モスラ | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

東宝の絶対的怪獣といえばゴジラですが、私が好きなのはファンタジーとして魅力のあるモスラです。それも怪獣バトルをしない第1作目の『モスラ』(1961年・東宝/監督:本多猪四郎)ね。

ロリシカ国が水爆実験したインファント島海域で日本の漁船が難破。生き残った乗組員がインファント島で発見されます。発見するのはヘリコプター操縦士の佐原健二ですが、その後の出番なし。核総合センター院長(平田昭彦)が検査しますが乗組員は放射能汚染されていません。平田昭彦はその後の出番なし。乗組員たちが原住民に助けられたと言うもんで、ロリシカ国は日本側から原子物理学者の原田博士(上原謙)と言語学者の中条(小泉博)らを加えた調査団を派遣。その中にはコッソリ潜り込んだ新聞記者の福田(フランキー堺)と謎のロリシカ人ネルソン(ジェリー伊藤)がいます。

島に到着した一行は、原生植物から得た薬汁で放射能害をまぬがれ、平和な暮らしをおくる原住民と、島の守護神モスラに仕える30センチたらずの双子の小美人(ザ・ピーナッツ)を発見。調査団は島の平和が損なわれることを恐れ、事実の公表を中止。その意向を組んだ福田も特ダネの公開をあきらめます。同僚カメラマンの花村ミチ(香川京子)は福田の気持ちに同意しますが、編集長(志村喬)はプンプン。しかし、ネルソンは部下とインファント島を急襲。小美人を掠奪して、東京に連れ帰り見世物にします。

♪~モスラや、モスラ、ドゥンガンカサクヤン、インドゥムウ~甘く、悲しく、切々と歌う双子の小美人。口ずさむメロディがテレパシーとなって数千海里の海を越え、守護神モスラが感応。ネルソンに抗議に行った中条・福田・花村は、小美人からモスラが迎えに来ることを知らされます。巨大な洞窟の神殿で原住民たちが祈りの踊りを捧げる中、祀られていた巨大な卵からモスラの幼虫が誕生。急速に成長をとげながら、ドルフィンキックで洋上を進むモスラは100メートルを超える巨体で船を沈め、ナパーム弾の攻撃をものともせず日本上陸。小河内ダムを破壊(再見するまで記憶からとんでいた)し、防衛隊(長官は河津清三郎)の攻撃もなんのその、青梅街道から渋谷、赤坂見附、芝公園に達し、東京タワーを折り曲げて巨大なマユを作ります。ロリシカ国の熱線砲(パラボラアンテナ型の兵器は東宝特撮映画でお馴染み)がマユを攻撃しますが、マユが割れるや巨大蛾が出現。

ネルソンは小美人を連れてロリシカ国に逃げ去っており、モスラは小美人を追ってロリシカ国へ。250メートルにも及ぶ巨大な両翼は凄まじい強風をまきおこし、ロリシカの首都ニューカークを破壊。ロリシカ軍が全滅したニュースを聞いたネルソンは、再び逃亡をはかりますが群衆に退路を断たれ、警官に撃たれて死にます。小美人を追ってロリシカに来ていた中条・福田・花村は、モスラに小美人を引き渡すことに成功。

東宝怪獣映画初のカラー・シネスコ作品。シネスコ画面を活かしたスペクタクル・シーンが見どころで、特に渋谷付近から東京タワーに至るまでの幼虫モスラの都市破壊は、CG全盛の現在の視点から見ても古びた感じはしません。リアルに再現されたミニチュアの東京の街並みをラジコン操作による戦車が走行し、これに避難民や警官、防衛隊員などを合成、怪獣の出現で緊迫感あふれる東京の姿を見事に再現。

これまでの怪獣映画のパターンから脱却を目ざして、中村真一郎・福永武彦・堀田善衛の3人の純文学者が原案を作成。関沢新一の脚本は、核の洗礼を受けたインファント島を平和の象徴(荒廃した岩だらけの島の中央部は緑のジャングル)として描き、核を頂点とした人類の文明への批判をテーマにしたファンタジーにしています。“ゴジラ”のような生々しい現実感や理論的な説得性はなく、現代の夢物語。薬汁で放射能を克服したり、30センチたらずの双子の小美人の存在など現実離れしています。双子の小美人の歌声(音楽を担当しているのは古関裕而)とセットになっているのがモスラの魅力。その後、モスラは人類の味方として怪獣バトルに登場しますが、この作品がモスラのベスト作品で~す。