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学びながら呑みログ

酒場で学び、酒を楽しむ。
呑んでいる酒を楽しく学ぶブログ

カルピスサワー

カルピスサワー・アサヒビール

原料:ウォッカ・脱脂粉乳・乳酸菌飲料・糖類・酸味料・香料・安定剤(大豆多糖類)・甘味料(アスパラテームLフェニルアラニン化合物・アセスルファムK)
アルコール:3%・分類:リキュール

「乳酸菌の自然の恵みから生まれました」「おいしさへのこだわり品質」という謳っているが、甘味料が…。

カルピスは1917年創業。世界初の乳酸菌飲料「カルピス」を主力商品に、1973年に「カルピスソーダ」、1994年に「カルピスサワー」、1991年に「カルピスウォーター」を発売。炭酸がないと品質保持ができなかったので、「ウォーター」が後発となった。

2007年に味の素が、2012年にアサヒビール(正確にはアサヒグループホールディングス)が親会社になった。あわせて酒類事業(サワー)はアサヒビールに、国内飲料事業はアサヒ飲料に移った。

「サワー」は、2003年より毎年3月にパッケージや内容のリニューアルを行っている。その時のニーズに合わせたリニューアルらしく、2011年のリニューアルで、甘味料を入れて、アルコールを下げて、ローカロリー&ローアルコールとなった。2013年12月にアサヒビールに移ってリニューアル。「カルピス」のロゴがなくなっただけ。パッケージも内容も変わらない。

ちなみに「カルピスウォーター」は甘味料なし。「カルピスソーダ」は「サワー」と同じく甘味料ありで、ウォッカが入ってるか、入ってないかだけ。「サワー」だけが、ニーズに合わせて右往左往。

旨くなくなった。炭酸も弱めたので、甘味料の甘味が、カルピスの味をダメにしている。甘味料の後味が残る。じぶんで作ったほうが旨い。ということで、作る。

でわ。

酒呑み散歩 高円寺・ピッツァナポレターノカフェ

高円寺を呑み歩く。

呑む前に軽く昼食。2013年10月に吉野家が始めた、500円のワンコインピザのピッツァナポレターノカフェの新高円寺店で食べる。正確には始めたのは子会社のピーターパンコモコ。一口茶屋、味咲き、石焼ビビンパなどを営む。女性のひとり飯を狙う吉野家が始めた1号店だ。

店頭の外装も、店内の内装も、なんとなく某店に似てると思っていたが。

ドリンクに酒もある。中生500円、大生600円。ワイン500円、ハイボ380円。こちらは低価格ではない。酒を呑む処ではないので、まあ、いいとしても。

かんじんのピザが、ネットでは低評価。たしかに…。

2012年あたりから、低価格のピザがでてきた。チェーン展開ではナポリス、センプレピッツァ、コナなど。そのへんと食べ比べると劣る。なぜだろうか。牛丼激戦を戦ってきた吉野家らしくない。食べてないのだろうか。

ピーターパンコモコの社長は、建築工学を学んで、ほっかほっか亭、フレッシュネスバーガーを始めたひと。フレッシュネスバーガーでは、ごはん処おはちもやっていた。その後に、フレッシュネスバーガーを、デリバリーコーヒーのユニマットに売って、辞めて、フライドグリーントマトを設立。2013年5月に中目黒にワンコインピザのピッツァフォルノカフェを開店。

そうか、店頭の外装も、店内の内装もフレッシュネスバーガーだ。

そして吉野家の三顧の礼に応えて、ピーターパンコモコの社長就任。

ほっかほっか亭で、後発の本家かまどやや、ほっともっとに負けて、フレッシュネスバーガーで、先発のモスバーガーや大戸屋に勝てなかった。なぜだろうか。フレッシュネスバーガーも、ごはん処おはちも、店舗はこだわっている。

HPを見ると、その「店舗のこだわり」がわかる。

だが、店舗によって、スタッフの対応、料理のクオリティのばらつきを感じる。著書を読むと、そのへんはあんまり興味がないらしい。ちなみにフレッシュネスバーガーの譲渡時は赤字経営。経営も興味が…。

モスバーガーや、大戸屋は料理にこだわっている。その「料理のこだわり」を伝えるための店舗。

さて、どこまでピッツァナポレターノカフェはこだわれるか。女性のひとり飯は、まだまだ狙えるところがある。プレスリリースでは100店をめざすという。

その前に、ピザの評価にこだわってほしい。

2014年も呑み歩くので。でわ。


酒呑み比べ オススメの清酒

全国の40の酒蔵が営む共同アンテナショップ・名酒センター。ここでは有料試飲ができる。1杯300~円、3杯試飲で100円引き。1杯60mlなので、3杯だと1合。「酒呑み比べ」は名酒センターと、長野の酒蔵のアンテナショップ・信州おさけ村に協力いただいてる。どちらも好みを伝えれば、好みに合った清酒を勧めてくれる。

