若山富三郎の子連れ狼(1) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

1970年から76年にかけて週刊『漫画アクション』に連載された、小池一雄:作、小島剛夕:画の『子連れ狼』は大人気となり、若山富三郎主演で映画化されました。

『子連れ狼・子を貸し腕貸しつまつる』(1972年・東宝/監督:三隅研次)

公儀介錯人の役職を狙う柳生烈堂(伊藤雄之助)に反逆の汚名を着せられた拝一刀(若山富三郎)は、捕縛にきた柳生備前(渡辺文雄)と柳生蔵人(露口茂)を斬り、息子・大五郎(富川晶宏)と柳生一族への復讐のため冥府魔道の道を歩むことになります。刺客となった一刀は、小山田藩江戸家老(内藤武敏)から、世嗣を殺して御家乗っ取りを画策する国家老(内田朝雄)と暗殺部隊を壊滅する依頼を受け、暗殺部隊が集結する湯治場に向かいますが……

ワカトミの“子連れ狼”シリーズ第1作です。このシリーズの魅力はチャンバラ。奇想の殺陣が随所にあり実に面白いのです。本作では、前半は烈堂(原作が劇画ということを意識してか、伊藤雄之助はメチャ臭い演技で浮いています)の息子たちとの1対1の対決。備前相手には、川に誘き寄せての立ち合いで、一刀は刀を水中に沈めて間合いを見せぬようにし、斬ってくる備前を水鷗流波切りの太刀で水中から斬り上げて倒します。蔵人相手には、西陽を背にした蔵人に対し、一刀は大五郎の額につけた鏡の反射で目をくらませ、陽に立ち向かった不利な条件を逆転。

後半は宿場町での殺し屋集団相手の大立ち回り。血が噴き出るだけでなく、首は飛ぶし、頭はまっぷたつと、残酷性でなくスプラッター殺陣の美学を感じま~す。

 

『子連れ狼・三途の川の乳母車』(1972年・東宝/監督:三隅研次)

黒鍬衆の小頭・黒鍬小角(小林昭二)は、明石柳生の頭目・柳生鞘香(松尾嘉代)に柳生烈堂からの拝一刀暗殺命令を伝えます。しかし、一刀の前に鞘香配下の別色女も小角率いる黒鍬衆も、鞘香一人を残して全滅。鞘香は、阿波藩家老から公儀護送役の左弁馬(大木実)・左天馬(新田昌玄)・左来馬(岸田森)の通称・弁天来三兄弟暗殺を請け負った一刀を追いますが……

前半は、黒鍬衆や別色女との対決。女ということで侮る黒鍬衆に別色女たちは実力を見せ、一刀相手に巡礼娘に扮して刃のついた笠をブーメランのように投げつけたり、百姓娘に扮して刀が仕込まれている大根を投げつけたりと、意表をつく殺陣が展開します。

後半は弁天来兄弟との対決。砂丘に穴を掘ってひそんでいた敵を、弁天来は手甲鈎・棍飛・鉄拳とそれぞれ不思議な武器によって次々に殺し、その実力を披露。強敵・左弁馬に対して一刀は、刀をナイフのように投げつけて勝利します。左弁馬は武士の魂である刀を投げたことに驚きますが、一刀は冥府魔道に入っているので武士でもないし人間でもないんですな。武士の美学を捨てたところに、このシリーズの美学があります。

ロジャー・コーマンが前作と本作を編集し、アメリカで『Shogun Assassin』の題名で公開。カルトな人気作品となって、タランティーノたちに影響を与えました。

 

『子連れ狼・死に風に向う乳母車』(1972年・東宝/監督:三隅研次)

女衒(名和宏)を殺した少女(加藤小夜子)を助けた拝一刀は、少女の代わりに忘八の酉蔵(浜木綿子)から折檻を受けます。酉蔵は一刀が刺客・子連れ狼であることに気づき、藩を取り潰し天領の代官となって私腹を肥やしている裏切者・猿渡玄蕃(山形勲)の暗殺を依頼。用心棒の六兵衛(草野大悟)と左門(和崎俊哉)を一刀に倒された玄蕃は刈谷藩に応援を頼みます。やって来たのは一刀と因縁のある渡り徒士の官兵衛(加藤剛)で……

200人の敵を相手に乳母車に仕込んだ機関銃が炸裂。『続・荒野の用心棒』のジャンゴみたいなものですな。機関銃だけでなく、乳母車は弾丸除けにもなり、弾丸がなくなれば備えつけの長巻や槍でバッタバタと敵を倒していきます。ラストは死に場所を探している官兵衛との対決。官兵衛の首が飛び、首だけとなった官兵衛の目を通して見る視界というのは三隅ならではのアングルで~す。

4作目以降は次回で……