憲法人権を体系から整理しよう。【保存版】 | 岡憲彦の行政書士合格Blog~勉強に対して謙虚であり続ける為のおぼえがき  

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行政書士試験指導校 りす塾で講師をしています。受験生がその時々に感じる疑問をお伝えしています。書籍:社会人が合格するための計画・継続・記憶ノウハウ(中央経済社)の元ネタぎっしりのブログです。

 

「大項目」「中項目」「小項目」で色分けしています。

 

 

憲法の人権を学習するときは、

まず3つのグループに分けていきましょう。


❶「人権総論」 ❷「13条、14条」 ❸「各人権」

 

これを順番で見ていきます。

 

❶「人権総論」

ここでは

①人権の特徴・種類

②人権享有主体性

③人権の限界

について学習しています。

 

①人権の特徴・種類

 ⇒固有性、不可侵性、普遍性

 ⇒自由権、参政権、社会権、受益権

それぞれの定義を覚えるか確認してください。

 

②人権享有主体性

 憲法は国民には人権を保障しているが「法人」「外国人」にも

 保障が及ぶかの問題。

 ⇒それぞれの保障される人権、保障されない人権の確認

 ⇒保障される人権であっても制限される人権(限界)を判例で確認

 

③人権の限界

 憲法は人権を保障しているが、絶対無制約ではない。

 人権がどのような場合に制限されるのかという論点。

 (1)公共の福祉 

 (2)特別な法律関係(公務員・在監者)

 (3)私人間効力

 

(1)公共の福祉

人権と人権が衝突した場合に、それを調整するための制約

(2)特別な法律関係(公務員・在監者)

国に仕える者や被収容者は、国民と異なる人権制約をうける

⇒公務員・在監者の人権制約を判例で確認

(3)私人間効力

私人が私人に人権侵害をした場合に憲法人権規定を適用するかの問題

⇒私人が私人に人権侵害をした場合の人権規定の適用の有無を判例で確認

 

 

❷「13条、14条」

ここでは

①包括的基本権(13条)

②法の下の平等(14条

について学習しています。

 

①包括的基本権(13条)

憲法制定時に想定されていない人権をどのように保障されるのかという論点

⇒新しい人権と言えないと13条では保障されない。⇒新しい人権の定義を確認

(1)プライバシー権

(2)名誉権

(3)みだりにその容貌姿態を撮影されない権利

(4)自己決定権

(5)身体への侵襲を受けない権利

 

(1)プライバシー権

・私生活上の事柄をみだりに公開されない権利

・自己に関する情報をコントロールする権利

該当するものとして

 ・前科・犯罪履歴(前科紹介事件)

 ・学籍番号、氏名、住所、電話番号で自己の欲しない他人にみだりに開示されたくない

  と考えた場合(早稲田大学江沢民講演会事件)

 ・小説の登場人物であっても本人と一致する特徴等が記載された表現(石に泳ぐ魚事件)

(2)名誉権

⇒名誉権の定義を確認

(3)みだりにその容貌姿態を撮影されない権利

警察官が正当な理由なしに個人の容貌を撮影することは許されない

⇒「公共の福祉」のために制限を受けることは明らか

⇒どのような場合に上記記載の自由が制限されるか判例で確認(京都府学連事件)

(4)自己決定権

輸血を受けることが宗教上の信念に反する明確な意思を持っていることを

医師が知っていた場合、医師は救命手段として輸血する方針を説明し

手術を受けるか否かを本人の意思決定に委ねるべき

⇒上記を怠った場合医師はどのような責任を負うか判例で確認(エホバの証人輸血拒否事件)

(5)身体への侵襲を受けない権利

性別の取り扱いの特例に関する法律の規定は、生殖腺除去手術を受ける必要があると解される。

この手術は、生命または身体に対する危険を伴い不可逆的な結果をもたらす

身体への強度な侵襲である。

⇒上記内容から違憲とされたのはなぜか判例で確認(性別変更の要件)

 

②法の下の平等(14条

憲法は性別・年齢・職業など事実的・実質的差異を前提に機械的平等ではなく、

事実上の差異を前提に異なった扱いをする「相対的平等」としている。

そのため、

この実質的事実上の差異を前提におこなった区別は合理的でなければならず

社会通念から合理的でなければ違憲の判断を受ける。

(1)性別による区別

(2)社会的身分・門地による区別

(3)その他の平等原則違反

 