ということで、名酒センターの店長に好みを伝えて、オススメ清酒を試飲。

呑み比べた3本

旭蔵舞(京都・竹野酒造) 純米
Alc:15・酒度:ー2・精米歩合:60%(旭)

竹野酒造は1947年創業。酒銘は酒米によって「亀の尾蔵舞」「旭蔵舞」「祝蔵舞」「錦蔵舞」「祭蔵舞」がある。

「旭蔵舞」は、酒米「旭」を使っている。「旭」は1911年に生まれて、その後に西日本で広がった。品質は良いが、作付が難しいために、現在はほとんど作っていない幻の酒米。無農薬「旭」で作った「旭蔵舞」は、爽やかな香り、優しく澄んだ味わい。甘口の食中酒。

鳳鳴田舎酒 直汲み無濾過生原酒(兵庫・鳳鳴酒造) 純米吟醸
Alc:18~19・酒度:+7・精米歩合:60%(杜氏の夢)

鳳鳴酒造は1797年創業。創業時の蔵名は西尾酒造。1945年に13の酒蔵が合わさって多紀酒造に、1996年に鳳鳴酒造に改名。酒銘は「鳳鳴」。振動に変えた音楽を酵母に与えながら作った「音楽振動醸造酒」がある。

「鳳鳴田舎酒」は、元来の清酒の濃醇な旨味、深い重い味わいを求めたシリーズ。その中の兵庫の酒米「杜氏の夢」で作った1本。無濾過生原酒。瓶内二次発酵しているため、微発泡が楽しめる。そのせいか、深い重い味わいは優しく広がり、濃醇な旨味はたしかにあるが、思ったより感じない。わずかに呑んだ後の余韻で感じる。

金升 朱ラベル(新潟・金升酒造)
Alc:15・酒度:?・精米歩合:?%(五百万石)

金升酒造は1822年創業。創業時の蔵名は髙橋酒造。1930年に改名。「碧ラベル」と「朱ラベル」、「碧ラベル」の非熱処理の「本醸造生酒」がある。安くて旨くて毎日の晩酌に呑んでほしいという、普通酒にこだわった酒蔵。

「碧ラベル」は醸造アルコール、「朱ラベル」は自蔵蒸留の米焼酎「かねます」を柱焼酎として加えた普通酒。「朱ラベル」は淡麗辛口。喉ごしの良い、キレのある味わい。蔵元は燗酒を勧めている。

純米嗜好の現在。醸造アルコールを加える「アル添」を嫌う。だが、嫌われても醸造アルコールを加えるのはなぜか。昔は腐造回避、味覚調整のために柱焼酎を加えていた。その後に、戦後の米不足で、増量のために醸造アルコールを加えた。さらに水を加えて三倍増醸清酒を作った。今は腐造回避、増量のために加える必要はなく、味覚調整のために加えている。

ただ、自蔵蒸留の柱焼酎と違って、醸造アルコールは、その原料や蒸留方法に不安、疑問もたしかにある。酒蔵は、その意図、詳細をはっきりと書いてほしい。

すべての「アル添」の、本醸造系を一概に嫌わないでほしい。詳細は「初めて呑む全米吟醸とは?」の奥の松酒造でも書いたので。

http://ameblo.jp/nomilog2/entry-11725997734.html

長くなりすぎた。でわでわ。

注記
酒度:糖分を測った甘口、辛口を示す目安。プラスは辛口、マイナスは甘口。ただ、「甘い」という味わいは、糖度だけではなく、酸度、アミノ酸度、アルコール度、さらには呑む温度に関わるので、酒度は、あくまで目安。

無濾過:醸造後、残っている滓を取り除く濾過作業。濾過によって無色の清酒となる。その作業を行わないので「無濾過」。雑味があって、この雑味を複雑な味わいとして好まれている。

生酒(生原酒):濾過後、熱処理(火入れ)で酵母の活動を止める。また殺菌を行う。酒質安定、常温や長期保存のための作業だが、みずみずしい香りや味わいがなくなるという。また、昔と違って製造技術、輸送管理の優れた今は必要ないということで、熱処理してない生酒、無濾過生原酒が好まれている。瓶内で二次発酵しているため、微発泡が楽しめる。

柱焼酎:清酒の伝統製造で、醸造時に米焼酎やかすとり焼酎を加える。腐造を防ぐためと、味をしめる(しゃんとする)ために加えた。明治時代以後、醸造アルコールができて、柱焼酎の代わりに加えるようになった。

かすとり焼酎:日本酒の酒粕で作った焼酎。「粕取り」が語源。ちょっとクセがある。戦後の「カストリ焼酎」は「酒粕で作った粗悪な密造焼酎」。まったく違うので。

醸造アルコール:食用エタノール(酒精)。主に糖蜜(サトウキビ)、他にサツマイモ、トウモロコシなどを発酵、蒸留したもの。36度未満は甲類焼酎、ホワイトリカーとして売られている。

