弟の墓に参り、女学校時代の友達もすでに亡く、その仏前に参り、若き日々の思い出深い阿蘇が最終日だったが、そこも昔の面影を見ることはむずかしいようだった。
母はその年の12月に忽然と逝ってしまった。誤嚥性肺炎で入院して一週間くらい、眠るように静かに息を引き取った。享年97歳。