バルコニー下面抜けの天空率を考える | 比嘉ブログ

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建築企画CAD「TP-PLANNER」開発者の日常・・建築基準法,天空率、日影規制講座などチャンプルーなブログ

11月3日
 お寒うございます。昨晩より本格的な冬が始まった感じだ。いよいよまた苦手なシーズンがやってきた。特に朝型人間の比嘉としては早朝の寒さは堪える。

 このところ土曜日の午前中はとりだめたビデオをみる事が多い。
本日は「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」先週末土日の9時からの放送もみたのだが勇気をもらえたので本日もビデオで再度確認。 以下余計なお世話だが日本メーカーにエールを送りたくなった。

 アップルのiPodに始まるヒット商品の殆どがSony製品が原型になっている事から始めたい。この事はサムソンとの訴訟の中でも明らかになった。コモデティー化と中国の安い労働力を利用したアップルの世界を見据えた経営戦略の勝利であり日本の技術力を最大限利用している事も事実。技術で日本製品が負けた訳ではない。

 一方、アップルも順風満帆で勝ち続けた訳では無い。PCのOSでは、かつてマイクロソフトに圧倒されていたアップルもあった。このまま一人勝ちが続くとは思われない。Sonyもかつてはウオークマンで世界を唸らせた。ただしその成功体験が足かせになった。携帯電話の雄ノキアの凋落も同様だ。

 アップルが嫌いなわけではない。iPodには興奮し2台入手した。シャッフルし繰り返しアットランダムに好きな音楽を聴いたのはiPodが初めて。

 日本メーカーに頑張ってほしいのだ。スマホはExperiaから富士通東芝レグザフォンに機種変更したが機能の高さに充分満足している。音楽ももっぱらそれだがスバラシイ音質だ。

 多くの労働力を抱えた日本メーカーが出だしの勝負で遅れたのも村社会日本的でわかる。しかしまだ始まったばかりだ。負け続きはおもしろくない日本メーカ頑張れ!

 さて我が社、(株)コミュニケーションシステムの事だ。建築企画CADーTP-PLANNER一筋の開発を27年間続けている。建築CADでもBIMというキーワードで新しいステージが始まった。

 10月21日より当社28期目が開始・・・良く続いたものだとつくづく思う。この仕事がただ好きな事と開発したソフトを使ってくれる仲間がいる事が支えだ。大きな利益をあげた成功体験がないだけに伸びしろが一杯あると思いたい。頑張るぞ負けないゾ!ユーザーの皆さん今期もよろしくお願いします。

 さていつものブログに戻るが今週は、当社発足以来最もおつき合いが長いH社の皆さん20人の皆様のBIMに向けた強化講習会を行った。月、火、水に3グループにわけて20人が来社された。1時半から3時半の講習予定。
月曜日


 3時半終了予定が4時半まで頑張った。終了後のパチリだが皆なぜかにこやかに笑っている。終了後の開放感からか?忘れた。左からヤマシタ、ヤギシタ、セトグチ、オオヌキ、タケイ、オカグチ、スワ、イシムラの各氏。

 火曜日のメンバーはベテランでTP-PLANNERの達人ぞろい。旧知の皆さんばかり気軽にはじめたが、さすがだ3m以上の傾斜地盤を有する効率的な入力法および平均地盤算出から日影計算、天空率解析を操作しながら解説した。時間は5時半を回った。撮影を忘れた為、名前だけキクチ、イワタ、シブヤ、タケウチ、マツモト、クマザワ各氏。終了後、場所を移し、軽く食事しながらもPCを持ち込み講座は続いた。比嘉もしぶといが皆さんも負けてない。

 最終日の水曜日は大変な1日となった。

フジナミ、コウノ、キタヅメ、イソムラ、ジョー、タカハシ、マルヤマの各氏。このメンバ-では部所移動によりジョー氏がTP-PLANNERプランニング部分が初めて。土地入力から逆日影プランから面積表までフルコース実践操作解説。最後に構造連携からBIM連動も解説。6時になる。

 最終日でもあり、やはり会場を移し講座を継続。さらに2時間程で会場を移しイソさんの愛する桑名政弘追悼音楽会となった。皆さんそれぞれの音楽で桑名政弘を惜しんだ。皆どこにパワーが残っていたのか底知れない。


 本日も四方山話がつきたところで天空率講座を開始する。今回は前回の予告どおりバルコニー下抜けを考慮した際に天空率にどれだけ有効になるか否かを検証したい。

 事例は

8m道路に面した道路斜線がNGな為、天空率を行う。その際にバルコニー形状をそのままで上下のバルコニー間の隙間による天空率の変動を確認したい。右側が庇の天端からGLまで包絡した場合と比較する。

 斜線断面では

まず右側の包絡した天空率では

算定位置NO1とNO5の両端部がNGとなった。バルコニー下抜け状態で対処すると


クリアーした。天空図で比較してみよう。

それぞれの天空率で比較するが円弧の部分で左側のバルコニー間の隙間から空が見える。その分天空率が上昇する。ただし上階ほど視点位置から見上げる事になりその隙間は狭く投影される事がわかる。その差が89.598%-89.516%=0.082%上昇した事がわかる。適合建築物の天空率は変化しない為、そのわずかな隙間でクリアーした事がわかる。

