「中川君、昨日はお疲れさん」
ゴルフコンペの翌日、私を自室に呼んだ橋口は、そんな台詞で会話を切り出した。
「この国で初めてのゴルフでしたから、私たちも存分に楽しめましたよ」
「そうかい。そりゃよかった」
意味深な笑みを浮かべながら、橋口が答える。
妻のことを考えているんだろう。
私はそんな想像をしながら、上司の言葉を待った。
「奥さんは何か言ってたかい?」
「皆さんと一緒にラウンドできて、とても楽しかったと」
「久しぶりに女性と一緒のゴルフで、私たちもちょっとはしゃぎすぎたかな」
私がどこまで知っているか、それを探るような視線を投げかけてくる橋口。
50代後半だというのに、その性欲は尽きることを知らないらしい。
「妻も嬉しかったんじゃないでしょうか。久しぶりに皆さんに会えて」
適当な言葉を並べながら、私は昨日密かに目撃した光景をなまなましく思い浮かべた。
ゴルフ場にいくつも存在する林の中で、3人は何度も妻の肢体で弄んだ。
「いけません・・・・、いやんっ・・・・・」
ウェアを脱がし、キスを交わし、その手で妻の敏感な箇所をたっぷりいじめた3人。
次々に伸びてくる男たちの手に屈服するように、甘い声を林の中で漏らし続けた妻。
「あっ・・・・、あっ・・・・、あっ・・・・」
「気持ちいいでしょう、奥さん」
「駄目っ、そこは・・・・、主人に叱られます・・・・」
彼らの要求を拒むことなく、その危ない遊戯を一緒に楽しむような妻の姿が、私の困惑を更に深めた。
妻は、彼らの欲深い肉体を慰めるように自分から手を伸ばした。
「奥さん、上手じゃないですか」
「俺もお願いしますよ、奥さん」
そんな戯れは、ゴルフ後の食事会でも続いた。
さすがに私を遠慮してか、大胆な行為は繰り広げなかったが、しかし、彼らは再び妻を交えてビールを浴びるように飲んだ。
「宮野さん、駄目っ、もう飲めませんから、私」
「いいじゃないですか、奥さん。あんなに汗をかいて暑かったでしょう、今日は」
歓迎会以来となるアルコールを楽しんだ妻は、家に帰った後、再び私を求めてきた。
「中川君、どうしたんだい?」
「い、いえ、なんでもありません」
昨夜、ベッドの中で激しく乱れた妻の姿を脳裏から掻き消し、私は上司との会話に戻った。
「ところで中川君、今日は一つお願いがあってな」
「なんでしょうか」
「出張に行って欲しいんだよ」
ついに来たか、と私は思った。
隣国に1週間かけて行ってくれという上司の指示は、別の意味をはらんでいるに違いない。
その間、一人きりになる妻の全てを3人は奪うつもりなのだ。
「くれぐれも気をつけてください、奥様のこと」
林君の奥様の言葉が、私の胸に蘇ってくる。