フランケンシュタインとその怪獣 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

“ゴジラ”シリーズの怪獣バトルと異なり、新機軸を打ち出したのが『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』と『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』です。

『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』(1965年・東宝/監督:本多猪四郎)は、キングコングに次ぐゲストキャラクターとしてフランケンシュタインを迎え、新たな視点で作った“ゴジラ”シリーズ以外での初の怪獣対決映画。

第二次世界大戦末期、河井大尉(土屋嘉男)はドイツ潜水艦から渡されたフランケンシュタインの心臓を広島に運びます。衛成病院の軍医(志村喬)たちは何度も再生するフランケンシュタインの秘密を探り、戦況の挽回のために不死身の軍団を研究。しかし、原爆投下によって、その研究は灰になります。15年後、衛成病院跡地で見つかった浮浪児を国際放射線医学研究所のボーエン博士(ニック・アダムス)と戸上季子(水野久美)が保護。少年は白人種であり、短期のうちに20メートルの巨人(古畑弘二)に急成長。秋田油田の技師になっていた河井は、ニュースでそのことを聞き、巨人がフランケンシュタインの心臓に関係しているのでないかとボーエン博士たちに伝えます。河井の話から川地博士(高島忠夫)がドイツでフランケンシュタインの研究者からフランケンシュタインの再生能力の情報取得。テレビ局の取材に興奮した巨人は手首をむしりとって研究所から脱走。ちぎれた手首が床をはいまわる姿から巨人がフランケンシュタインと証明されます。その頃、秋田油田を襲った地底怪獣バラゴンが人や家畜など肉食を繰り返しながら南下。富士の樹海に潜むフランケンシュタインを探していた季子は、バラゴンに襲われますがフランケンシュタインが現れ……

本家フランケンシュタインの怪物は科学によって作られた再生人間でしたが、和製フランケンシュタインは東宝特撮路線に見あうように心臓から再生するクローン人間。巨大化するのは、原爆による放射能のせいですかね。新しい怪物ということでストーリーはこれまでの怪獣映画と異なり人間ドラマを重視しています。原爆製造に携わった過去を持つボーエン、フランケンシュタインをいつくしむ季子、科学のためには冷徹になり季子と対立する川地。これらの人物描写が作品に厚みを加えています。

ラストの大火災をバックにしたフランケンシュタインとバラゴンの格闘は、ぬいぐるみでない生身の人間(特殊メイキャップだけ)が怪獣との対決なので、従来の怪獣バトルとは異なったスピーディーで激しいものになっていますな。海外への輸出を意識した作品で、ラストシーンに大ダコが出現する別バージョンがありますが、作品を台無しにする“何じゃ、コリャ”で~す。

 

『フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ』(1966年・東宝/監督:本多猪四郎)は、『フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン』の姉妹編。

嵐の夜、三浦半島沖を航行する漁船が大ダコに襲われ、その背後にフランケンシュタインのような怪物が現れます。生き残った漁師の証言で海上保安庁はフランケンシュタインの研究で有名なスチュアート研究所へ連絡。1年前に富士で死んだとされるフランケンシュタインが復活したのかという質問にスチュアート博士(ラス・タンブリン)と助手のアケミ(水野久美)は否定。海の怪物ガイラは羽田空港に現れ、人々の目の前で女性を食べます。

スチュアート博士は対策に苦慮しますが、ガイラは再び上陸し、山岳地帯へ進行。橋本陸将補(田崎潤)は自衛隊の新兵器メーサー光線車を中心とした作戦を実施。作戦区域に進行したガイラに対し、メーサー光線と高圧電流の放電による二段構えの攻撃を展開。ガイラは完全に追いつめられますが、もう一匹の怪物が出現し、二匹は山中に姿を消します。スチュアート博士が採集した二匹の細胞からフランケンシュタインが分裂したものと判明。山の怪物はサンダと名付けられ、サンダは狂暴なガイラを止めようとしますが……

人間的なフランケンシュタインの姿だった前作と異なり、まさにフランケンシュタインの怪獣という造形。内容は怪獣中心になり、人物描写に起伏がありません。ラストにかけてのサンダとガイラの対決は精密に再現された都市のなかでの展開。都市破壊の特撮としては、東宝怪獣映画の中でも屈指のものといえます。それと、怪獣バトル映画の中にあって自衛隊の活動をしっかり描いているのもグッド。メーサー光線砲の線画合成が素晴らしく、光線があたった木々が吹っ飛ぶさまはリアル。ガイラと自衛隊の攻防のバックに流れる伊福部昭の音楽も秀逸で、ワクワクさせてくれま~す。