高田浩吉の伝七捕物帖(1) | 懐古趣味親爺のブログ

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“伝七捕物帖”は、松竹で11本、東映で2本作られた高田浩吉のヒットシリーズです。捕物帖のシリーズとして長谷川一夫の“銭形平次”が大映で大ヒットし、松竹も長谷川一夫と同タイプの二枚目・高田浩吉を使って成功したんですな。高田浩吉は歌も歌えるし、子分役の伴淳三郎の臭いギャグも受けて、観客に喜ばれたようですが、内容が同じパターンの繰り返しで、飽きられるのも早かったようです。

原作は捕物作家クラブ(野村胡堂・城昌幸・土師清二・佐々木壮太郎・陣出達朗)の連鎖小説で、話題性はあったでしょうが、小説としての出来ばえは? 後年、陣出達朗がひとりで書くようになり、中村梅之助が主演したテレビ時代劇『伝七捕物帳』(日本テレビ系列で1973年10月2日~77年10月11日放送)では、陣出達朗の原作になっています。

『伝七捕物帖・人肌千両』(1954年/監督:松田定次)は、高田浩吉のシリーズ1作目。

江戸の町を荒らしまわっている“疾風”と名乗る強盗団から、大野柳斉(三島雅夫)の屋敷に予告の矢文が入ります。柳斉は奉行所に届けず、懇意の目明し・万五郎(薄田研二)と側室・お蘭(長谷川裕見子)の兄・伊丹重四郎(近衛十四郎)に護衛を依頼。しかし、隣家の火事のドサクサに3千両が奪われ、もうひとりの側室・お越が殺害されます。万五郎の娘・お俊(月丘夢路)と恋仲の黒門町の伝七(高田浩吉)が、負傷した万五郎に代って捜査を開始し……

三島雅夫が盗賊の首領で、自分の正体を知った側室を殺したんですな。月丘夢路にも嫌らしく迫り、圧倒的存在感を持っています。身の安全のためなら仲間の剣豪・近衛十四郎を騙して毒殺するふてぶてしさ、悪党の魅力満点。よどみない展開で、見せ場もガッチリ作っており、これなら観客は満足したと思います。伝七は、第2作『刺青女難』でお俊と所帯を持っており、以後は恋女房ね。

 

『伝七捕物帖・女郎蜘蛛』(1955年/監督:福田清一)はシリーズ4作目。

恋女房のお俊を亡くした伝七は、子分の竹(伴淳三郎)と気晴らしのために伊豆にやってきます。そこで、火薬庫の爆発事故や火薬職人殺害事件と遭遇。火薬庫の番人の娘・お俊(草笛光子)のために捜査を開始。殺された火薬職人はお俊の父の弟子で、女芸人のお千代(木暮実千代)にいれあげていたことがわかります。お千代には相馬伊織(須賀不二夫)という無頼浪人の情夫がおり……

月丘夢路のお駿に代って、同じ名前の草笛光子が登場。次作の『花嫁小判』では草笛光子のお駿と所帯をもっており、再婚したのでしょう。草笛光子のお駿は第7作まで登場し、高田浩吉と毎回エンディング・デュエットを聴かせてくれます。♪~みんな御用のときがきた~と、能天気に高田浩吉が歌いながら現れるお気楽捕物帖になってきま~す。

 

『伝七捕物帖・銀蛇呪文』(1957年/監督:福田清一)はシリーズ8作目。

薬問屋の近江屋の妻が自殺し、横笛を吹く幽霊が現れ、近江屋の次女が殺されます。長女と恋仲の手代・伊之吉(高野真二)が犯人として追われ、伝七の女房・お駿(福田公子)の幼馴染の花魁・お袖太夫(嵯峨三智子)のところに隠れます。伝七は同心の橘三四郎(小笠原省吾)と捜査を開始。自殺した妻の顔がつぶれていたことに不審を抱いた伝七が墓をあばくと、思っていたとおり別人。伝七の調べで、甲府勤番・山内日向守(石黒達也)が密かに栽培している麻薬を近江屋が売っていることがわかります。しかし、近江屋も日向守も殺されてしまい……

復讐に絡んだ殺人事件を、顔なし幽霊の笛に操られる猛毒銀蛇の恐怖をからめて描いた怪奇趣味に彩られた内容。ご都合主義の展開ですが、当時の平均的捕物帖映画といえます。三代目・お駿の福田公子は、きりっと結んだ口元が美しく、着物が似合う美女。宝塚出身で、草笛光子と同様にエンディング・デュエットを聴かせてくれます。

 

『伝七捕物帖・幽霊飛脚』(1959年/監督:酒井欣也)は、シリーズ11作目で、松竹での最終作。

若い娘を次々に襲う殺人鬼・幽霊飛脚から、旗本・若狭家に娘のお市(松山容子)の命を奪うという殺人予告が届きます。若狭家から相談を受けた牧野内膳亮(中山昭二)は、剣術指南の大場接心斎(石黒達也)と北町奉行所に護衛を要請。奉行の遠山金四郎(近衛十四郎)に命じられて伝七は若狭家を見張りますが、お市は殺されてしまいます。伝七は、殺された娘たちが将軍・家斉の側室候補だったことに気づき……

お駿は10作目から嵯峨三智子。お決まりだったエンディング・デュエットはありません。伝七がアレコレ推理する前に、犯人がかってに動き回って御用となるパターンは変わりませ~ん。