必殺仕掛人 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

現在まで続く大人気となった“必殺”シリーズですが、その第1作が『必殺仕掛人』(TBS系列で1972年9月2日~73年4月14日に放送)です。裏番組の『木枯し紋次郎』に対抗するために企画されたのが、これまでの勧善懲悪の時代劇ヒーローとは異なる殺し屋稼業の仕掛人。原作である池波正太郎の“仕掛人・藤枝梅安”は連載開始されたばかりで、ドラマ化にあたっての仕掛人は『殺しの掟』に出てくる、西村左内・音羽屋半右衛門、それに藤枝梅安となっています。

第1話の「仕掛けて仕損じなし」(監督:深作欣二、脚本:池上金男=池宮彰一郎)はレギュラーの紹介的エピソード。

音羽屋半右衛門(山村聰)は口入屋ですが、世のため人のためにならない人物の殺しを請け負う仕掛人という裏家業の元締め。材木商・伊勢屋(浜田寅彦)の依頼で、工事を独占して貧者を泣かせている材木商・辰巳屋(富田仲次郎)と、辰巳屋と結託して賄賂を貪っている作事奉行(室田日出夫)の殺しを引き受けます。町の人々から人望がある柔和な人柄ですが、掟に厳しく、仕掛人たちの親的な存在。

表家業は鍼医者の藤枝梅安(緒形拳)が、密偵の千蔵(津坂匡章=秋野太作)を使って辰巳屋の妾おぎん(野川由美子)の家に潜入し、辰巳屋を脳卒中に見せかけて暗殺。梅安は8歳の時に京都の鍼医・津山悦堂に拾われ、21歳まで修行。ぼんのくぼ、または額を針のひと突きで刺し殺します。千蔵は半右衛門の部下で、梅安の仕掛けの段取りをお手伝い。お調子者で女好きですが、忍び込みの腕は一流。おぎんは、その後、元の芸者に戻り、梅安とバッタリ遭遇して、いい仲になります。

剣の腕が立つ作事奉行を倒すために半右衛門はかねてから目をつけていた浪人・西村左内(林与一)を勧誘。左内は妻(松本留美)と息子に秘密にすることを条件に仕掛人に加わります。千蔵の弟分・万吉(太田博之)が工事現場で騒ぎをおこし、作事奉行がひとりになったところを左内が斬り倒します。6年前に左内は悪家老を斬って脱藩。生真面目な性格で、酒と女が好きな梅安とは好対照。殺しの前に笹笛を吹き、その音が止むと一刀のもとに斬り倒します。趣味は釣り。

半右衛門の妻おくら(中村玉緒)が音羽屋の下働きとして雇おうとした娘を暴利な借金で身売りさせようとする悪辣な口入屋(高品格)を半右衛門が成敗。おくらは元盗賊で、夫の裏家業を知っていて手伝っています。無類の世話好き。

第2話「暗闇仕掛人殺し」(監督:深作欣二、脚本:國弘威雄)は、梅安が仕掛人の道にはいることになった最初の殺人のことがわかるエピソード。鷹匠の小野寺(遠藤辰雄)に無惨に殺された遊女の恨みをはらすため、おれん(白木万理)たち品川女郎衆は音羽屋に殺しを依頼。一方、梅安は小野寺に恨まれており、小野寺が依頼した仕掛人(美川陽一郎)一味に命を狙われます。

第4話「殺しの掟」(監督:三隈研次、脚本:池上金男=池宮彰一郎)は、嘘・偽りを言った依頼人は殺すというエピソード。山形屋(金田龍之介)の依頼で音羽屋半右衛門は松永彦七郎(亀石征一郎)の殺しを引き受け、西村左内が彦七郎を狙いますが、立ち合いの途中で中根元十郎(大友柳太朗)に止められます。元十郎は左内の少年時代の剣の師匠。千蔵(津坂匡章=秋野太作)の調べで彦七郎は妹の仇を捜しており、彦七郎に狙われている御典医(河津清三郎)の息子の方が極悪人ということがわかります。左内は彦七郎の仇討ちを手伝い、半右衛門は自分を騙した山形屋を掟通りに成敗。

第5話「女の恨みはらします」(監督:大熊邦也、脚本:池上金男=池宮彰一郎)は、おくらが盗賊だったことがわかるエピソード。清吉(島米八)たち不良どもに犯されて気が狂った娘の父親の頼みで梅安が不良どもを成敗。背後には不良どもの親から金をせしめている与力(草薙幸次郎)と下っ引き(宮口次朗)がいます。半右衛門の妻おくらが与力に脅されているのを知った左内が与力を殺害。下っ引きは半右衛門を脅そうとして逆に殺されます。

第6話「消す顔消される顔」(監督:松本明、脚本:山田隆之)から、山下雄三が歌う「荒野の果てに」がエンドクレジットで流れます。

第8話「過去に追われる仕掛人」(監督:大熊邦也、脚本:安倍徹郎)は、左内の過去がわかるエピソード。左内は6年前に悪家老(戸浦六宏)を斬って同志と脱藩したのですが、同志だった松岡(東野孝彦)と再会。死んだと思った悪家老は生きており、松岡から左内の居所を聞き出し松岡を殺害。そして、半右衛門に左内の殺しを依頼。半右衛門は依頼を受けたふりをして、左内が悪家老退治。

第23話「おんな殺し」(監督:松本明、脚本:山田隆之)は、仕掛人を使って先妻を殺し、料理屋の後妻におさまった美乃(加賀まりこ)が、今度は娘を狙います。娘からの殺しの頼みで梅安が美乃を殺害しますが、美乃は妹だったという因縁話。先妻は梅安が半右衛門とは別の元締からの頼みで殺していたのね。

第24話「士農工商大仕掛け」(監督:深作欣二、脚本:池田雄一)は、妻を輪姦されたうえに殺された按摩の頼みで、悪坊主(小堀明男)と浮世絵師(木村元)、それに侍・庄屋・大工の頭領・商人を梅安が成敗。馴染みの芸者おぎん(野川由美子)に仕掛人であることがばれた梅安は鍼でおぎんの記憶を消します。以後、おぎんの登場はなし。

最終話「仕掛人掟に挑戦!」(監督:三隈研次、脚本:國弘威雄)は、仕掛人の元締めたちが、奉行所筆頭与力(新田昌玄)と結託した裏切者によって殺されたり捕まったりします。半右衛門を逃がすために捕まった総元締め(三津田健)が、半右衛門に裏切者と与力を殺すように依頼。裏切者は役人に捕まった者の中にいると考え、小伝馬町の牢屋に探りをいれますがわかりません。総元締めが斬首され、ひとり生き残った治三郎(浜田寅彦)が裏切者と判明。梅安が治三郎を、与力を左内が成敗。ほとぼりがさめるまで全員が江戸を離れる旅立ちでエンドです。

原作のあるエピソードとオリジナルエピソードでは梅安のキャラに違いがあり、緒形拳の梅安は、基本的には女好きの明るいキャラ。田宮二郎、萬家錦之助、小林桂樹、渡辺謙、岸谷五朗、最近では豊川悦司が原作をベースにした藤枝梅安を演じていますが、私が好きなのは、明るい中にも殺し屋の凄惨な表情を見せる緒形拳で~す。