三倍増醸清酒:戦後の米不足から、醸造アルコールや色々なものを混ぜて薄めて作った日本酒。醸造アルコールといっても原料はわからない。3倍くらいになるのでこう呼ぶ。


酒呑みログ 新宿・やまと

新しいせんべろ酒場を探して呑み歩いた。

いつもの酒場以外で、いいところはないかと探していたら、東五反田に「ぼたん」という中生160円(当時価格)の酒場があると聞いた。

肴はちょっと高い。あと、通し代が300円。

しばくしたら、渋谷に「すみれ」という中生120円(当時価格)の酒場があると聞いた。

店頭の外装も、店内の内装も、メニューも「ぼたん」と同じで、通し代が400円。

しばらくしたら、新橋に「コン」という中生80円(当時価格)の酒場があると聞いた。

店頭の外装も、店内の内装も、メニューも「ぼたん」「すみれ」と同じで、通し代が400円。あまりに同じなので、気になってスタッフに聞いたが、チェーンではない、と。

しばらくしたら、新宿に「やまと」という酒場があると聞いた。

ちょっとわかりにくい処にあって、店頭の外装は和風、割烹。高級感を出してるが、店内は大箱の大衆酒場。海の家のような内装。若いスタッフ。フォーマットになってるメニュー、ポップ。たこ焼き、ナポリ焼きそば、寿司などが定番の肴。酒はビール(黒ラベル)、ハイボ、サワーは安いが、他の酒はふつう。肴はちょっと高い。ただ、ビールはそんなに呑めないし、ハイボやサワーは作り方しだいで原価は安く抑えられるし、トータルでは決して安くないが、ビールの価格に釣られて入ってしまう。

ちなみに「やまと」は中生は180円(当時価格)。通し代は300円。

ウエブで「裏モンテローザ」「謎の激安チェーン酒場」と呼ばれる酒場。宣伝もせず、いつのまにか都内に20店くらいとなった。店名はバラバラだが、実は南青山にある、謎の「飯田」が営むチェーン酒場。始まりは神楽坂の「竹ちゃん」、もしくは六本木の「松ちゃん」らしい。いつからか、ローコスト、多業態展開のモンテローザに対して「裏モンテローザ」と呼ばれる。チェーンか、FCか、単店採算かはわからない。

酒場に居ると社会がよくわかる。「謎の激安チェーン酒場」はウエブをうまく使った、新しい酒場かもしれない。

でわ。

酒呑み比べ 群馬・大利根酒造

大利根酒造は、尾瀬の麓にある小さな酒蔵だ。

1902年創業。だが、この地で酒造りが始まったのは1739年。その歴史を、酒蔵は受け継いでいる。昔からの酒造り、手造りによる酒。受け継ぐために、守り続けるために、あえて事業拡大を避けているという。

六年貯蔵の純米酒。手間や時間を惜しまないで作った酒。酒米にむかないコシヒカリで作った純米酒。地産地消を思って数年がかりで作った酒。この蔵が最後かもしれない、綿による濾過方式。どれもが蔵元の「みずからが呑みたい酒」を作るという信念だ。

メインの酒銘は「左大臣」。尾瀬の軟水を仕込水に使っている。「六年貯蔵純米酒」は、ふくよかな香り、6年間を濃縮した旨味ある味わい。昔ながらの伝統醸造が醸し出す、昔ながらの香りと味わい。大利根酒造は新酒以外は、必ず2年、3年は寝かせているとのこと。

好き嫌いのはっきりする香りと味わい。日本酒も洋酒も呑む人に勧める。酒を寝かせることのおもしろさを香って、味わってほしい。

他の酒銘に「沼田城」「尾瀬の雫」「花一匁」「奥利根紀行」がある。

ぜひ。

呑み比べた3本
左大臣 純米酒
Alc:15~16・酒度:+1・精米歩合:65%(?)
左大臣 本醸造生酒
Alc:18~19・酒度:+3・精米歩合:65%(?)
左大臣 六年貯蔵純米酒
Alc:15~16・酒度:+2・精米歩合:65%(若水)
タイム

家で呑みログ チューハイタイム(レモン)・サンガリア

原料:レモン果汁・醸造アルコール・糖類・酸味料・香料
アルコール:6%・果汁:3%・分類:リキュール

甘い。さすがのサンガリア。呑む前にわかっていたが。

サンガリアといえば、コーヒー。1969年に、UCCが世界初の缶コーヒー出した後の2番目(1971年)に出した。清涼飲料業界では、実はそれなりの実績のあるメーカー。加温のできるペットボトルや、冷凍のできるペットボトルで儲けたり、100円自販機で儲けたり、スーパーなどのPBへの受託製造メーカーとして儲けたり。開発力、技術力、営業力に長けている。

