征服者とジンギスカン、ついでに蒙古の嵐 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

ジンギスカンの物語は、洋の東西を問わず映画化されていますが、史実とは大きくかけ離れたものばかり。特にハリウッドで作られたものは、何じゃコリャというものばかりですが愉しめます。

『征服者』(1955年/監督:ディック・パウエル)は、ジョン・ウェインの西部劇風ジンギスカン。

ゴビ草原で多くの民族が勢力を争っていた12世紀。モンゴルの熱血児テムジン(ジョン・ウェイン)は、義兄弟ジャムガ(ペドロ・アルメンダリス)と鷹狩りの途中、タタール王女ボルテ(スーザン・ヘイワード)の嫁入り行列を見つけます。タタール王に父親を殺された恨みを持つテムジンは、一族を率いて行列を襲い、ボルテを掠奪。母(アグネス・ムーアヘッド)の反対にも拘わらず、テムジンはボルテを妻にすると宣言。ボルテと結婚するはずだったメルキト族の族長がテムジンの集落を襲いますが、返り討ちにあいます。タタール征服のため、テムジンは内蒙古の支配者ワン・カーン(トーマス・ゴメス)との同盟を計画。テムジンはボルテを連れて、遊興にふけるワン・カーンに謁見。側近の占い師シャーマン(ジョン・ホイト)の勧めでワン・カーンは同盟を承諾。帰路についたテムジンはタタール軍に襲われ捕えられます。タタール王クムレク(テッド・デ・コルシア)の拷問をうけますが、ボルテの助けで脱出に成功。テムジンは兵を集め、ワン・カーンの兵を待ちますが、ワン・カーンはテムジンがタタールに殺されたと信じて兵を出しません。そのことをシャーマンから知らされたテムジンは、シャーマンの手引きでワン・カーンの城を奇襲。カーンを倒し、カーンの兵を手中にします。兵力の整ったテムジンはタタールとの決戦へ……

ジョン・ウェインをはじめとして、配下のリー・ヴァン・クリーフたち男は皆ドジョウ髭をつけて東洋人らしくみせていますが、笑える存在です。女たちもインディアン娘を演じる白人女優と同じで、スーザン・ヘイワードはどこから見ても白人ですよ。風景も西部劇に出てくる、そのまんまの荒野。だけど、大量の馬とエキストラを使った騎馬合戦は、CGでは味わえない全盛期のハリウッドらしい迫力あるものとなっていま~す。

 

『ジンギス・カン』(1965年/監督:ヘンリー・レヴィン)は、オマー・シャリフのアラブ風ジンギスカン。

メルキト族のジャムカ(スティーブン・ボイド)に父を殺され、捕虜となって奴隷のような生活をしていたテムジン(オマー・シャリフ)は、水に落ちたジャムカの婚約者ボルテ(フランソワーズ・ドルレアック)を救い、互いに惹かれあいます。ある日、占星術師ギーン(マイケル・ホーダン)・怪力奴隷センガル(ウディ・ストロード)と脱走。捕虜となっていたシャン(テリー・サバラス)たちサルキト族の戦士を救い出して配下にします。奴隷商人の隊商を襲って、奴隷を解放し、モンゴル国家の建設を決意。メルキトの集落を奇襲して、ボルテを拉致し、妻にします。メルキトの追跡を逃れて東へ向かっていたテムジンたちは、中国の要人カム・リン(ジェームズ・メイソン)を助け、北京に入城。金国皇帝(ロバート・モーレイ)の信頼を得て、兵力を増強。金に侵攻してきた満州族を撃破し、満州族と同盟していたジャムカを捕えます。テムジンを警戒した皇帝は、ジャムカを使ってテムジンの暗殺を計画。そのことをカム・リンから知らされたテムジンは、戦勝祝いの花火を利用して城門を爆破し、部隊を率いてモンゴルに戻ります。ジャムカも、その混乱を利用して逃走。カム・リンの進言で、金国を滅ぼしたテムジンのもとにメルキトを除くモンゴルの全部族が結集。西へ向けて進撃を開始します。ジャムカはホラズム王(イーライ・ウォラック)に取り入り、テムジンとの最終決戦へ。テムジンはホラズム・メルキト連合軍を破り、ジャムカを決闘で倒し、メルキト族も加わってモンゴルの統合をはたすのです。

ジンギスカンの生涯に焦点を絞っていますが、ハリウッド映画らしく史実とは大きくかけ離れ、最初から最後までテムジンとジャムカの対立という構図。アラブ顔のオマー・シャリフよりもスティーブン・ボイドの方が蒙古人の雰囲気があり、存在感が大きいです。ユーゴスラビアでロケしているので、『征服者』よりアジアの大平原での戦いになっていますな。デュッシャン・ラディックの音楽も東洋的な旋律を織り込み、悪くありません。だけど、騎馬合戦は『征服者』に劣りま~す。

 

ジンギスカンが主人公ではありませんが、モンゴル軍のヨーロッパ侵攻を描いた作品に『蒙古の嵐』(1961年/監督:アンドレ・ド・トス)があります。中学時代に劇場で観て強烈な印象が残っており、再見したいと思っているのですが、上記2作品と違ってDVDが発売されておらず、記憶と資料により紹介。

13世紀のヨーロッパ、ジンギスカンの長男オゴタイ(ジャック・パランス)率いる蒙古軍がポーランドに侵攻。国王はステファン(フランコ・シルヴァ)を和平交渉の使者として送り出します。武力制圧しか考えていないオゴタイはステファンを殺したいのですが、ジンギスカン(ロルダーノ・ルピ)が決めた掟のためにそれができません。オゴタイや彼の妻ウルナ(アニタ・エクバーグ)は、ジンギスカンが到着する前にステファンを暗殺することを計画。しかし、ステファンは密かに抜け出してジンギスカンと直接交渉。和平交渉は成功しますが、それを不満とするオゴタイは使者を捕えて偽りの信書を持たせます。ところが、そのたくらみをステファンの活躍でジンギスカンに見破られ、オゴタイは罰せられようとしますが、ウルナがジンギスカンを刺殺。ジンギスカンの死をステファンのせいにしたオゴタイはウルナと共に蒙古軍を率いて総攻撃をかけますが、ステファンの作戦で底なし沼に誘い込まれて全滅します。

ジャック・パランスが役柄ぴったりの残忍ぶりを発揮し、アニタ・エクバーグが妖艶ぶりを見せてくれます。エクバークの水浴びシーンに、中学生だった私はドキドキしたものですよ。ジンギスカンが殺されたのにはビックリ。蒙古軍が立ち去って行くラストシーンに、ジンギスカンの王位はフビライが継ぎ、ヨーロッパに平和がもどるという、ナレーションだか字幕だかがあったような気がしま~す。