僕の上司、32歳、人妻(4) | 夫の知らない妻

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官能小説「他人に抱かれる妻」別館です。

「私たちの願いは一つ。御社と一緒になって成長していくことです」

 

汗を拭う余裕もなく、僕はただ呆然と立ち尽くし、プレゼンを引き継いでくれた課長を見つめている。

 

かっこいい・・・・

 

自信に満ちた様子で丁寧に話し、会議室に座る難しそうな顔の何人もの役員たちを見つめる課長。

 

大半が50歳を超えたと思われるおっさん連中だ。

 

彼らは課長のプレゼンに聞き惚れ・・・、いや、違うな。

 

おっさんたちの関心の的は、もはやそのプレゼン内容ではなく、武川課長の美貌、そして抜群のスタイルを誇る肢体だった。

 

「自分たちだけメリットを得るつもりはありません。ここにいる小沢から提案させていただいた新商品、この取り扱い開始を、是非御社と一緒に成長していく道筋のスタートにしたいんです」

 

ちらっとこちらを見つめた課長の視線が、僕に冷酷に突き刺さる。

 

「僕ちゃんねえ、小沢くんは。こんなプレゼンもできないんだから。後からたっぷりお仕置きしてあげるから。覚悟しておきなさい。いいわね」

 

課長の一瞬の視線が、僕にそんなメッセージをささやいてくる。

 

か、課長、お仕置きって、いったい・・・・

 

僕の焦りなどに気づくこともなく、テーブルを囲む役員連中はいやらしい視線を課長のボディに注ぎ続けていた。

 

シャツの上からでもはっきりわかる美しい胸元。

 

くっきりとくびれた腰の曲線は、思わず手を伸ばしたくなるような雰囲気を漂わせている。

 

桃のように丸みを帯びたヒップ、そして、スカートから細く伸びたモデル級の美脚。

 

「ほう」

 

「いいねえ、武川さん」

 

「もっと見せてよ」

 

僕のプレゼンのときには静まり返っていた室内に、今は、おっさんたちの満足げな言葉、いや、聞きようによっては卑猥な言葉が飛び交っている。

 

いつしか僕は想像していた。

 

ここにいる役員たちが課長を取り囲み、服をゆっくりと脱がしていく様子を。

 

「脱ぎなさい、武川さん」

 

「い、いやです・・・」

 

「もっと見せてよ、その素敵な体を」

 

「駄目・・・・、いやんっ・・・・」

 

「素晴らしいですな、武川さん」

 

おい、会議中に何を考えているんだ、僕は。

 

妄想を打ち消し、僕はそこにいる面々を軽蔑した視線で見つめた。

 

なんだい、なんだい、お前ら、課長のルックス見てるだけだろうが!

 

弱気な僕でも、心の中では強い男なんです、課長。

 

僕の虚しい叫びを感じたのか、課長はプレゼンを締めくくりながら、僕に先刻以上にきつい視線を送ってきた。

 

ああっ、か、課長・・・・

 

どこかマゾヒスティックな快感を味わいながらも、皆を見つめ、もっともらしい顔つきを浮かべる僕。

 

「よし、武川さん。わかりました。一度やってみましょうか」

 

そう発言した男性は、どうやらこの会社のトップらしい。

 

「ありがとうございます! 精一杯やらせていただきます!」

 

「武川さんがこれからも頻繁にこちらに足を運んでくれる。それが条件ですよ。いいですね」

 

「もちろんですわ」

 

課長の一言、そして笑顔が役員全員をノックアウトした。

 

「足を運んでくれ」って、おい、おっさん、あんたの本音は「脚を開いてくれ」ってところだろうが・・・。

 

会議室の片隅で負け惜しみをつぶやく僕を無視し、役員たちは課長を取り囲んでいく。

 

「武川さん、是非お名刺を」

 

何人ものおっさんたちが、課長の前に行列をなしている。

 

「武川です」

 

「ほう、武川・・・、理沙さん、ですか。いい名前ですな」

 

「ありがとうございます」

 

「えっとメールアドレス、それから携帯は、と・・・・」

 

「そこに書いてありますわ。何かあればいつでも連絡してくださいな」

 

完全にストーカーと化したおっさんたちを笑顔で魅了しながら、課長は握手を交わしている。

 

なかなか課長の手を離そうとしないおっさんばかりだ。

 

ちくしょう、僕の課長に触るな・・・・

 

ひとりポツンと立ちながら、僕はそんな光景を10分以上見つめた。

 

「小沢くん、そろそろ行くわよ」

 

「は、はい!」

 

そして、僕たちは会議室を出て、エレベーターに乗り込んだ。

 

二人だけしか乗っていない。

 

緊張・・・・、駄目だ、何か言わないと・・・・

 

「か、課長、あ、ありがとうござ・・・」

 

「戻ったらすぐに議事録を作って」

 

「えっ?」

 

「田島部長に送ること。私にCC入れて。いいわね。すぐにやりなさい」

 

「は、はい・・・・」

 

前を向いたままの課長にそう指示をされ、僕は立ち尽くすことしかできなかった。

 

地上階につき、外に出る。

 

5月の爽やかな日差しが、僕には真夏の厳しい太陽に感じられてしまう。

 

前を早足で歩く課長がちらっとこちらを振り向いた。

 

僕を誘うような視線で見つめると、硬い表情を一変させて、甘い笑みを浮かべた。

 

「ふふふ、まだかわいいわね、小沢くんは」

 

ただそれだけ言うと、一層足を早めて新御茶ノ水駅に向かって歩き出す。

 

「か、課長、待ってください!」

 

どこか嬉しさを感じながら、僕は課長を小走りで追った。