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以下2つのオリジナル小説を掲載するブログです。


「密会エピソード1~魔性の女子高生」(2009年6月~2010年1月連載終了)

「Spirit in the Sky ~ 愛欲の呪い」 (2010年6月連載開始)


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終戦から9ヶ月が経過しようとしている。


ニューギニアの小島での激闘から奇跡的に生き残った兵士達を乗せた復員船が宇品港に着いたのは、初夏を思わせるようによく晴れた日のことだった。


南方の暑さとは違う。祖国の夏だ。他の復員者たちと同じように、彼は感慨深い面持ちで地に降り立った。


何時間も列車を乗り継ぎ、故郷へと向かう。目に入る緑の色が眩しすぎる。懐かしさと感激で、彼は混雑する列車の中、涙を抑えることができなかった。


戦地に赴く直前、訓練飛行としてこの辺りの上空を何度も飛んだことも、今はただただ懐かしく思い出せる。


やがて、故郷の駅に到着した。妻はいったいどうしているだろうか。


戦地に行ってしばらくの間は手紙のやり取りもできたが、部隊が玉砕し、ジャングルの中、悲惨な逃避行が続くようになってからは、それどころではなかった。


妻と再会するのは何年ぶりなのだろう。3年、いや、4年か・・・・・・・。彼女は俺の帰還を知らないのだ。


彼は山あいにある家へと急いだ。田畑の広がるこの田舎町は、幸い、空襲の被害にあってはいないようだ。周囲の風景もかわらず、子供の頃と同じ匂いが感じられる。


そして、家の前にたどり着いた。


「今、戻ったぞ!」


中に飛び込んだ彼の目に、予想しなかった景色が捉えられた。


裸にされた妻が、男に抱かれている。布団の上、妻は男の上に乗り、腰を振ることを強要されていた。


男は彼が知っている人間だった。近所に住む、何歳か年上の男だ。何らかの病気を理由に、召集を免れたという噂を彼は聞いていた。


嫌な男だった。ふらふらと遊び歩き、良からぬ素行が近所でも度々問題になっていた。その男に、妻が今、抱かれているのだ。


夫の帰宅を目にした瞬間、妻の表情が一変した。地獄の中に、遂に救いの手が差し伸べられたことを、彼女は知ったようだった。


助けを求めるように、服を手にした妻が夫に走り寄る。男が妻を陵辱していたことは明らかだった。恐らく、毎日のようにそれを繰り返していたんだろう。


「これ以上、妻の体に触らせない・・・・・・・」

夫の宣告に対し、男は怒りを全身に漂わせた。台所から包丁を持ち出し、二人に襲いかかる。


夫婦は手を取り合い、家を飛び出す。狂った男から、二人は懸命に走って逃げた。


狭い田舎道の角を何度曲がっても、男は執拗に追いかけてくる。その表情は憎悪で煮えたぎっていた。


夫婦が何度目かの角を曲がったとき、妻が息を切らし、その場に倒れこんだ。二人の鼓動が限界にまで高まったそのとき、背後で激しい衝撃音が響いた。


黒色の軍用トラックが急停車したようだ。その数メートル前に、男の体が横たわっている。


夫婦はその現場にゆっくりと近づいた。血だらけの形相の男に意識はないようだ。しかし、その顔を覗き込んだ瞬間、男の目が急に開いた。


「これで終わると思うなよ・・・・・・・・、きさまのことは・・・・・・・・・・・」


戦地から戻ったばかりの夫は、死の間際の言葉をつぶやく男の姿に凍りついた。


***********


「あなた・・・・・・・、あなた・・・・・・・・・・・」


その声に誘われるように、北原浩市は、そっと目を開く。その瞬間、麻衣の叫び声が病室に響き渡った。


「パパが起きた! やっと起きたよ!」


涙をこぼし、言葉を口にすることができない妻、あさみに向かって、浩市はそっと手を伸ばした。


直前に見た夢の記憶が、浩市の脳裏から急速に失われていく。


「パパ見て! パパが喜ぶと思って、ママと一緒にこれ作ったんだよ!」


ベッドの脇に、精巧なゼロ戦の模型が飾られている。


「麻衣、ありがとう」


娘を抱きしめながら、浩市はその戦闘機の模型を、じっと見つめた。



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