『去り行く男』(1955年/監督:デルマー・デイビス)
崖から落ちて気を失しなったジューバル(グレン・フォード)は、シェップ(アーネスト・ボーグナイン)に救われ、彼の牧場で働きます。シェップは妻のメイ(ヴァレリー・フレンチ)に惚れぬいていますが、メイは粗野な夫が大嫌い。ジューバルが荒馬を乗りこなすのを見て一目惚れ。メイはジューバルを誘惑しますが、ジューバルは相手にしません。メイと関係を持ったことのある牧童のピンキー(ロッド・スタイガー)はメイが冷たくなったことでジューバルを憎悪。ジューバルが牧童頭になったことからピンキーはジューバルがメイを誘惑して愛しあっているとシェップに嘘を言い、シェップがメイに問い詰めると、メイもジューバルに振られた腹いせに彼と関係ができたと言います。シェップは酒場へ行き、無言でジューバルに発砲。ジューバルもやむなく撃ち返してシェップを倒します。傷を負ったシェップは、牧場で野営している宗教団体のリーダーの娘ナオミ(フェリシア・ファー)の看護を受け……
粗野で容姿の悪い牧場主が、妻が不貞しているという性悪な部下の作り話を信じて主人公を殺そうとするのは、シェークスピアの『オセロ』が元ネタ。登場人物のそれぞれが精神的負い目をもっていて、それが心理的葛藤となって物語が展開。人物の性格設定に重きをおいたデルマー・デイビスらしい作品。射ち合いのシーンは殆どないのですが、丸腰のグレン・フォードがチャールズ・ブロンソンから拳銃を投げてもらってボーグナインを倒すガンプレイは見事。このガンプレイはこの映画が最初らしく、以後、色々なところで使われています。日活ウエスタン『大草原の渡り鳥』のアキラとジョー、マカロニ西部劇『怒りの荒野』のジェンマとクリーフが印象に残っていま~す。
『悪人の土地』(1958年/監督:デルマー・デイビス)は、奸計で刑務所に入れられた男が、鉱山の金脈を利用して幸福をつかむ西部劇。
鉱山主の奸計によって刑務所に服役していたダッチマン(アラン・ラッド)は、弱い者に味方する殺人犯マクベイン(アーネスト・ボーグナイン)と知りあいます。二人は同じ日に出獄し、ダッチマンが働いていた鉱山町へ。ダイッチマンは町の支配者ローンズバリー(ケント・スミス)の情婦アダ(クレア・ケリー)と親しくなり、マクベインはローンズバリーの手下に絡まれていたメキシコ女性アニタ(ケティ・フラド)を救い、アニタと愛しあうようになります。ダッチマンは彼だけが知っている廃抗に埋蔵している金の原石を掘り出す仕事にローンズバリーを利用しようとしますが……
復讐するわけでもなく、冤罪をはらすわけでもなく、大規模な犯罪を行うでもなく、全体的にスッキリしない内容です。W・R・バーネットの『アスファルト・ジャングル』が原案なのですが、主人公たちが愛する女性と結ばれて幸福な家庭が予想されるラストはノワールとは程遠いものです。虐げられていたメキシコ人たちが、主人公を助けて悪党たちを成敗するクライマックスも取って付けた感じね。犯罪者たちが破滅していく原作を、真逆のハッピーエンドしたのが失敗ですな。デルマー・デイビスの西部劇にしては、残念な出来といえます。




