狩猟の場での乱心は、もう一度あります。
葛城で狩猟をしたとき、雀くらいの大きさの地面につくほど長い尾を持つ不思議な鳥が現れました。
鳥は「ゆめ、ゆめ」と鳴くのですが、これは「ゆめゆめ油断するな」の意味だったよう。
直後に草の中から怒り猛った猪が飛び出し、雄略天皇の集まりに突進してきたのです。
狩人たちは大慌て。
我先にと木によじ登ります。
恐れなかったのは雄略天皇だけ。
舎人たちに、
「どんなに興奮している猪でも、人に会ったら止まると言われている。迎え撃て」
と命じるのですが、誰も言うことを聞きません。
家臣たちがいなくなれば、猪の標的は天皇一人です。
今にも食いつかんとしたとき、天皇は弓で猪を突き刺し、足で踏みつけて殺してしまいました。
……つぇええええええええ。
野生の猪って、むっちゃ怖いですよ?!
舎人たちの反応が普通と思うけど。
そして舎人たちはもちろん殺されることになります。
でもそこに現れたのが愛妻、大草香幡梭姫。
「あなた、舎人を殺したらかわいそうよ」
と諫めます。
天皇ショック。
「なに?君は僕より舎人の方が大事なの?」
拗ねる夫に皇后は、
「猪のことで舎人を殺したら、あなたは狼と同じよ」
と言い聞かせるのでした。
すると天皇は、大喜び。
「君って、なんて素敵な人なんだ。今日の最良の獲物は猪じゃなく、君の言葉だよ」
と、妻を褒め称えたのでした。
ね?
なんだか可愛いんですよ、雄略天皇。
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