2003年2月に妊娠が判明し、それから約ひと月後、朝、大量の出血で目を覚ました。
夫は、何をどうしていいか分からず、なんとそのまま出勤しました。
私は、この時に、いいところのボンボンはホンマに役に立たないなと思い知り、以後彼をATMと認定しました。
運転席に厚手のバスタオル2枚を敷き、自分の運転で車で15分の産婦人科へ。
事前に電話連絡していたので、院内に入るとすぐに主治医の院長先生が診察して下さいました。
『流産しかけています、そのまま入院ですね』と院長が即決、すぐに流産予防の点滴を施され、6人部屋の一角に収まりました。
看護婦さんには、「せめてタクシーで来て下さい」と注意されました、なるほど、普段タクシー利用しないと、思い浮かびもしなかったです。
連絡したら、父が車で飛んで来て、私の入院に関わる手続きや手配を全てしてくれました。
それから、父は1日ごとに見舞いに来てくれ、看護婦さんに「いい旦那さんですね」と言われていました。
後で看護婦さんに「ホントに夫と思いました?」と尋ねると、「最近は年の離れたご夫婦も珍しくないので、旦那さんかお父さんか迷ったら、旦那さんですか?と訊くことにしています」とのこと。
確かに、父も有頂天になっていました。
ちなみに、夫は、2週間に1回のお見舞いでした。
院長先生には、『現代の医学でできるだけの処置をしていますが、予断を許さない状況です』と言われました。
「つかぬことを伺いますが、流産すると、2人とも死ぬんでしょうか」
『そうですね、子宮はひとつなので、お2人とも亡くなります』
それから、毎晩、「赤ちゃんたちを助けて下さい」と神様に祈りました。
神頼みは生まれて初めてでした。
息子たちは崖っぷちで何とか持ちこたえ、無事に安定期を迎えることができました。
7ケ月目の定期健診では、『順調に育っていますね』と院長先生から太鼓判を押されました。
『ただ、下のお子さんが現在逆子で、子宮内の様子から自然になおるとは思えません。逆子がいる双子の自然分娩は危険なので、帝王切開にしませんか』と提案されました。
「帝王切開でお願いします」と、その場で院長先生に返答しました。
実は、私の母も双子の男の子を産んでいます。
私の2つ違いの弟たちです。
自然分娩で、上の弟を産んで、12時間後に下の弟が出てきたそうです。
体重はどちらも1.5キロ前後、普通の胎児の半分くらいです。
半年間保育器の中で過ごし、母は弟たちに付きっ切り、2歳の私は父方の祖父母宅に1年間も預けられました(涙)。
今では、弟たちはそろって180センチ、80㎏の巨漢です、未熟児だったなんて信じられません。
私の子も双子だと母に告げた時、「とりあえず、たくさん食べて、子どもを大きくしなさい。あと、同じ日に2回も出産するのはめちゃめちゃ大変やから、帝王切開にしたら」とアドバイスされていました。
息子たちはすくすく育ち、8ケ月目には、道行く人から「臨月ですか?」と話しかけられまくる妊婦になっていました。
毎日昼間、公園や川べりをゆっくり散歩し、途中のベンチに腰かけ、お腹をさすりながら、息子たちに話しかけます。
そうすると、お腹の中から、ポコポコ蹴ってくるんですね。
女性の体内に、男の子が2人存在するという神秘。
自分の命が、私だけでなく子どもたちの命でもあるという事実。
私の人生において、この時が最高に幸せでした。
手のひらに、この時の彼らのキックの感触が今も残っています。
院長先生から、『2人とも大きくなっているので、子宮が破裂しないか心配です。10ケ月目に入ったらすぐに帝王切開で分娩しましょう』と言われました。
『10月の下旬で、日程調整しますね、次回の診察の時に、何日かお伝えします』
私は、「もうすぐ会える!」とワクワクしました。
同時に、10月下旬が誕生日なら、星座が違うことに、ハッとしました。
22日までだとてんびん座、23日以降はさそり座。
ふたつの星座について調べ始めました。
『帝王切開は、10か月目に入ってすぐの10月22日です。13時から当院で行いますので、ご家族にもお伝え下さい』と院長から言われました。
心の中で、「あー、てんびん座かあー」と落胆しました。
「はい、よろしくお願いします」と言おうかと思いましたが、息子たちの誕生日、一生ついて回る日付です。
私は勇気を出して、院長先生に交渉を試みました。
「あの、もしできるなら、23日以降でお願いできないでしょうか」
『旦那さんの仕事の関係で、立ち合いが難しいのですか?』
「いえ、私の周りの男性を観察すると、てんびん座よりさそり座の人の方がモテる人が多くて。てんびん座よりさそり座の方がいいかなと思いました」
院長先生とは、不妊外来の時からのお付き合いなので、隠さず話しました。
でも、院長先生はマジ理解不能というお顔で、『え、そんな理由で手術日の変更を言っているんですか?』と確認されました。
「はい」と私がうなずくと、すごく耐えがたい沈黙が訪れます。
『母体のためにも、お子さんのためにも、10か月目に到達したその日に手術した方が安心なので、22日で行います』と院長は断言しました。
看護婦さんによると、院長先生は、忙しいスケジュールを調整して、22日の私の手術を設定して下さったそうです。
私は、しんみりと了承しました。
うーん、夫の海外出張の為とか言えばよかったのだろうか(そういう問題ではない)。
帝王切開は、手術室に入って15分くらいですべて終わり、順番に血まみれの息子たちをハグしました。
夫は、血まみれなので、息子たちを抱くのを諦めていました。
それから1週間ほど入院し、息子たちのお世話の仕方を助産師さんに教えて頂き、夫と一緒に、こわごわと抱っこしながら退院しました。
帰宅してからが、待ちに待った子育てのスタート。
人生で一番つらい日々だったけれど、振り返れば毎日が宝物のような記憶です。
ホンマに、女に生まれてよかったわーと、心の底から今も思っています(*^^*)


