若い東京の屋根の下に成熟する季節、そして花の恋人たち | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

日活で活躍した斎藤武市は、作家性ゼロの会社の要求に応えるだけの娯楽映画監督ですが、小林旭の“渡り鳥”シリーズのようなアクション映画だけでなく、青春映画においてもソツなくまとめる力量を見せています。

『若い東京の屋根の下』(1963年)は、吉永小百合の日活全盛時代の青春映画。

蕗子(吉永小百合)は19歳のOL。家庭は定年を迎える父(伊藤雄之助)に母(三宅邦子)、それに高校生の弟(太田博之)の4人暮らし。長男・太郎(下元勉)は裕福ですが重役の娘(山岡久乃)と結婚したため、妻には頭の上がらない毎日。次男・次郎は夜間高校の臨時教師をしながら小説家を目ざし、妻の夏子(朝風みどり)と共稼ぎのアパート暮らし。姉の律子(初井言栄)は薬局の利男(小沢昭一)と結婚していますが、姑(武智豊子)といざこざが絶えません。蕗子は父の定年後の相談に兄姉を訪問。途中でリヤカーをひいている大学生・三上(浜田光夫)とぶつかり、口喧嘩となります。次郎から山で遭難死した三男・三郎の部屋が空いているので後輩の大学生に下宿の世話をしたことを知らされた蕗子が家に帰ってみると、下宿人は三上。両親は三上に死んだ三郎の面影を見出し、弟は勉強を教えてもらえるので大賛成。家は賑やかになり、プンプンしていた蕗子も次第に三上に惹かれはじめます。蕗子の高校時代の同級生で浪人中の幸吉(山内賢)は、蕗子に想いをよせており、三上をライバル視して対立しますが……

蕗子と三上は愛を確認し、父は就職が決まり、兄姉は家庭問題が解決するという全てがハッピーエンドになる微温湯的青春映画です。吉永小百合と橋幸雄のデュエットでレコード発売され、ヒットしたので主題歌に使って映画化。当初は橋幸夫も出演する予定でしたが、橋のスケジュールの都合がつかず見送られました。劇中では橋の代わりに吉永小百合と山内賢がデュエットで歌っていま~す。

 

『成熟する季節』(1964年)は、大人の偏見や無理解をものともせず、明るく生きる地方都市の高校生の姿を描いた青春映画。

城北高校の3年生・花木悠子(和泉雅子)は、派手好きで反抗的で、何をしでかすかわからない女子高生。浪人中だった北高卒業生が悠子に失恋して自殺したことから、教員会で悠子の処分が話題になります。古手の教師たちは悠子の処罰を主張しますが、担任の英語教師・山中(長門裕之)と国語教師・奈井(芦川いづみ)が反対し、山中が悠子を指導することに決定。ノイローゼの浪人生が片想いして勝手に死んだのに、学生たちは中傷や興味の視線を注ぎます。そんな中、同級生の番村(浜田光夫)はいつもと変わらぬ態度で悠子に接し、悠子は番村に好意を持つんですな。番村は奈井先生に片想いの恋をしており……

悠子の家はお手伝いさんがいる裕福な家庭ですが、2号がいる父(下元勉)にウジウジしている母(山岡久乃)を見て、卒業したら花嫁修業でなくデパートで働こうと思っているんですが、現在では考えられない身長制限があって入社できません。番村は母(初井言栄)ひとりの貧しい家庭ですが、隣家で借りたバイクで女学生を送って足代を稼いだり、昼食を売ったりして生活力旺盛。卒業したらコックになって独立し、奈井先生との結婚を夢見ていますが、奈井先生は山中先生と結婚することになり失恋。実を結ばない二人ですが、明るくハッピーなラストになっています。

教師役は、校長が殿山泰司、教頭が浜村純、古手の教師に沢村貞子と井上昭文が出演。デパートの店員役で端役時代の山本陽子が出演していま~す。

 

『花の恋人たち』(1967年)は、日活の青春スターが総出演(舟木一夫も出演)した1968年の正月映画。女医を夢みる七人のインターン学生が織りなす恋と友情を、明るいタッチで描いた青春映画。

東京女子医大のインターン学生である操(吉永小百合)、有為子(十朱幸代)、藤穂(和泉雅子)、和子(伊藤るり子)、万千子(山本陽子)、与志(浜川智子)、ラヤ(斎藤チヤ子)の七人は仲の良いグループで、女医になるために国家試験の勉強と実習に励んでいます。中でも操と有為子は、大学内で一、二を争う秀才。吉岡(浜田光夫)の細菌研究室で学生にとっての最高の名誉ともいえる“学長賞”を狙っています。7人グループの何人かは、年頃とあって次々と華やかなロマンスを展開し……

十朱幸代の裕福な家庭に対して、吉永小百合は父がおらず田舎の病院で働く母(奈良岡朋子)ひとりの貧しい家庭。二人は浜田光夫を密かに想っています。十朱幸代が“学長賞”を獲りますが、浜田光夫が選んだのは吉永小百合。伊藤るり子は山内賢と結婚し、両親に反対されている山本陽子は、弟の舟木一夫や仲間の応援で陶芸家の岡崎二朗と婚約、和泉雅子は十朱幸代の弟・川口恒を好きになります。微温湯的展開が心地よい作品です。

主題歌「恋人たち」は吉永小百合が歌っていますが、舟木一夫も「北風のビギン」を劇中で歌っていま~す。