(1)性別による区別

婚姻による夫婦同氏制度は、事実上ほとんどの場合が女性が氏の変更を

余儀なくされている状況でどのように判断されたのか判例で確認

(夫婦同氏制度の合憲性)

(2)社会的身分・門地による区別

日本人である父と外国人である母の間に生まれが非嫡出子が

出生後認知を受けても、父母が婚姻し嫡出たる身分を得なければ

日本国籍を有することができないとする旧国籍法を

どのように判断しかのか判例で確認(生後認知児童国籍確認事件)

※立法目的と目的達成のための手段、それぞれに合理性があるか

審査をしている。

尊属殺人罪と普通殺人罪と比べて重罰を科している

旧刑法200条(尊属殺)をどのように判断したのか

判例で確認(尊属殺重罰規定違憲判決)

※立法目的と目的達成のための手段、それぞれに合理性があるか

審査をしている。

(3)その他の平等原則違反

議員定数不均衡問題

《3つのフィルター》

「違憲となる格差」=違憲状態

「合理的期間」=違憲

「事情判決の法理」=選挙は無効としない

 

 

❸「各人権」

ここでは

①自由権

②参政権

③社会権

④受益権

について学習しています。

 

①自由権

自由権は(1)精神的自由《心》、(2)経済的自由《金》、(3)人身の自由《体》

に区分されます。

 

(1)精神的自由《心》

精神的自由はさらに(ア)内面的精神活動の自由、(イ)外面的精神活動の自由

に区分されます。

 

(ア)内面的精神活動の自由

外面的精神活動の自由の基礎となるものであり。

・思想良心の自由(19条)

・信教の自由(20条)

・学問研究の自由(23条)

これは外部に表示されなければ絶対的保障となります。

しかし、信教の自由(20条)、学問研究の自由(23条)が外部に表示

されるときは制限される場合があります。

 

・19条思想良心の自由では、

「特定の思想の強制の禁止」

「思想を理由とする不利益取り扱いの禁止」

「沈黙の自由」が含まれています。

⇒各判例でどのように判断しているか確認

 

・20条信教の自由では、

「信仰の自由」

「宗教的行為の自由」

「宗教的結社の自由」が内容としてあり、「信仰の自由」以外は

外部に表示されるため制限される場合があります。

⇒判例でどのような宗教的行為・宗教的結社が制限されるかを確認

また、

この信教の自由をより保護するため「制度的保障」として

「政教分離原則」として国家・政府と宗教が分離され、

干渉しないようにする制度があります。

この政教分離原則に反するかを

「目的効果基準」を用いて判断する判例と

「目的効果基準」を用いず判断する判例があります。

⇒判例で確認

 

・23条学問の自由では、

「学問研究の自由」

「研究発表の自由」

「教授の自由」が内容としてあり、「学問研究の自由」以外は

外部に表示されるため制限される場合があります。

⇒判例でどのような教授が制限されるかを確認

また、

この学問の自由をより保護するため「制度的保障」として

「大学の自治」として大学内の問題としては、

外部が干渉しないようにする制度があります。

大学の自治として、「人事の自治」「施設管理および学生管理の自治」があります。

⇒判例で確認

 

 

(イ)外面的精神活動の自由

外面表明の権利を保障するものであり

・表現の自由(21条)

があります。

21条表現の自由の内容には「自己実現の価値」「自己統治の価値」があり

この価値が表現の自由を支える重要なものです。

 

表現の自由として「知る権利」を憲法は保障しており、

国家に対し情報を公開を請求できる権利であり、

社会権、受益権としての側面も有しています。

知る権利の関連してマス・メディアに、自己の意見の発表の場を要求する、

「アクセス権(反論権)」がありますが、憲法上直接保障されていません。

 

表現の自由を学習する際は「表現の自由の内容」「表現の自由の限界」

区分しておくと整理しやすくなります。

 

「表現の自由の内容」

《報道系》

・報道の自由

・取材の自由

・取材源の秘匿

《ネット系》

・インターネット上の表現

《性表現・名誉棄損表現系》

・性表現

・名誉棄損表現

《プライバシー侵害系》

・プライバシー侵害行為

《CM系》

・営利的言論

《参政権系》

・選挙運動

《集会・動く集会系》

・集会の自由 

・集団行動の自由

《結社系》

・結社の自由

 

「表現の自由の限界」

表現の自由を制限が憲法に違反するか判断する基準を違憲審査権という。

この違憲審査基準として「比較衡量論」「二重の基準論」がある。

 

