殺しのテクニックと狼の挽歌、そしてサムライ | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

殺し屋を主人公にしたアクション映画は数多く作られていますが、私のお気に入りは、『殺しのテクニック』『狼の挽歌』『サムライ』です。

『殺しのテクニック』(1966年/監督:フランク・シャノン)

クリント・ハリス(ロバート・ウェバー)は狙った相手を外したことのない凄腕の殺し屋。警察に護られている組織の密告者を狙撃して、これを最後に足を洗うつもりでした。しかし、組織はハリスに最後の仕事を依頼。ハリスは断るつもりでしたが、狙う敵が先手をうってハリスを襲撃。巻き添えを食った兄が殺され、兄の復讐のため最後の仕事として引き受けます。狙う相手セッキは整形手術をしていて、誰もその顔がわかりません。組織のボスはトニー(フランコ・ネロ)という男をハリスの助手として付けます。二人はニューヨークからパリへとセッキを追って……

がさつなイタリア映画にしては珍しく丁寧に作られており、人物描写もきめ細かいです。長年ハリウッドで地味な傍役だったロバート・ウェバーが渋い殺し屋を演じて好演。派手さはありませんが、年季のはいったプロの殺し屋そのものといった感じです。冒頭の狙撃シーンは、その後の映画でも踏襲されるようになる名シーン。

売り出し前のフランコ・ネロ(クレジットはフランク・ネロ)が、眼鏡をかけた哲学青年風な知的な中に残忍性を持った殺し屋ぶりを見せています。仕事を終えた後、ウェバーを片付けるのがネロの任務で、隙を狙って銃を撃つのですが、逆に撃ち殺されるという強烈な印象を残していま~す。

 

『狼の挽歌』(1970年/監督:セルジオ・ソリーマ)

殺し屋のジェフ(チャールズ・ブロンソン)は愛人ヴァネッサ(ジル・アイアランド)との休暇中に雇い主だったクーガンに襲われ、負傷して逮捕されます。ヴァネッサはクーガンと共に逃走。弁護士スティーブ(ウンベルト・オルシーニ)の助けもあり、2年の刑期を終えて出所したジェフは相棒だったキレイン(ミシェル・コンスタン)の情報からクーガンとヴァネッサの居所をつきとめます。カーレースに出場しているクーガンを狙撃して殺しますが、ヴァネッサは許して元の関係。そんなところへ、クーガン狙撃の証拠写真が届けられます。写真の送り主は、表は大企業の社長だが裏では犯罪組織のボスのウェーバー(テリー・サバラス)。麻薬中毒だったキレインがウェーバーに情報を売ったのね。ウェーバーはジェフに組織に入るように脅します。ウェーバーの屋敷で、刑務所に入っている間にヴァネッサがウェーバーの妻になっていることを知ったジェフは……

冒頭の狭い道路でのカーチェイスが面白いくらいで、セルジオ・ソリーマの細切れ演出はアクションが盛り上がりません。それでも私が気に入っているのは、ジルに何度裏切られても惚れた弱みで愛着があるブロンソンが、最後の最後にジルを殺して自分も生きる望みを失うという女々しい殺し屋ぶりが好きだからで~す。

 

『サムライ』(1967年/監督:ジャン・ピエール・メルヴィル)

殺し屋のジェフ(アラン・ドロン)は、コールガールの恋人ジャーヌ(ナタリー・ドロン)にアリバイを頼み、ナイトクラブの経営者を殺害。しかし、クラブの歌手バレリー(カティ・ロジェ)に顔を見られます。警察が捜査を開始し、クラブの客や従業員の目撃証言から主任警部(フランソワ・ペリエ)はジェフを容疑者のひとりとして連行。主任警部はジェフが犯人と直感しますが、バレリーは否定し、ジャーヌのアリバイ証言もあってジェフは釈放されます。ジェフは殺し依頼の仲介人から残金を受け取ろうとしますが、逆に殺されそうになり、殺しの依頼主をつきとめようとして……

日本の“葉隠れ”思想を持った殺し屋という設定。殺し屋が身支度を整えて出かけるまでの長い描写は、アラン・ドロンだから成り立つシーンで、他の役者がやったら陳腐で退屈なものになるでしょうね。メルヴィルの冷たく静かな演出は、ドロンの魅力と相俟って効果をあげています。「武士道とは、死ぬことと見つけたり」で~す。