◆言葉を学ぶことは新しい概念を学ぶこと
先日 「言葉を覚えることは見えている世界を変えること」だという研究結果が発表されました。
「男性が自転車に乗ってスーパーマーケットに向かっている映像」を見せて
どのような映像であったか説明させる実験が行われました。
英語話者: 「男が自転車に乗っていた」 |
ドイツ語話者: 「男が自転車でスーパーに行った」 |
ドイツ語もしゃべれる英語話者:「男が自転車でスーパーに行った」 |
研究の結果、英語話者は「行動」を、ドイツ語話者は物事の「結果」に注目していることがわかりました。
言語学的に見ても、英語はその時「何をしていたか」を重視し、
ドイツ語には進行形すら存在しないので、
このような結果がでるのは自然なことです。
注目すべきは、ドイツ語を第2言語として覚えた人は、「行為」のみという世界を脱出しているということです。
「行動」しか見えなかった人物が「結果」も見ることができるようになったのです。
つまり、「新しい言葉を覚えるということで、新しい概念を持ったということです」
◆言語に引っ張られる判断
先ほどの実験を、英語が得意なドイツ人に対し、場所を変えて行うと以下のように回答します。
イギリスで実験: 「男が自転車に乗ってた」 |
ドイツで実験: 「男が自転車でスーパーに行った」 |
今自分のいる環境に合わせて、視点も変わっていることがわかります。
その他の言語でも試した結果、バイリンガルは使う言葉によって、
見えているものが変わっていることがわかりました。
バイリンガルはアラビア語を使っているときは、アラビア人特有の考え方をし、
日本語を使うときは日本人特有の考え方をしているるのです。
バイリンガルは「別人になった気分」でいると言います。
特徴として、第2言語を使っている時の方が理性的である傾向があります。
バイリンガルであることを上手に使う人は頭の中の言語を切り替え、気分転換したり、
物事を新たな目線で見るために使っています。
多くの言語を喋る人の方がグローバルな人間だと呼ばれやすいのは、
コミニュケーション能力だけでなく、このような複数の視点を持ち、
即座に切り替えることができる能力によるのかもしれません。
あなたの世界を他言葉が変える
脳科学的にみるバイリンガルの特徴
◆バイリンガルの特徴
バイリンガル、マルチリンガルの方が、脳が柔軟で、「今何が起きているのか?」という
認識能力・処理能力が高く、気分の切り替えが早いと言われます。
多言語を操ることは、脳に即座にどちらの言語を使うべきか等、
すばやい状況判断を求めることであり、
普段の軽いエクセサイズが健康な体を作るように、
認識能力を高めるよいトレーニングになっているのです。
認識能力というのは痴呆・アルツハイマーに深く関連する脳の能力です。
バイリンガルは、その柔軟な脳のおかげで、痴呆やアルツハイマーの発症が
一般より4.5年遅く、悪化スピードも遅いというデータがあります。(バイリンガルは痴呆の発生を遅らせる)
◆言葉を覚えることは脳を再構成すること
新しく言語を覚えることで脳の言語学習部、伝達部が物理的に発達します。
脳が言葉を学ぶために、2つの言葉をコントロールするために再構築されたことを意味します。
一つの言語を操る間は全く使用されなかった部位が活動を始めるのです。
2つの言語をコントロールするための部位が活性化することで、
情報の処理スピード、的確な判断能力を上げることができるようになる”よう”です。
幸運なことに、高齢であっても、脳の言語学習部・伝達部は育つこともわかっています。
*注意
この記事の最後にも書かれていますが、
バイリンガルが認知能力が高く、言語学習域及び伝達部が発達しているのは確かですが、
その成長が、認知症を抑えているかどうかは定かではありません。
好奇心を持って、言語を切り替えるという知的な行為が
よい刺激になって、認知症の発生・悪化が遅くしているという予測もあります。
バイリンガルでいることは脳の効率性をあげること
◆感想
「男が自転車に乗っている」って回答日本人にはできそうにないですね。(笑)
以前このブログでも紹介しましたが、
「周りが泣いていて、一人だけ真ん中で笑っている男の子の絵」を見せたら、
アメリカ人は「真ん中の子は喜んでいる」と判断し、
東洋人は「真ん中の子は悲しんでいる」と判断したという実験結果がありました。
「周りとは無関係に”その人物が何をした”を見る」のが英語の特徴ですね。
「受け身があまり使われない理由」でもあると思います。
頭の中の言語を変えることで、考え方をバイリンガルは切り替えることができるようです。
たしかに、使う言語を変えることで、性格が変わっちゃいます。(笑)
全部カタコトなのですが、雰囲気だけは、気だるくなったり、明るくなったりするのは
今回の記事のような影響もあるのかもしれません。
バイリンガルの脳に対する効能については、昨年大きな話題になりました。
祖母も「ボケ防止に英語が良いいから「英単語を覚えている」という話をしだしたくらいです。(笑)
ただ、この記事にある通り、確かにバイリンガルは認知力が高く、
脳に特別発達した部分がありますが、
それが認知症の予防になっているかは定かではありません。
むしろ、知的好奇心を活かしたハリのある生活説が有力ではないか?と思います。
◆今日の面白画像
「とっくにすぎてるやん!」
TEDで紹介された、言語を覚える能力のグラフ