僕の上司、32歳、人妻(3) | 夫の知らない妻

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官能小説「他人に抱かれる妻」別館です。

「えっと、小沢君だったね」

 

「は、はい・・・」

 

高層ビルの30階だか40階だか、という随分高いフロアにある会議室。

 

大きな窓の向こうには、新宿方面のビル群、そしてどこまでも広がる大東京の風景が広がっている。

 

だが、もちろん僕は、課長と一緒に東京見物を楽しんでいるわけでなはい。

 

大切な新規取引先候補、その役員会を相手にしたプレゼンで、僕はなんとか新製品の取り扱いの合意を得ようと奮闘していた。

 

「今度のプレゼンは小沢くんに任せるわ。いいわね」

 

課長からそんな指示を受けたのは数日前。

 

「えっ、ぼ、僕が?」

 

「私の指示が聞けないとでも?」

 

視線を僕に向けることなく、クールにノートパソコンを見つめたまま答える課長。

 

オフィスでも隠すことのできないその美貌は、僕にはいつも眩しく輝いているように感じた。

 

「い、いえ・・・、でも、できるかなあ・・・・」

 

「男の子でしょ、小沢くん。あっ、そっか、まだ僕ちゃんか・・・・」

 

「ち、違います!」

 

「そろそろ男らしいとこ見せて。ね」

 

初めて僕に視線を向け、甘いウインクを投げてくる課長。

 

可愛い・・・・、しかし、僕には鬼だ、この人は・・・・・

 

最近はオンラインでのミーティングが中心で、取引先を訪問する機会はあまりない。

 

しかし今日は違う。

 

超重要な取引先候補の一つ、しかも役員会相手のプレゼンを、入社2年目の僕に任せるなんて・・・・。

 

そうか、ライオンが可愛い子供ほど谷底に突き落として育てるっていう、あれか。

 

そんなことを思いながら、しかし、僕は過去に課長にそんな仕打ちをされた新入社員たちが皆辞めていった事実を思い出した。

 

男らしいとこ見せて、か・・・・。

 

いくら鬼であっても、あのウインクに抵抗することはできない。

 

ふと、僕は想像した。

 

夜のベッドで、下着姿の課長に、ウインクと共に同じセリフをささやかれることを。

 

「小沢くん、ねえ、男らしいとこ見せて」

 

ブラウスの上からでもはっきりわかる、課長の胸の膨らみ。

 

贅肉とは無縁なひきしまった腰のくびれ。

 

そして、いつもスカート姿で周囲に見せつけている自慢の美脚。

 

そんな課長に下着姿でもし・・・・。

 

「ねえ、早く・・・、早く来て、小沢くん・・・・」

 

駄目だ・・・・、かなり疲れているぞ、僕は・・・・。

 

どうにか準備をし、僕は今日の大事な会議に臨んだ。

 

だが、一人の年配の役員にそう質問され、僕は言葉に詰まった。

 

「小沢君、確か、いつもオンラインの会議に出てもらってるね」

 

「は、はい・・・・」

 

「何というかなあ。君のプレゼンはどうもこちらの心に響いてこないんだよなあ」

 

「・・・・」

 

頭が真っ白になった僕。

 

窓の向こうに見えるパークハイアット東京が、なぜか揺れて見えてしまう。

 

「御社に都合のいいことばかり言ってるみたいに聞こえるんだが、どうなんだろう」

 

一人の役員の言葉に、他の出席者も同意するように頷き、手元の資料を厳しい表情で見つめる。

 

「い、いえ、決して弊社だけが得するということではなくてですね・・・・」

 

しどろもどろになりながら、僕は今日何度目かの大量の汗をワイシャツの下に感じた。

 

どうしよう・・・・

 

「君、入社何年目?」

 

「に、2年目です・・・・」

 

「そうかい、まだ2年目か」

 

若造の僕を嘲笑するような雰囲気が広い会議室に漂う。

 

駄目だ、もう・・・・。

 

授業中、トイレを我慢する小学生のような気分になった。

 

僕はたまらず、担任の美しい女教師、そう、武川課長を見つめた。

 

立ち上がってスクリーンの前で説明している僕からは、随分離れた場所に座っている。

 

膝丈のスカート姿、美脚をクロスさせて姿勢良く椅子に座り、試すような視線で僕を見つめている。

 

やばい、怒ってらっしゃる・・・・

 

課長のくっきりとした瞳に漂う不満げな気配を、僕は瞬時に読み取った。

 

小さく笑みを浮かべ、僕を見つめたまま小さく首を振る。

 

まるで、「はい、失格」、とでも宣告するように。

 

そして、課長はゆっくりと立ち上がった。

 

「ご指摘通りだと思います。小沢の説明には少し独りよがりの部分もありました」

 

独りよがりって、課長・・・・

 

だが、課長の一言で会議室のムードは一変した。

 

皆が、どこかでその主役の登場を待っていたかのようだ。

 

「ねえ、武川さん、君から少し説明してくれよ」

 

「承知しました」

 

自信に満ちた様子で、課長がゆっくりこちらに歩いてくる。

 

そして、僕に向かってこっそりウインクすると、テーブルのほうに視線を向けた。

 

大半が年配の男性である出席者たちの視線が、課長の肢体に注がれた。