多羅尾伴内・七つの顔の男(小林旭版) | 懐古趣味親爺のブログ

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1978年、『少年マガジン』に小池一夫:作・石森章太郎:画で「七つの顔を持つ男 多羅尾伴内」が連載されたこともあって、18年振りに東映が小林旭:主演で復活。原作者・比佐芳武の弟子筋にあたる高田宏治が脚本を書き、鈴木則文が監督したのが『多羅尾伴内』です。藤村太蔵(小林旭)が、多羅尾伴内・片目の運転手・流しの歌手・手品好きの紳士・白バイ警官・せむし男に変装して難事件を解決します。

満員の野球場でサヨナラホームランを打った選手がカメラに仕込んだ毒バリを射たれて死亡。犯人と思われたカメラマンも同様に死に、宇田川警部(財津一郎)は自殺と考えますが、カメラマンの妹(竹井みどり)の証言で多羅尾伴内は殺人と断定。そんな伴内のところへ信愛大学理事長・木俣(池辺良)から脅迫事件の調査依頼がきます。アイドル歌手が殺され、事件の背景に殺された選手と歌手と木俣の息子(江木俊夫)が北海道で起こしたひき逃げ事件が関係していることがわかり……

復讐を利用して邪魔者を一掃しようとする悪党と対決する“七つの顔の男”を、“トラック野郎”シリーズでヒットを飛ばしたプロデューサーの天野完次と鈴木則文監督コンビがケレン味たっぷりに描いています。この二人、菅原文太主演で『丹下左膳』の復活を試みたことがあるんですが、「こんなもん、今どき」の社長のひと言でつぶれているんですね。

でもって、この作品ですが、小林旭が主演したことで成功しました。アキラは日活時代に“銀座旋風児”シリーズなどで荒唐無稽な探偵物をヒットさせており、千恵蔵スタイルが似合っています。

画像は、『多羅尾伴内』の主題歌「霧の都会」のレコードジャケット。B面の「7のテーマ」は、白バイでの追跡シーンなどで流れた劇伴曲です。「霧の都会」は、アキラのCD全集の殆どに収録されていませんが、私の好きな歌。♪~向いてないのさ、俺に恋なんか~

成功を受けて、都会から田舎に舞台を移して作られたのが『多羅尾伴内・鬼面村の惨劇』(1978年/監督:山口和彦)です。

信州の山林長者・雨宮剛三(渥美国泰)の次女が結婚式前日に真赤に塗られた鬼面がくくりつけられて殺されます。続いて三女も同様に宙吊り死体で発見。現場に落ちていた絵筆から、顔面に火傷のある画家・日向(松橋登)の犯行が有力視され、捜査にあたった宇田川警部(財津一郎)は、20年ぶりに実家に帰ってきた長女の千尋(鈴鹿景子)が財産相続を狙って日向と共謀したんじゃないかと疑います。剛三は雨宮家の跡取り娘だった千尋の母と結婚して雨宮家を相続しており、千尋の母は25年前に水車小屋で殺されているんですよ。通り魔の犯行とされ、その犯人は捕まっていません。鬼面村にやってきた多羅尾伴内(小林旭)は、母親の死に疑惑を持っていた千尋と真相解明に乗り出します。

「ある時は、女子校の用務員。ある時は、貧乏絵描き。またある時は、流れ者の木こり。ある時は、片目の運転手。ある時は、水車小屋の婆々。またある時は、しがない私立探偵・多羅尾伴内。しかして、その実体は、正義と真実の使途、藤村大造だァ!」の決めセリフの後、悪党(菅貫太郎・内田朝雄・土方弘・石橋雅史)相手に二挺拳銃が轟然と火を吹いて事件解決。千尋の母と日向の父は愛しあっていて、嫉妬した剛三が悪党たちを使って二人を殺したんです。剛三の妻の北林早苗と菅貫太郎は愛人関係で、四女は二人の子。悪党たちは雨宮家の財産を奪うために、邪魔な人物を次々に殺していき、千尋危うしというところに“七つの顔の男”が現れるんですな。

片岡千恵蔵のもう一つの現代物ヒット“金田一耕助”シリーズを意識して田舎を舞台にしたのは失敗。“七つの顔の男”は、都会の闇で活躍しなくちゃね。荒唐無稽のバカバカしい話をてらいもなく演じるアキラに全然違和感がなく、私好みの映画ですが、大コケして復活シリーズはエンド。“七つの顔の男”は、復活して欲しいキャラなんですが、できる役者がいないなァ。