書籍 『火のないところに煙は (新潮文庫)』 芦沢 央 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の〈私〉は驚愕する。忘れたいと封印し続けていた痛ましい喪失は、まさにその土地で起こったのだ。私は迷いながらも、真実を知るために過去の体験を執筆するが……。謎と恐怖が絡み合い、驚愕の結末を更新しながら、直視できない真相へと疾走する。読み終えたとき、怪異はもはや、他人事ではない――。(Amazon商品説明より)】

 芦沢さんの作品を読むのは『許されようとは思いません』以来2冊目です。

 2019年本屋大賞ノミネート! 静岡書店大賞受賞! 山本周五郎賞ノミネート! 週刊文春ミステリーベスト10国内部門第5位! このミステリーがすごい! 国内編第10位! ミステリが読みたい! 国内篇第7位! とそうそうたる賞歴の作品です。
 ただ、これがハードルを上げすぎたのか、Amazonのレビューでは辛口のコメントがわりと多いですね(トータルでは星3.9と決して悪くはないんですが)。
 個人的にはなかなかおもしろかったです。

 今作はフェイク・ドキュメンタリーの形式になってます。芦沢央が新潮社から怪談の短編の依頼が受けて作品を書く所からはじまります。1話目の『染み』は作者がクローゼットの奥にずっとしまってる1枚のポスターにまつわる怪異譚です。
 その他も芦沢さんの知り合いのライターや出版社の人間から聞いた話が綴られてます。中には実際に芦沢さんが当事者と接触した話もあります。
 5つの怪談話が収録されていて、最後に5つの話の総括となる最終話が収録されてます。

 2話目の『お祓いを頼む女』3話目の『妄言』に“かなり痛い”女がそれぞれ出てくるんですが、怪奇現象とは別に実際の人間の怖さも十分描かれてます。
 全編を通じて芦沢さんの知り合いの榊というオカルトライターが出てくるんですが、この榊が芦沢さんから相談を受け怪異に何らかの解釈を施す探偵的な役回りをになっていてミステリー的な味わいもあります。

 それぞれの話にちらつく存在があるんですが、これがなかなか不気味でいいんです。ただそれが何者なのかが明かされないままになってるんで、是非続編を書いてほしいですね。
 読み応えのあるホラー小説でした。