 では、右側の包絡したバルコニーのままNGを逆天空率でカットしクリアーしてみよう。そのことにより平面的にどの程度の面積の変動があったかがわかる。


 逆天空率ではNG算定位置のNO1をポイント適用し「建物切断」で必要充分なカット処理される。同様にNO5の両端部NO5の両端部5の算定位置からもカットする。結果は

 円弧でカットしたバルコニーの隅部を表示しているが以外と微少なカットでクリアーしている事がわかる。

 いずれにしてもバルコニー下抜けでクリアーした為に形状変更する必要はない。問題になるのがその場合の三斜求積だ。その手法を確認しよう。


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と思ったが出かける時間だ。続きは明日朝にしよう。では明日まで休憩
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さて講座を再開しよう。

バルコニーの上下の隙間で天空率差分が有効に機能すると想像したわりにその差は微少だ。事例を変えて検証を続ける事とする。

 昨日は商業地域で敷地幅がせまく道路幅員が8m、9階で検証。今回は、敷地幅を広く、道路幅員4m、5階で検証してみる。

まずバルコニー下抜けで限界でクリアーする事を確認する。

 敷地幅が広い為、中央部の算定位置NO12が近接する。左右の空地に最も遠い為だ。つまりその部分が通風、採光が乏しいポイントとなる。次にバルコニーを包絡した計画建築物で天空率をチェックすると

 中央部でNO12を中心に5ポイントでNGである事がわかる。近接するNO12で逆天空率カットする。左右のバルコニー端部のカット部でその効果を検証する。

逆天空率では自動で左右のバルコニー部がカットされる。「建物切断」でカットすると

左右の円弧部がカット幅だ。効果の大小は、建築物の目的によるが・・・この程度で収まる事になる。

 バルコニーの上下の隙間で天空率を確保する為には、その部分に壁、柱などなく確実に隙間がある事が条件になる。さらに申請図を作成する際は、三斜求積で注意しなければならない。
三斜求積の基本的な考え方とともに下抜けの際の注意点を解説する。

 まず三斜求積で天空率計算を行う際の基本的な考え方を解説する。


 審査においては天空率は、三斜求積により建物の投影部分の面積を算出する。上図の様に三斜求積図と求積表を添付し面積算出および天空率の計算が正しくしかも安全側で行われる事を証明する。

 本日基礎編に付き、面積算出法と安全側である事の解説を行う。天空図の半径は100mmで作図する事より
天空率は、(円弧の面積-建物:地盤の投影面積)÷円弧の面積
円弧の面積は半径100mm作図より 31415.926

 三斜求積による面積算出の特徴的な事は建物の投影面積を算出する際に算定位置からの方位(視屋角)による扇形面積の天頂部を三斜求積する事だ。

 扇形全体の面積から三斜求積された天頂側の面積を差し引きし建物の面積を算出する。

 建物部を直接三斜求積し面積を算出しないのは、安全作図の為だ。

 安全作図とは、適合建築物の場合、建物の投影面積を小さめに評価し天空率を大きめに評価したい、一方、計画建築物の場合、その逆で建物の投影部を大きめに評価する事で天空率を実際より小さめに評価する。

 三求積図で解説しよう。

 これは適合建築物の天空図だが天頂側の三斜求積の斜辺が建物投影部に食い込んでいる事がわかる。その為建物部の面積は小さくなり天空率が大きく評価される事となる。

 その食い込み度は、よほど拡大しないと作図上は判断できない為、数値の変動で判断する。
つまりコンピュータで精算された値、(TP-PLANNERでは積分法だが)その値より三斜求積の値が大きくなっている事で安全作図されたと判断する。

この場合、三斜求積天空率が75.131%積分法75.105%を上回る事より安全作図OKとなる。

 さて問題はバルコニーの上下で抜いた計画建築物の天空率だ。

左右の円弧部が問題のカ所だ。その部分もルール通りの求積をしなければならない。拡大して解説する。

 

 実際に申請時もこの様に部分的に拡大しない事にはまず三斜求積が判読できない。バルコニー間にある三斜求積以外の白抜きの部分が三斜求積に参入されない部分だ。その為扇型全体の面積から三斜部を差し引きすると計画建築物の投影面積は実際より大きく評価される。

表で確認しよう。

結果的に計画建物三斜天空率≦積分法天空率が75.139%≦75.163%から安全作図を確認する。

最後に適合天空率75.131%≦計画天空率75.139%となる。審査機関によってはさらに0.02%の差分を要求される様だが法的根拠は無い。

 安全側で処理する事に関しては安全作図で充分ではないかと考える。ただしその事は事前によくお互いに確認する必要があるのが現在の審査の現実だ。注意したい。

さてバルコニーの上下の隙間抜きの天空率だが、苦労が多い事を考えると、包洛処理と大差ない。

 今回の講座はこの程度としよう。大学駅伝がある様なので本日はここまでとしよう。以下お知らせ。

11月10日は「関西からBIMを盛り上げようっ!大収穫祭大阪秋の人」に比嘉が参加しています。天空率のよろず相談、そして構造連携も含めたBIMを解説します。くわしくは

http://www.com-sys.co.jp/modules/eguide/event.php?eid=323

 現在申し込み枠が充分空いています。比嘉と天空率あるいはBIMを語りたい方は是非お集まり下さい。実践解説します。次回は会場から実況レポートをお届けします。

続けて11月20日の

J-BIM連携フォーラム2012 in 大阪もよろしく!
http://www.com-sys.co.jp/modules/seminar/



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