鬼平犯科帳 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

江戸後期、老中に直属して殺人、放火などの極悪人と渡りあった火附盗賊改(ひつけとうぞくあらためかた=略して、かとうあらため)の長官・長谷川平蔵(鬼の平蔵、略して鬼平)と部下たち、そして密偵の活躍を描いた池波正太郎の傑作をドラマ化したのが『鬼平犯科帳』です。松本幸四郎(初代・松本白鷗)→丹波哲郎→萬屋錦之助→中村吉右衛門と引き継がれ、最近では初代・鬼平を演じた幸四郎の孫の幸四郎が挑戦。

初代・白鷗版はNET(現:テレビ朝日)系列で1969年10月7日~70年12月29日と71年10月7日~72年3月30日の2シーズン放送されました。内容は捕物による立ち回り、勧善懲悪だけでなく、人間の内面に悪と善が同居していることから起こる葛藤を鋭く描いていて、その人間描写の確かさで時代劇ファンだけでなく、ドラマ好きが熱狂的に支持。中村吉右衛門版が極めつけと云われていますが、原作者の池波正太郎は初代の松本幸四郎をイメージに小説を書き進めたんです。殺陣は上手くありませんが、その眼力と貫禄にはオーラがありますよ。部下役では、古今亭志ん朝の木村忠吾が嵌り役。志ん朝はこの役に惚れこみ、生まれた我が子を忠吾と命名。そして、丹波版でも同じ役で出演しています。竜崎勝の酒井祐介も良かったな。妻の久栄は第1シーズンの淡島千景が歴代・久栄の中で一番。四代目鬼平になる吉右衛門が息子役の辰蔵役で出演していましたな。吉右衛門版で相模の彦十を好演していた江戸屋猫八が、しゃも鍋屋・五鉄の三次郎で出演。役者が違えば、趣も変わってきます。

でもって、記念すべき1話と2話は……

第1話「血頭の丹兵衛」は、一家皆殺しの急ぎ働きをする血頭の丹兵衛と名乗る凶盗が江戸の町を荒らしています。丹兵衛一味にいたことがある小房の粂八(牟田悌三)が捕えられますが、粂八は「丹兵衛は盗みの掟を守る盗賊で、名乗っているのは贋者」と言いはり、鬼平は丹兵衛探索のために粂八を赦免。粂八は一味の浪人(山本耕一)と接触し、親分に会います。丹兵衛(市川中車)は齢をとって昔のような盗みができなくなり、凶盗に成りはてていたのです。以後、粂八は密偵として活躍。

第2話「四度目の女房」は、幻小僧と呼ばれる盗賊一味に襲われた商家を調べた火盗改は盗みの仕掛けから一味に伊之松(林与一)という大工がいることをつきとめます。しかし、伊之松は既に江戸から逃走。伊之松は行く先々で結婚して大工として信用され、盗みの仕掛けをしていたんですが、四度目の女房(林美智子)にゾッコン惚れていて、江戸に戻って来ると鬼平は考えます。そこで、女房の住む長屋に木村忠吾(古今亭志ん朝)が張込むんです。

原作は「にっぽん怪盗伝」の中の一編を流用したオリジナル。白鷗版では、まだ原作数が少なかったせいか、池波の他の作品を流用したようなオリジナルエピソードがけっこうありました。池波はオリジナルを嫌っていたので、脚本を毎回チェック。原作から大きく離れても、出来の良いものついては褒めたと云いますから、オリジナルといえども内容は濃いものになっていま~す。