裕次郎の城取りと影狩り | 懐古趣味親爺のブログ

懐古趣味親爺のブログ

幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

石原裕次郎は、大手映画会社にできない作品を作るという理想のもとに1963年に石原プロを設立。時代劇に縁のなかった裕次郎が主演したのが『城取り』と『影狩り』『影狩り・ほえろ大砲』です。

『城取り』(1965年・日活/監督:舛田利雄)は、裕次郎の時代劇初主演作品。

関ヶ原の合戦が間近に迫る頃、浪人・車藤三(石原裕次郎)は親友である上杉家家臣・俵左内(千秋実)を訪問。上杉領侵攻を狙う伊達家は国境に出城を建設中で、直江兼続(滝沢修)に引きあわされた藤三は、城が完成する前に奪うことを進言。500両の軍資金を持って、左内と国境の村に向けて出発。途中で、樵をしている伊賀忍者・彦十(石立鉄男)、国境の村出身の巫女・お千(中村玉緒)、村で行商している白粉屋の長次郎(芦屋雁之助)を仲間にします。伊達の猛将・赤座刑部(近衛十四郎)は、城作りのために村民を強制的に働かせており、腹心の渋谷典膳(今井健二)が逃げ出した村民を斬ったことから村民たちは反発。村長の甚兵衛(藤原釜足)と会った藤三は、

軍資金とお千を使って村民たちの協力を依頼。彦十と左内は村民に化け、長次郎は刑部の娘・摩耶姫(松原智恵子)に白粉を売りに行って城内を探ります。弱点を見つけた藤三は、乗っ取りの準備を整えますが……

出城を守る近衛と裕次郎との対決が見所。足の長い裕次郎は現代アクションにはむいていますが、チャンバラだと動きのバランスが悪く、近衛の腰のすわった殺陣と比べると見劣りがします。はっきり言ってヘタクソ。司馬遼太郎の原作を池田一朗がうまく脚色しており、ストーリーの面白さだけで満足できます。ちなみに、車藤三は仮の名で、正体は前田慶次郎で~す。

 

『影狩り』(1972年・東宝/監督:舛田利雄)

幕府の財政再建のために隠密(影)によって御家取潰しとなった室戸十兵衛(石原裕次郎)と、同じ境遇の月光(成田三樹夫)・日光(内田良平)の三人が、出石藩の家老(辰巳柳太郎)に雇われます。田沼意次(丹波哲郎)は、藩主が幼少であることを理由に出石藩を取り潰そうと考えていますが、妨げになるのが本領安堵のお墨付き。目付役の高坂蔵人(江原真二郎)がお墨付きを江戸に運ぶことになり、十兵衛たち三人が護衛。陣馬仙十郎(草薙幸次郎)率いる伊賀三の組が一行をつけ狙い、謎の鳥追い女・千登世(浅丘ルリ子)が十兵衛につきまといます。

原作はさいとうたかをの人気劇画。当時は“子連れ狼”や“御用牙”など劇画の映画化が目立っていましたな。それと、やたらと血しぶきが飛ぶ殺陣が、バカの一つ覚えみたいに繰り返される風潮。チャンバラ本来の殺陣の面白さがありませんでした。内田良平・成田三樹夫に比べて裕次郎に魅力が感じられず、二人の存在感に、裕次郎はかすんでいます。裕次郎はやっぱり時代劇は場違いですね。

『影狩り・ほえろ大砲』(1972年・東宝/監督:舛田利雄)

家康から拝領した大砲を潰して新式大砲を作った佐伯藩が御家取潰しの危機にあうんですな。幕府から大砲確認の使者がくることになり、家老(青木義朗)は新式大砲を拝領大砲に見せかけることにします。大砲を影から守るために影狩り三人衆が雇われ、大砲製造所から城まで運ぶ道中がスリルたっぷりに……描かれていません。池上金男の脚本にしては粗雑。ラストなんか、あまりの酷さにアングリですよ。シリーズ化するつもりでも、こんな作品では観客はソッポをむきます。

画像は、石原裕次郎が歌う主題歌レコードジャケット。前作もそうでしたが、裕次郎は場違い。もともとチャンバラは下手なうえに、太って動きも悪く、アクションは無理でしたね。