書籍 『しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)』村田沙耶香 | 福玉本舗〜ノンジロウのブログ〜

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 【クラスでは目立たない存在の結佳。習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に彼を「おもちゃ」にしたいという気持ちが高まり、結佳は伊吹にキスをするのだが―女の子が少女へと変化する時間を丹念に描く、静かな衝撃作。第26回三島由紀夫賞、第1回フラウ文芸大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)】

 村田沙耶香さんの作品を読むのは『コンビニ人間』『殺人出産』についで3作目です。『コンビニ人間』同様今作でも心理描写がすごく深く描けてると思います。

 本作は2部構成になっていて1部では小学4年生の主人公結佳と友人の若葉、信子、そして幼なじみの雄太の物語が描かれてます。
 2部では中学2年になった結佳と雄太、同級生たちの姿が描かれるんですが、こっちが物語のメインになります。

 物語は結佳の思春期特有の性に対する気持ちとクラス内でのスクールカーストが中心に描かれてるんですが、個人的にはスクールカーストの描写に非常にリアリティを感じました。
 スクールカーストを描いた作品といえば朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』を思い出すんですが、今作はいじめを絡めて描いてる分、かなり残酷で厳しいですね。

 結佳のクラスの女子は5つのグループに分かれてます。
 1番上はスカートを上げたり、マニュキュアを塗ったり、少しだけ悪いことをして着飾った女の子たち。その下に1番上よりは少し子供っぽい賑やかなグループが2つ。その下に大人しい真面目な女子たち。最下層はいじめの対象にもなってる3人の女の子。彼女らは決して仲がいいというわけでなくクラスで生き抜くために寄り添ってます。
 結佳は4番目の大人しいグループに属し、若葉と信子は1番上と最下層にそれぞれ属してます。

 小学校時代に美人でお洒落で輝いてた若葉は一番上のグループにしがみつくためにリーダー格の女子のご機嫌をうかがうのに必死で、結佳も“下”の子と仲良くするのは得策ではないと信子から距離を置くようになったりと小学校の仲良し3人組もバラバラになってます。
 他にも上位グループの子を心の中で批判することで(結佳はこれを「観察」と読んでます)自尊心を保つとか、自分ことをほめてほしいために相手をほめまくるなど少女同士の陰険で生々しい描写がいっぱいです。
 ただ最上位のグループにいる子が男女ともみんないじめっ子っていう設定は若干型にはめ過ぎな気もしました。

 もうひとつの柱である思春期の女子の身体や精神的な変化の部分は幼なじみの雄太に対する歪んだ愛情の描写が主なんですが、これも結構生々しくてひとによっては嫌悪感を抱くかもしれません。

 全体的に主人公結佳の鬱屈した感情の描写が多いんで重い作品ですが読み応えのある作品でした。