夕陽に立つ保安官と地平線から来た男、それに西部無法伝 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

喜劇役者ではありませんが、とぼけた味わいでコメディ演技を見せるアクションスターにジェームズ・ガーナーがいます。そんな彼が主演した西部劇コメディが『夕陽に立つ保安官』『地平線から来た男』『西部無法伝』です。

『夕陽に立つ保安官』(1968年/監督:バート・ケネディ)

墓穴から金が見つかり、ゴールドラッシュの波が押し寄せた小さな町カレンダーでは秩序と風紀が乱れに乱れ、町議会でオリー町長(ハリー・モーガン)は保安官を雇うことにします。オーストラリアに行く途中で、金でも見つけて資金稼ぎをしようとしていた流れ者ジェイソン・マッカラー(ジェームズ・ガーナー)が、手っ取り早く金にありつこうと保安官に志願。町の外れには無法者のダンビー(ウォルター・ブレナン)一家がおり、息子のジョー(ブルース・ダーン)を殺人罪で逮捕します。ジェイソンと保安官助手のジェイク(ジャック・イーラム)、惹かれあうようになった町長のジャジャ馬娘プルーディ(ジョーン・ハケット)の3人が、息子を奪い返そうとするダンビー一味と対決。

ガーナーのヌーボーとしたとぼけた味わいがグッド。無法者の親玉が『荒野の決闘』でクラントン一家の親父役だったウォルター・ブレナンで、対決するのが『墓石と決斗』で非情なアープ像を見せたガーナーなので、これはセルフパロディになっていますね。ジョーン・ハケットの役名がプルーディ(淑女)というのは皮肉。

泥んこの往来での乱闘をはじめ、西部劇でおなじみのシーンをパロディ化。特に可笑しかったのが、留置所にいれられているダーンを奪いかえそうとブレナン親子三人が鉄格子にツナをつけてひっぱるんですが、三人とも落馬。鉄格子の方が丈夫だったというオチ。さらに、クサッたブレナンに留置所のダーンが言った一言には大笑いしましたよ。主人公のその後を語る独白でシメるジャック・イーラムが、カメラの前で二枚目風にキメのポーズをとるラストも可笑しかったで~す。

 

『地平線から来た男』(1971年/監督:バート・ケネディ)

大年増の酒場のマダム(マリー・ウィンザー)と結婚するはめになったラティゴ・スミス(ジェームズ・ガーナー)が、途中下車して逃げ出した町パガトリーは二人の鉱山主バートン(ハリー・モーガン)とエームズ(ジョン・デナー)が主脈を巡って対立。ラティゴはエームズに雇われた凄腕ガンマンに間違われます。バートンとエームズの姉(エレン・コービー)は恋仲で、彼女の情報でバートンはラティゴを凄腕ガンマンと誤解したんですな。バートンの娘ペイシェンス(スザンヌ・プレシェット)は、ニューヨークの大学へ行きたいと躍起。父親がエームズに負けると、ニューヨークに行けなくなるのでラティゴの命を狙います。そんなことは知らないラティゴはルーレットで所持金を全て失い、酒場のマダム・ジェニー(ジョーン・ブロンデル)を誘惑。ジェニーはラティゴに惚れこみますが、現金は渡しません。ラティゴはバートンから5千ドルの条件で誘われ、町で親しくなった呑んべえのジャグ・メイ(ジャック・イーラム)を凄腕ガンマンのスウィフティに仕立て上げ、ジャグとバートンをうまく利用。ラティゴはペイシェンスと親しくなり、両派の抗争をうまく利用していましたが、本物のスウィフティ(チャック・コナーズ)が現れたことから……

『夕陽に立つ保安官』の姉妹編で、この作品でもジェームズ・ガーナーがとぼけた調子の良さを見せてくれます。ジョーン・ブロンデルに言い寄る言葉が、マリー・ウィンザーを口説いたのと同じ文句だったのには笑いましたよ。セリフや言葉での説明が多く、チャック・コナーズのスキンヘッドくらいしか映像で見せる笑いがなかったのは残念。セリフでなく、ヘンリー・モーガンとエレン・コービーが自転車に乗ってデイトするシーンがあったら笑えたんですけどね。

再見して気づいたのですが、気が短くてすぐに銃をふりまわすスザンヌ・プレシェットのコメディエンヌぶりがグッド。役名がペイシェンス(忍耐)というのは、前作のジョーン・ハケットの役名がプルーディ(淑女)といったのと同じ言葉遊び。

 

『西部無法伝』(1971年/監督:ポール・ボガート)は、白と黒とのペテン師コンビが騒動を巻き起こすコミカル西部劇。

奴隷廃止論がさかんになってきた南北戦争直前、白人のクインシー(ジェームズ・ガーナー)と黒人のジェーソン(ルイス・ゴセット・ジュニア)は、金に困っている主人と売られる奴隷と見せかけ、奴隷競売で金をせしめます。クインシーが町を離れると、買われたジェーソンも逃亡。この手であちこち稼いでまわるんですな。カンザス州フェアシェークの町は奴隷制度の是非で対立する町。巻き添えをくって、ジェーソンは殴り倒され、ジンジャー(スーザン・クラーク)という女性に介抱されます。ジェーソンはジンジャーと仲良くなりますが、実はジンジャーは泥棒。一方、奴隷のふりをしているジェーソンは馬小屋で鎖に繋がれている奴隷娘ナオミ(ブレンダ・サイクス)に一目惚れ。競売の日、奴隷廃止論者ジョン・ブラウンの一団が乗り込んできて競売にかけられている奴隷たちを救い出します。ジェーソンは一団から逃げ出し、クインシーと合流。この稼業を辞める汐時と考えた二人は、今までの稼ぎを山分けしようとサドルバッグを開けるとスッカラカン。ジンジャーが盗んだのね。再び稼業を始めたやさき、以前騙した人物が現れ、クインシーは留置所行き。ジェーソンは奴隷商人のブランケット(エドワード・アズナー)に捕まります。そこには、一目惚れしたナオミも捕まっており、ジェーソンとナオミはテキサスの農園主キャロウェイ(アンドリュー・ダガン)に売られます。クインシーは彼を好きになったジンジャーによって牢を抜け出し、伝染病治療の医者に化けてジェーソンを捜しますが……

ルイス・ゴセットやスーザン・クラークとのやりとりで、ガーナーが『夕陽に立つ保安官』や『地平線から来た男』で見せた持ち前のオトボケぶりを見せてくれます。特に、スーザンと伝染病治療の医者に化けてブランケットから奴隷を買った所有者を騙して金をせしめるところは笑えましたな。ただ、ポール・ボガートの演出はバート・ケネディほどのキレがなく、おふざけ度合も今イチ。キャロウェイ農場のアフリカから連れてきたばかりの奴隷の扱いなどは、もっと面白くなったと思えるだけに残念。