隣地天空率再考 5 敷地区分方式と近似方式 1 | 比嘉ブログ

比嘉ブログ

建築企画CAD「TP-PLANNER」開発者の日常・・建築基準法,天空率、日影規制講座などチャンプルーなブログ

 今週は、雨の1週間。

今回の3連休も雨で始まった。

今朝の公園は、雨のせいかひんやりとした。

モミジの木もうっすら赤みを帯び冬に向かい始めたようだ。

 秋らしくススキでも撮ろうかと思ったら猫じゃらし・・・いやムラサキエノコロ。名前の由来は犬のしっぽに似てる事よりイヌコロから変化した解説有り。

 秋が近づくと夏を惜しみたくなる。この連休は渓谷を散策する予定。

 

 3連休・・・前回もあっという間に終わってしまったゆえ、早めの活動開始で目いっぱい楽しむ事としたい。

 

今週の講座から

 

 今週は土地情報発生からプランニング面積表までの流れをベテランバリバリの企画設計者とマンツーマンの勉強会。

 さすがにテンポが良い。適時日影、天空率をチェックしながら容積率ほぼ消化で終了。お疲れ様でした。

 

 天空率講座開始!

 前回は一の隣地方式の適合建築物および算定基準線(算定位置)の設定法を解説した。

 

 今回は前々回敷地区分方式の不合理を解説する際に使用したこの事例

図1

 

アイソメ図では

図2

この事例を敷地区分方式、近似方式、一隣地方式の3種の作成法で天空率計算を行いそれらを比較し合理性の有無を確認したい。

 

 この例は、第1種住居地域で計画建築階高35m。

A,Bそれぞれの断面で隣地斜線を確認すると

図3

 

いずれも高さ制限を大幅に超えており天空率計算を行う事となった。紺色で示す断面は道路斜線も含む全ての高さ制限を表示している。

 

 早速、天空率計算をそれぞれの手法で解析してみたい。

1)敷地区分方式

   

まずは全体の結果から

図4

隣地境界点間が8ゆえ8区域に区分し天空率比較を行う。円弧部がNGになった区域で2区域。

 それぞれの区域を確認してみたい。

右端から順々に確認したい

図5

 

この右端の境界線は出隅ゆえ面する方向に垂直切断した区域となる。

図6

 

 

 この場合、左、入隅側は、入隅角の半分まで右、出隅側は垂直切断された区域でNGとなった。

 前々回の解説の繰り返しになるが、水色で示す空地に近接する算定位置でNGになる不合理。

 この細幅区域で天空率比較をする事は、天空率計算の基本的な考え方「敷地内空地分が高さ制限を超える事ができる」に合致しない。

この手法では、D/H比の従来の高さ制限と変わらず。

図7

 

 

この区域は水色で示す空地に面した位置にありクリアー。

ところでクリアーしたこの区域と、右側の入隅部に面したNGになった図6の算定位置を比較してみると(図7の区域を水色で表現)

図8

 

赤丸で示す敷地内空地にNGになった細幅入隅部P1からの距離が18.876m、クリアーしたP18からの距離が21.561m。

NGになった算定位置が空地に近く面する不合理が確認された。

天空率は高さ制限を超えた分の空地の有無が問われなければならない。

 

図9

 

この区域は、出隅ゆえ境界線に垂直に区分される。

この区域は後退距離が広く高さ制限内にある為、クリアーする。

図10

 

さて、この区域は問題大有り。

まず算定位置が当該敷地内に設置されており、隣地側に設定されてない事。

 

(法第五十六条第七項第二号の政令で定める位置)
第一三五条の一〇 法第五十六条第七項第二号の政令で定める位置は、当該建築物の敷地の地盤面の高さにある次に掲げる位置とする。
 
一 法第五十六条第七項第二号に規定する外側の線(*)の当該建築物の敷地(*)に面する部分の両端上の位置
 
法第五十六条第七項第二号
二 第一項第二号、第五項及び前項(*)
 隣地境界線からの水平距離が、第一項第二号イ又はニに定める数値が一.二五とされている建築物にあつては十六メートル・・・・だけ外側の線上の政令で定める位置

 

この場合、勾配が1.25ゆえ隣地境界線からの水平距離16m外側とある。

上記の算定位置は、「当該敷地に面した位置」ではなく当該敷地内にある事の不合理。

 

図11

 この場合の問題は、水色の空地に近接しているのだがNGとなっている。

図9を参照していただきたい。図9は、全ての算定位置でクリアーしているのだがそのうえ端部の算定位置から水色の空地までの距離は、、このNGになった算定位置の方が近い。

 

 適用事例集で行き止まり道路の適合建築物の想定法P228を確認してみると

図12

 

 

基準法56条7項天空率を適用する場合の目的が道路、隣地ともに通風採光で同じだ。上図は、行き止まり道路の事例を掲載しているが敷地内には「斜線のまわり込み」部分に適合建築物が設定されており隣地も同様に回り込みが設定されるのが従来の隣地斜線。

 

図13

 

これは、図10の例と同様だが隣地境界線から16m外側にない事が不合理。

 

最後の区間が

図14

この区間は、出隅の境界線ゆえ垂直切断される。前面の十分な空地がある事よりクリアー。

 下端部の算定位置は、図11に比較しその前面空地に遠い。

近くの図11の事例がNGで図12がクリアーになるのも通風採光の見地から不合理。空地に近い方が明かるく風通しもよいはずだ。

 

 このように敷地区分方式は、屈曲した隣地境界線を有する場合は、この様に不合理な結果になる事が多い。

 

 敷地区分方式の根拠が

図15

「平成14年建築基準法改正の解説」のこの挿絵にあるとするなら

面する方向毎に適合建築物、算定位置を設定する「近似方式」の方が実践的だ。

 

2)近似方式

 

近似方式は

図16

水色枠の境界線の方向、赤枠の境界線方向毎に適合建築物を作成し面する方向毎に算定位置を配置し作成する方法だ。

 

結果から

図17

まずは、南側隣地境界線に面した区域からの確認。

面する側の隣地境界線の後退距離は1となりいずれの断面も隣地高さ制限に適合するように作成する。その結果上図の様に寄棟状に作成される。

図18

 

1m以内の屈曲度で処理する等の法的根拠を欠いた設定法と異なり合理的だ。

 

 西側に面した結果は

図19

この区域の後退距離は、中央部の凹部でその両側には、すり鉢状に隣地高さ制限が適用される。

図20

さて近似方式の検証といきたいところだが、敷地区分で時間がかかってしまった。近似方式の検証および入力設定法そして「一隣地」方式での設定法は、次回としよう。

 3連休をお楽しみ下さい。

次回までお元気で!

 

 

比嘉ブログ