「比較衡量論」は2つの利益を量り比較する理論。

「制限することで得られる利益」と「制限することで失われる利益」を

比較し得られる利益が大きいと評価した場合、その制限は違憲とはならない。

 

「二重の基準論」(1)精神的自由《心》、(2)経済的自由《金》

2つに分けて(1)精神的自由《心》の規制を(2)経済的自由《金》の規制より

「厳格な審査基準」で審査するものです。

 

厳格な審査基準には、

・事前抑制禁止の理論(検閲の禁止)

・明確性の理論

・明白かつ現在の危険の基準

・LRAの基準

があります。

 

(2)経済的自由《金》

経済的自由はさらに

(ア)職業選択の自由(22条)、(イ)居住・移転の自由(22条)(ウ)財産権(29条)

に区分されます。

 

(ア)職業選択の自由(22条)

職業選択の自由には営業の自由が含まれます。

 

また、職業選択の自由を制限に対する違憲審査として「目的二分論」があります。

「目的二分論」は職業選択の自由を規制の目的を二分し、

・消極目的:生命・健康に対する危険防止目的のための規制

・積極目的:社会的・経済的弱者の保護目的のための規制

とし、その違憲審査基準を

・消極目的規制:厳格な合理性の基準

 ⇒①規制に必要性・合理性がある+②より緩やかな規制が他にあるかを審査する基準

・積極目的規制:明白性の原則

 ⇒規制目的、規制手段のいずれかが著しく不合理であることが明らかな場合に

  限って違憲とする審査基準

 

(イ)居住・移転の自由(22条)

居住・移転の自由には旅行の自由含まれる

海外渡航の自由は22条2項で保障

国籍離脱の自由も22条2項で保障(無国籍になる自由は含まれない)

 

(ウ)財産権(29条)

29条財産権の内容には「財産権の保障(1項)」「財産権の制限(2項)」

「財産権の制限に対する補償(3項)」があります。

また、

この財産権をより保護するため「制度的保障」として

「私有財産制度」として一切の財産が原則として個人によって所有され,

権利者以外が権利行使することを禁止する制度があります。

 

しかし、保障される財産権も公共の福祉により制限を受けます。

「財産権の制限(2項)」

29条2項により公共の福祉により法律により制限されます。

⇒すべての財産権の制限が許されるわけではないことを判例で確認(森林法共有林事件)

 

29条2項により公共の福祉により法律による制限に「条例による制限」

が含まれるか判例で確認(奈良県ため池条例事件)

 

「財産権の制限に対する補償(3項)」

私有財産を制限する際には「正当な補償」が必要である。

この補償の要否には「形式実質二要件説」を用いて判断をしている。

 

(3)人身の自由《体》

人身の自由は不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な侵害からの自由である。

人身の自由はさらに、

(ア)基本原則(18,31条)、(イ)被疑者の権利(33,34,35条)

(ウ)主に被告人の権利(36,37,38,39条)

に区分されます。

 

②参政権

参政権は国民が主権者として国の政策形成過程に参加する権利です。

 

③社会権

社会権は(1)生存権(25条)、(2)教育を受ける権利(26条)、

(3)勤労の権利(27条)、(4)労働基本権(28条)

に区分されます。

 

(1)生存権(25条)

社会権の中で原則的な規定であり、国民の誰もが人間的な生活を送ることが

できることを権利として保障している。

しかし生存権は「プログラム規定」として政治的義務を国に課したに過ぎないと

しており直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではないとしている。

 

(2)教育を受ける権利(26条)

教育を受ける権利は、その性質上子供に対して保障される

また、
教育の内容・方法を決定する「教育権」は誰が有するかは、
国民(親・教師)と国家の双方にあると判断されている。
 
④受益権

受益権は(1)請願権(16条)、(2)裁判を受ける権利(32条)、

(3)国家賠償請求権(17条)、(4)刑事補償請求権(40条)

に区分されます。

 
以上が、「憲法人権の体系整理」です。
しっかりと区分して知識を格納することで
知識混乱を避け、知識アクセスがスピーディにできるようになります。
 
この体系的な知識整理は民法の学習でも有効です。
この機会に身に着けておきましょう。
 
上記のような学習指導を
「ハイキャパ講座」「記憶力強化講義」で実施しています。

 

 

昨日、緊急配信した。りすキャス「憲法人権の体系整理」

はこちらから視聴できます。