出羽三山の御祭神
出羽神社(羽黒山):伊氐波神、稲倉魂命
月山神社:月読命
湯殿山神社:大山祇命、大己貴命、少彦名命
羽黒山の御祭神は伊氐波神と稲倉魂命。
伊氐波神について詳細はわからないが、羽黒山が海神の領域であることを思えば、海神の神格をもつと考えられる。
稲倉魂(うかのみたま)命は、大宜都姫(おおげつひめ)や保食(うけもち)神と同一神とされる穀物神だ。
記紀神話には、穀物神殺害のエピソードが登場する。
貴い神を饗応するために出したご馳走を不浄のものと誤解され、殺されてしまうのだ。
その後神の体からは五穀が成り出た。
さらに農耕に関係の深い蚕や牛馬も生まれ、神々や人々の生活を豊かにしたという。
つまり、穀物神の死がなければ、人間界に五穀と農耕技術は誕生しなかったというわけだ。
この物語は、天の穀物神が地上の豊穣神へと生まれ変わる過程を表現したものだろう。
彼女を殺害した貴神は、古事記では素戔嗚(すさのお)とするが、日本書紀では月山神社の御祭神でもある月読命としているのも興味深い。
神仏混交の羽黒山では、明治の神仏分離令までは仏教も信仰されていた。
三山の御祭神を、それぞれ羽黒権現、月山権現、湯殿山権現とし、観音菩薩、阿弥陀如来、大日如来が垂迹した神であるとする。
ただしこれは、個々の御祭神の本地仏とは、必ずしも合致していないようだ。
伊氐波神は事跡のわからない神だが、「いては」という名の通り、出羽(いては)国の国魂(くにたま)神だろう。
国魂とは国土を神とする信仰。伊氐波神は出羽国そのものを神格とし、民を守護する存在というわけだ。
奈良時代の史料には登場せず、出羽国が誕生した以降、出羽神社の御祭神とされたようだ。
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