2025年の10冊目。

「正体」
( 光文社 624ページ ) 
染井 為人 著

 

 

↓9冊目はこちらでした飛び出すハート

 
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し
死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 
 
東京オリンピック施設の工事現場
スキー場の旅館の住み込みバイト
新興宗教の説教会
人手不足に喘ぐグループホーム……。
 
様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ
必死に逃亡を続ける彼の目的は?
 
 その逃避行の日々とは?
 
 
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面白いよ!と姉から勧められて借りた小説。
 
600ページ超えの
ボリュームのある長編小説ですが
シチュエーションが区切り良く展開されるので
短編小説を続けて読んでいるような
小気味よさがありました。
 
大枠の題材は「冤罪」や「死刑制度」と
重いテーマで問題提起されています。
 
未成年死刑囚の約1年半にわたる逃亡生活が
描かれており
若者の生きることへの執着が胸に迫ります。

主人公に関わる人々が
彼の本質に触れることで
何とか光を見出せますが
クライマックスの不条理さには
やるせない気持ちでいっぱいになりました。
 
あとがきにありましたが
著者の狙いはそこにあるようです。
 
警察、検察、司法を一点の曇りなく
信じたいものですが
無くならない冤罪事件について
改めて考える良本でした。