「アジアの女神展」で、特に印象に残ったのが、ドゥルガーです。
男神たちがとうてい太刀打ちできないアスラを倒すために生み出された女神。
……「僕たちじゃあ、絶対勝てないから、女神に頼ろう!」っていう発想が興味深い。
「女」が持つ力とはなんなのでしょうね。
しかもね。
アスラのラスボスマヒシャを前にしたドゥルガーがどんな態度をとったと思います?
杯に酒をなみなみと注いで、
「これを飲み干すまで、好き勝手に騒いでな!」
と言い放ったってんだからかっこいいったらありゃしません。
なにこの黄門様の印籠感。
言い換えれば料理の鉄人における道場六三郎感とでも言いましょうか。
ドゥルガーは血にまみれた女神でありながら、その面影を引き継いでいるのは弁財天や准胝観音といった、たおやかな女神だとされます。
ああ、こういう二面性が素敵。
日本神話でドゥルガーを彷彿させる女神は誰かと考えたら……。
アメノウズメじゃないかなぁ。
太陽を引きずり出すために、世界を笑いで包んだ女神。
美しくて、サルタヒコが一目惚れした女神。
そして、男たちがみな怯えたサルタヒコに対し、あざけり笑いながら対面したアメノウズメじゃないかと思います。
小学校のときに読んだ、手塚治虫の『火の鳥 黎明編』は、印象的でした。
サルタヒコは、「醜女」とされたアメノウズメを妻にするんですけど、実はアメノウズメは絶世の美女だったんですね。
アメノウズメはわざと醜い化粧をしてるんですが、それがお多福そっくりってのも、神話を下敷きにしてるんだなぁって思った。
さて、日本書紀の記述です。
ニニギが葦原中国に降臨するとき、道中に大きく恐ろしい風体の男が待ち構えていることを知ります。
男神たちはただ畏れ、戸惑うばかり。
ニニギはアメノウズメを呼び出し、
「お前は面勝神だから、行って、話を聞いて来い」
と命じるのです。
「面勝神」の解釈は定まっていないようですが、「悪びれない神だから」的な訳され方が多いかな。
文字そのままに受け取るなら「美人だから」でもいいような気がする。
とにかく、「怯える男たちは誰も行きたがらないので」、先頭に立ってスタスタ行っちゃうアメノウズメは、ドゥルガーを思い出させるなぁと思うのです。
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