“サイレンサー”シリーズ | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

1960年代後半、ジェームズ・ボンドやナポレオン・ソロといったスパイ・ヒーローが人気をはくし、雨後のタケノコのように次々とスパイ・ヒーローが登場します。ディーン・マーティンが主演したマット・ヘルムもそのひとり。“サイレンサー”シリーズとして4本作られました。

『サイレンサー沈黙部隊』(1966年/監督:フィル・カールスン)

ストリップによるクレジットに続き、巨大円型ベッドで美女の夢を見ていたマット・ヘルムがボタンを押してそのままお風呂にドブン。風呂の中には美人秘書がいるというオープニングから人を喰った展開でニヤニヤさせてくれます。

お話は、ビッグO(ヴィクター・ブオノ)の組織を探っていたICEの諜報員が殺され、上司(ジェームズ・グレゴリー)の命令でマットは相棒を殺されたティナ(ダリア・ラビ)と捜査を開始。米空軍のミサイル実験を利用し、電波誘導で原爆実験施設を破壊してロシア(当時はソ連)の仕業と思わせて世界大戦を引きおこそうとする陰謀を粉砕。

原作はドナルド・ハミルトンの正統的スパイヒーロー小説ですが、主演がニヤニヤと一杯やっているようなディーン・マーティンなので、行動の合間ごとに鼻唄を歌い、お色気にハッスルといったコメディ・アクション。カーラジオをつけるとフランク・シナトラの歌が流れ、これは嫌いだと言ってチャンネルを変えるとマーティンの歌が流れてきたのは笑えましたね。事件に巻きこまれるステラ・ステーヴンスのコメディエンヌぶりも可笑しかったです。どしゃぶりの雨の中で、泥だらけになりながら七転八倒する根性が最高。秘密兵器が、撃ったら弾丸が後ろから出て自分にあたるという逆さ拳銃というのも笑えます。

音楽は、場違いな感じのエルマー・バーンスタイン。特別出演のシド・チャリシーが主題歌を歌いながら踊るのですが、歌っているのはヴィッキー・カー。

能天気な作品ですが、私は大好きで~す。

 

『サイレンサー殺人部隊』(1966年/監督:ヘンリー・レヴィン)

マット・ヘルムが前作同様に秘書のラブリー(ビバリー・アダムス)とよろしくやっている頃、ICEの諜報員が次々に殺されます。マットも爆殺されかと思われましたが、どっこい生きており、上司のマクドナルド(ジェームズ・グレゴリー)はマットをリビエラへ派遣。強力な光線を研究していたソラリス博士が諜報員殺害一味に誘拐されたと思われたからです。富豪ウォール(カール・マルデン)と情婦のココ(カミラ・スパーブ)によってマットは殺人犯にされますが、ゴーゴー・バーで知りあったスージー(アン・マーグレット)の証言で釈放され、マットはウォールの島へ乗り込みますが……

敵は科学者が発明した怪光線を使ってワシントンを破壊しようとする一味。モンキー、ゴーゴー、イエイエのリズムをミックスさせた新しいリズム“ブラスト・オフ”(流行しなかったけど)を踊り狂うアン・マーグレットが相手役をしていますが、面白さは前作と比べてレベルダウン。引金をひいても10秒たたないと弾丸が飛び出さない拳銃は出てきますが、前作のようなバカバカしい可笑しさが少ないです。ホーバークラフトによる追跡アクションなど、いたって真面目で~す。

 

『サイレンサー待伏部隊』(1968年/監督:ヘンリー・レヴィン)

世界最初の電磁波推力で動く空飛ぶ円盤が女性パイロット(ジャニス・ルール)もろとも行方不明。円盤を奪った権力きちがいの悪党(アルバート・サルミ)や某国の美人スパイ(センタ・バーガー)を相手にマット・ヘルムが鼻歌まじりに大活躍。

空飛ぶ円盤というのが新手ですが、秘密兵器の珍銃は出てこないし、悪党も小者で可笑しみはなく、ますますレベルダウン。

 

『サイレンサー破壊部隊』(1968年/監督:フィル・カールスン)

デンマークで50億ドルの金塊を積んだ列車が襲われる事件が発生。金塊の強奪犯の捜査にコペンハーゲンにやってきたマット・ヘルムに、英国諜報員(シャロン・テイト)が旅行案内係として協力。強奪犯の首領(ナイジェル・グリーン)の情婦(エルケ・ソマー)と殺し屋(ナンシー・クワン)がマットに色仕掛けで迫ります。

秘密機関ICEの長官マクドナルドがジェームズ・グレゴリーからジョン・ラーチに変更。相変わらずディーン・マーティンが鼻歌まじりに美女を相手にスパイ活動。もともと緊張感がまるでないアクション映画ですが、マーティンらしいふざけた趣向もなく、コメディとしても今イチ。組立式のミニコプターが秘密兵器の目玉なのでしょうが、“ナポレオン・ソロ”でも“007”でも既に当時登場しており、目新しさはありません。どんどんつまらなくなり、この『破壊部隊』は最低の出来。シリーズ打切りになったのがわかりま~す。