ある戦慄と激突 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

2本立ての添物として予備知識もなく期待もしていない作品が、メイン作品よりも面白かったことは結構あるのですが、特に衝撃的だったのが『ある戦慄』と『激突!』です。

『ある戦慄』(1967年/監督:ラリー・ピアース)は、二人組の不良が、深夜の地下鉄に乗り合わせた人たちを脅し、からかい、痛めつけるだけの話なんですが、“現代社会の恐怖”を圧倒的な迫力を持って描き出しています。

深夜のニューヨーク、眠りこけている浮浪者、4歳の娘を連れたサラリーマン夫婦、若い恋人同士、息子に金の無心に行き断られた老夫婦、パーティ帰りの高校教師夫妻、アル中男とその同性愛者、白人嫌いの黒人夫婦、負傷してギブスをはめている兵士(ボー・ブリッジス)と同僚の兵士が地下鉄の乗客。そこへ、通りがかりの男から金を強奪したジョー(トニー・ムサンテ)とアーティ(マーチン・シーン)が乗り込んできます。二人は乗客ひとりひとりに難くせをつけ始め、小さな少女にまで手をかけようとした時、怒りを爆発させた負傷兵が単身、彼らに飛びかかっていき……

他人が困っているのに知らぬ顔をしている乗客たちが、自分にもお鉢がまわってきて青くなり、その間にいろいろなリアクションするのが面白いです。乗客たちの情況説明の前半部分が少しまだるっこかったのですが、それが後半に活きてくるんですね。当時、無名の出演者ばかりで、いかにも身近にいそうな人たちが、身近に起こりそうな事件に巻き込まれるというリアリティに背筋が寒くなります。50年以上も前の作品ですが、乗客の一人一人が現在でも通用するキャラで、再見しても全然古びていませ〜ん。

 

『激突!』(1971年/監督:スティーブン・スピルバーグ)は、追い越した巨大タンクローリーに嫌がらせをされ、襲われるという単純な物語を巧妙な組み立てで描いた傑作。

セールスマンの男(デニス・ウィーバー)が行く手をさえぎるノロノロ運転の巨大タンクローリーを何気なく追い越します。すると、相手は急にスピードをあげて接近。先に行かせると、相手はまたノロノロ運転で道をふさぎます。相手はいつまでたっても嫌がらせをやめず、凶暴性が増加。おびえきった主人公はドライブインに逃げ込みます。洗面所から出てくると、タンクローリーも停まっており、運転者を捜すために食堂にいる男たちを観察。こいつだと思った男は違っており、タンクローリーは先に出発。男はこれで安心と出発し、エンコしたスクールバスと出会います。はるか前方のトンネルの入り口には目玉のように光るタンクローリーのヘッドライト。迫ってくるタンクローリーとスクールバスの間をすりぬけ、猛スピードで逃げます。タンクローリーはスクールバスを手助け。これで一安心と、踏切で貨物列車の通過を待っていると、いつの間にか追いついたタンクローリーが主人公の車にぶつけて線路へ押し出そうとするんですな。タンクローリーは殺意を明確にし……

無名だったスピルバーグの名を一躍高めた作品。原作はリチャード・マシスンが『プレイボーイ』誌に載せた短編。脚本もマシスン自身が手掛けています。タンクローリーの運転手の顔を見せないことで、主人公の焦燥感、恐怖が観客にも伝わり、タンクローリーそのものが怪物となって無力感を抱かせるんですね。ハイウェイで多くのドライバーが経験したことがあるような恐怖を題材に、スピルバーグはアングルに凝り、テンポよく画面をつないで、だれることのない出色のサスペンスに仕上げていま~す。