実録!でぶるまん危機一髪
「なー、●●くん(僕)ってさー、明日ヒマ?」
「あ、えーっと、どうかな…」
「返事遅いなぁ。ハリセンかますでー」
学生時代、バカ話仲間やったF子さんは関西出身。
黒髪をポニーテールにまとめた可愛い女の子で
ものすごい活発な「アネゴ気質」やった。
学科は違ってたけど、学食で別のグループ同士で
わいわいやってるうちに、仲良くなったのね。
…と言っても、「恋愛感情」とは次元が違ってて、
同い年やったけど、「姉と弟」みたいな感じで、
僕がただの子分みたいな関係やった( ̄_ ̄;)
盃、受けさせて貰いやす、あねさんm(_ _)m
突然、彼女からお願いされたのは土曜日やった。
「明日、ちょっと会う予定の人がいるんやけど」
「はいはい」
「モデルエージェンシーの人なんや」
「ほー! そらすごいですな( ̄▽ ̄)」
「でさぁ、一緒に行ってくれへん?」
「…は? それはまたなんで?」
「ちょっと怖いやんか(^^ゞ」
「ボディガードやね? ケビンコスナーみたいな」
「誰がケビンコスナーやねん( ̄∩ ̄」
「…僕、忙しいかもしれへん」
「あーんケビン様、一緒に行って~ヽ(゚◇゚ )」
「そーゆー手を使うな使うな ̄。 ̄;」
翌朝、新宿駅で落ち合った。
彼女はちょっと化粧してて、大人っぽいスーツ姿。
僕もジーンズにジャケットで、上の年齢を装った。
奥まった場所にある雑居ビル2階の事務所。
(映画に出てくる悪徳金融会社みたいやな…)
忍び寄る恐怖心と、それを面白がる好奇心。
応対してくれたのは、ちょっとクワタ投手に似た
サクラ色のTシャツを着たおにーさん。
ソファに案内されてビビってると、
「そんなに緊張しないでよ~、や~ん」
かなりのオネエ言葉に余計に緊張するする。
「カレシはさぁ、恋人ぉ~?」
「わぁ。まさかまさか。…友だちです」
「ああん、用心棒なのね~、うふふっ」
「うふふっ」
そーこーしてるうちに、もう一人やってきた。
漫画みたいな、紺と緑色の縦縞スーツを来た
恰幅のいい中国人系の男性。
(わー、吉本新喜劇みたいやなこれは…)
意外と二枚目な縦縞中華の声はドスがきいてた。
「さっそく…だけど」
「は、はい」
「君じゃないって」
「あ、ども…」
「彼女さあ、明るいところで顔を見せてくれる?」
縦縞中華は、困惑顔の彼女の手を引いて、
[社長室]ってプラカードの付いた部屋に
連れて行こうとする。
「あ、あの~」
「あ、あの~」
立とうとする僕は、クワタオネエに制止された。
「カレは、ここで待ってよーね」
かなり強引に扉の向こうに連れてかれるF子さん。
(わー。こらマズいなマズイぞマズイねん…)
携帯電話なんてない時代やから助けも呼べない。
でも、僕には責任がある。
(どないしまほ~~~~~。 …お!)
周囲を見渡すと、その部屋は応接専用っぽくて、
これといって資料の類が全然置かれてない。
僕、悩んだ挙句、勝負に出ることにした。
「あの、こちらの事務所ですが…」
「はいはい」
「他にどんなモデルさんが…?」
クワタオネエは、とたんに嬉しそうな顔になって、
「実はね、けっこー有名どころがいるのよ」
そういって奥の部屋に何かを取りに行った。
カンペキに予想通りの行動!
(おけー:*:・( ̄∀ ̄)・:*:)
テーブルの上の電話機に手を伸ばす。
ちょっと迷ったけど、思い切って110を押した。
「…はいはい」
(?( ̄o ̄)?)
なぜか聴いたことのある声。
「あ、あのー」
「ああ、どもー。何か?」
隣の部屋から縦縞中華の声が聞こえますねん。
( ̄_ ̄ ;)??
当時オフィス電話に多かった「ゼロ発信」を
哀しいかな僕は知らなかった。
最初に0を押してから電話番号を押さないと、
自動的に内線電話になっちゃう仕組み。
なもんで、僕が「110」の「1」を押した瞬間、
社長室に内線がつながっちゃったのだ。
「あ、いえ、間違えました…m(_ _ )m」
わけわからん言い訳して受話器を置く。
(俺はアホやアホやアホやアホやアホや…)
もー泣きそう(T▽T;)になったけど、
でもやっぱりほっとくわけにいかん。
開き直って何発かぶん殴られるの覚悟で
強硬手段に出ることにした( ̄^ ̄)
「ふんがー!」
大きく深呼吸して拳を握りしめ立ち上がる。
高らかに響き渡るワルキューレの騎行!
…んなわけないけど、気分はロッキー!!
「あの!すみません!」
そ~僕が声を上げた時、クワタオネエが
「カレシさー、これ見て見て~」
パワーアップされた怪しい笑みで入ってきて、
僕になにやらパンフレットを渡してきた。
「いいでしょ、うちのモデルさんたち」
「は?」
掲載されてたのは、めちゃめちゃ綺麗な
女性モデルさんばかり。
実際に発行された有名なファッション誌の
切り抜きもあった。
「うちって意外とやるでしょ。うふん」
「あ、そー…ですね」
わけわからんで僕が立ちすくんでると、
ドアを蹴飛ばすみたいな勢いで
F子さんが魔の社長室から戻ってきた。
「あ。…だ、大丈夫?」
(お前、その訊き方はマズイやろ~(-"-;) )
自分でもツッこみそーになったけど、
そんな僕の動揺なんておかまいなしに、
F子さんは満面の笑みで言いましてん。
「なーなー! わたし、合格やって!」
「は?」
「だからー、合格してん!」
「あ。え? あ…おめでとございます」
その瞬間、僕の中で結論が出た。
1:そこはきちんとしたモデル事務所やった。
2:彼女はちゃんとモデルのテストを受けてた。
3:僕はバカ。
4:僕一人がバカ。
彼女、半年後ぐらいからモデルの仕事を始めて、
やがてマネージャーに自分の天職を見い出した。
あれから27年。
例の新宿のモデルエージェンシーを引き継いで
社長さんとして活躍されていらっしゃいます。
あれから27年、。
僕は今もバカなままで、バカなブログ書いてます。