女だけの都とまぼろしの市街戦 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

フランス喜劇の特長として、エスプリのきいた諷刺満点の面白さがあります。そんな作品が『女だけの都』と『まぼろしの市街戦』です。

『女だけの都』(1935年/監督:ジャッゥ・フェデー)は、進軍してくるスペイン軍から女たちが町を守る艶笑喜劇。

1616年のフランドール地方(現在のベルギー)にある城塞都市ボーム。市長夫人コルネリア(フランソワーズ・ロネ)は祭りの準備で大忙し。市長(アンドレ・アレルム)たち市の重役たちは、画家のブリューゲル(ベルナール・ランクレ)に記念の団体肖像画を描かせています。市長の娘シスカ(ミシュリーヌ・シェーレル)とブリューゲルは恋人同士。コルネリアは二人の仲を知っていますが、市長は自分の家畜を買ってもらうためにシスカを肉屋と結婚させようと思っています。そんな中、スペインの特使オリヴァレス公が軍隊を率いてボームで一夜を過ごすという知らせが入り、市長たちは驚愕。夜ともなれば、かつてフランドール地方がスペイン軍の侵略によって、殺戮・掠奪をほしいままにされたような事態が起こることを恐れたんですな。そこで市長は自分が死んだことにして、全ての男子を喪に服させて一歩も戸外へ出さず、スペイン軍を通過させるという計画をたてます。

男たちの意気地なさに市長夫人を先頭に町中の婦人たちが結束。城門前に正装整列した婦人たちが出迎えたオリヴァレス公(ジャン・ミュラー)は、市長の急死を聞き、静粛に一夜を送って立ち去ることを約し、軍隊は粛々と城内に進み、分宿することになります。ところがボームの婦人たち、町の男性に愛想をつかした矢先、たくましくも紳士的なスペイン将兵に感激。祭りの代わりに全市をあげて夜を徹しての歓迎の宴を開催。酒と踊りと歌。死を装った市長と喪に服した男たちは、彼らの妻や娘がスペインの軍人と戯れている声を聞いて、心穏やかでいられませんでしたが……

風車を近景にした道、種をまく農夫のいる畑、朝日を浴びて清々しい田園風景は、ブリューゲルの風景画を連想させます。女性の力は偉大なりという機知と諷刺のコメディですが、物語構想の豊かさ、大らかでユーモアと皮肉をまじえたドラマティックな展開、適材適所の配役、美術、撮影にいたるまで、風格あふれる風俗絵巻の力作になっていま~す。

 

『まぼろしの市街戦』(1966年/監督:フィリップ・ド・ブロカ)は、戦争の馬鹿さかげんを諷刺した喜劇。

第一次大戦中のフランスの田舎町。撤退するドイツ軍は町全体を爆破するため時限爆弾を仕掛けます。ドイツ軍の中に戦争好きなヒットラーがいたのが笑えましたな。演じていたのは、監督のフィリップ・ド・ブロカ。このことを知った町民が進撃してくるイギリス軍(スコットランド軍)に連絡。隊長(アドルフォ・チェリ)は、仏語が話せる伝令兵のブランピック(アラン・ベイツ)に爆弾を撤去するように命じます。ブランピックは町にやってきますが、町民は全員避難して誰もおらず、爆弾の場所も時限装置もわかりません。居残っていたドイツ兵に見つかったブランピックが逃げ込んだところが精神病院。狂人たちからハートの王様に間違われます。

ドイツ兵も去った町に狂人たちが繰り出すんですが、この狂人たちの行動が何とも愉快。ブランピックは戦場の真っ只中で陽気に優雅に暮らす狂人たちを避難させようとしますが、誰も動きません。爆弾は見つからず、ハートの王様として慕ってくれる狂人たちを見殺しにもできず、ブランピックは最後の数時間を皆と楽しむことを決心。だけど、皆から王妃に推されたコクリコ(ジュヌビエーブ・ビジョルド)の話から時限装置がわかり、爆破を阻止します。町が爆破されなかったことを知ったドイツ軍とイギリス軍の小隊が乗り込んできて、相撃ちとなって双方全滅。狂人たちはそんな狂気のさたにゲンナリして精神病院へ帰っていきます。そして、ブランピックも……

ずっと以前にテレビの洋画劇場で観て、妙に印象に残っていた作品です。狂人たちのファンタジックな世界を詩的ムードいっぱいに盛り上げて描き出した傑作。ジュヌビエーブ・ビジョルドが可愛くて魅力的で~す。