プリズナー№6 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

現在でも熱狂的なファンがいてカルト的人気のある海外ドラマが『プリズナー№6』(NHKで1969年3月2日~6月22日放送)です。主演は、『秘密命令』や『秘密諜報員ジョン・ドレーク』のドレーク役で名が知られるようになったパトリック・マクグーハン。

稲妻の雷鳴のような音と共に、疾走してくるスポーツカーのロータス。車はロンドンの国会議事堂の横を抜け、どこかの地下駐車場に入ります。暗く長い通路を急ぎ足で歩く眼光の鋭い男(パトリック・マクグーハン)。彼はドアを荒々しく開け、上司に激高しながら辞表を叩きつけて出てゆきます。自宅に帰った男は旅行支度を始めますが、鍵穴から吹き出たガスで昏倒。気がつくと男は、見知らぬ村で№2という男から№6と呼ばれ、男が知っている極秘機密の情報を尋問されます。このオープニングシーンから毎回エピソードが開始。

“村”と呼ばれる場所は、美しい小さな集落で、小高い半島に位置し、山や森そして海に囲まれています。住人は名前を持たず、全員番号で呼ばれており、洗脳されているみたいで生活感覚がありません。彼らが興じているチェスは、人間が駒となって大きな盤面を移動。№6という番号を与えられた男は村からの脱出を決心。村から脱出しようとすると白くぼんやり輝く奇妙な球体(ローヴァーズ)が現れ脱出を阻止されます。直接会うことができる村の最高権力者は№2であり、№1は常に影の存在。こうして、№6と№2の駆け引きが始まります。

第2話では、新入りの女性№8が隣家に住むことになり、№2は№6に№8の世話を依頼。№8はナデァという本名を名乗り、№6と親しくなります。二人は共に脱出計画を立て、ローヴァーズから何とか逃れ、ロンドンに到着。ビッグベンの鐘の音を聞いた№6は、何かおかしいと直感し、№2の罠を見破ります。

第3話では、元スパイという特質を活かして研究センターに忍び込んだ№6は、自分が眠っている間に特殊な薬で心の中をのぞかれている事実をつきとめます。そこで彼は、逆に虚偽の記憶を作り出して№2をけむに巻くんです。

ジャンルとしてはSFサスペンスになるのでしょうが、スパイドラマでもあり、ミステリー(朝目覚めると村の住人が全て姿を消していた)でもあり、ポリティカルドラマ(№6が№2を決める選挙に出馬)であり、西部劇(朝目覚めると、西部の町にきていた)まである、まるでカフカの小説のようなシュールでユニークなコンセプトを持った不思議なドラマ。プロデューサーのルー・グレードはマクグーハンから企画の話を聞いても全体像が理解できなかったとのこと。だけど、当時の彼の知名度と影響力を買って、まず26エピソードを製作するための資金を提供することを約束。結局は17エピソードしか製作されませんでしたが、マクグーハン自身が製作指揮を務め、いくつかのエピソードでは脚本と監督も担当しました。作り手としても高い評価を得て、後年『刑事コロンボ』でも監督・脚本をいくつも手掛けています。

最終話(17話)は、16話で№6は№2に打ち勝ち、村の管理者たちがいる城に入って№1との会見を要請。彼らは№1との面会を許可しますが、それは罠で、№6は彼の仲間の執事と2人の反逆者の助けで何とか脱出。城とその住人たちは、彼らの謎の世界とともに破壊されます。結局、№6は何者だったのか、彼が持っていた機密事項は何だったのか、村の存在は何だったのか、謎のままに終了。放送局にはクレームや説明を求める電話が殺到したそうです。それだけ人々の番組に対する関心が高かったのでしょうね。

ちなみに、村はオープンセットでなく、北ウェールズにあるリゾート地・カーディガン湾に臨むポートマイリオンでロケされたそうで~す。