そのサンガリアが出した缶チューハイ。他に「チューハイ気分」「ストロングチューハイタイムゼロ」があるが、まだ呑んでいない。たぶん呑まないが。

あと、社名は正しくは「日本サンガリアベバレッジカンパニー」だ。大阪らしい。…失礼。

でわでわ。
ワイン

学びながら呑みログ スクリューキャップのワインの件

クリスマスなので、ワインを呑んだ。…呑みたかったワインは高かった。呑みたかった。

置いといて。

数年前からスクリューキャップのワインが増えてきた。

キリンビールが、スクリューキャップのワインについてアンケートを行った。「どう思うか」で、「便利」45%。「どう便利か」で、「開栓が楽」「再栓が楽」「コルク臭がない」「酒質劣化がない」「長期保存ができる」という意見。あとは「垂直保管ができる」。たしかに。

ただし家で呑むときはOKだが、レストランで出されたり、プレゼントで貰ったりはNG。

コルクは、スクリューキャップがなかった昔のもの。昔も、天然素材のために虫食いや液漏れでワインの香りを褪せさせて、味わいを水っぽくさせていた。今は人工素材のコルクができた。だが、スクリューキャップに及ばない。スクリューキャップは、もっともワインに適している。

ニュージーランド、オーストラリアのワインだけだったが、チリ、カリフォルニア、最近はヨーロッパのワインもスクリューキャップになった。原因は、スクリューキャップのメリット、コルクのデメリットではなく、コルクの製造不良。ほとんどのコルクはポルトガルで作っているが、製造不良発生率がやたら高い。どんなに良いワインを作ろうと思っても、良いコルクを作ってくれないと、すべてがダメになる。ポルトガルは、良いコルクを作ろうと思っていない。呑む人ではなく、作る人の事情だった。他国もコルクを作るようになったが、シェアは、コルクガシの産出の1/3、コルクの製造の1/2がポルトガル。状況を変えるのは、コルクを変えることではなく、コルクを辞めることだ。

昔からの作り方は大事かもしれないが、昔からの入れ物は、意外と大事ではない。

といっても、料亭でカップ酒やパック酒を出されてもな。…料亭は行かないか。

でわ。


呑み散歩 神田・味の笛

神田を呑み歩く。けっこう呑んだ。けっこう酔った。

立ち呑み屋「味の笛」に入った。立ってれば、まだ呑める。

「味の笛」は、御徒町駅前にあるファミリーデパート吉池が営む立ち呑み屋。吉池は、小売業以外に外食業も展開。そのひとつに、立ち呑み屋「味の笛」がある。神田店は1992年、本店は1997年開店。

創業者出身の新潟の酒、魚介の肴、手づくり総菜を楽しめる。ビール250円、酎ハイ200円、ハイボ250円、新潟の酒が300~500円。肴は200~400円。安い、旨い立ち呑み屋だ。

前も書いたが。

有名なチェーンの立ち呑み屋。通しで100円も取られる。酒も肴も決して安くない。別にけちってるわけではない。ただ、立ち呑み屋でチャージは、その価格はないだろう。立ち呑み屋は立って軽く、早く、そして安く呑む処と思っている。そういう処と思って入る。だが、チャージを、その価格を言ってくるならば座りたい。ゆっくり呑みたい。

それでも「安い」「CP凄い」というレビューを見ていると、「酒呑み」と「酒を呑みたい人」は違うと思った。まあ、サービスも悪いし、客筋も悪いし。まあ、もう入らないけど。

ちなみに「俺のやきとり」ではない(笑)。

話を戻して。「味の笛」で呑んで驚いたのは、神田酒場は客筋が見事に分かれている。地元人、若いサラリーマンとオヤジのサラリーマン、ひとり呑み、ふたり呑み、グループ。店によって客が違う、客によって店が違う。「味の笛」はちょっと疲れた(失礼)サラリーマンで賑わう。

もっと驚いたのは、どの店も客筋がとってもいい。若い人もグループも騒がない。ここは騒ぐために酒を呑む処ではない。酒を呑んで騒ぐ処でもない。酒を呑んで楽しむ処だ。楽しみ方は色々。話す、本を読む、たゆたゆと寛ぐ、ただ旨い酒と旨い肴を楽しむ。そういう処だ。

この神田という街が、ずっと醸しだしてきた気風かもしれない。この気風を失わないような、新しい街に。大衆酒場を新しい形で続けてほしい。

でわ。

酒呑み比べ カップ酒の呑み比べ(後編)

最近、小さな酒蔵が、おしゃれなカップでカップ酒を出して再びブームになっている。

呑み比べたカップ酒の、皇国晴酒造の「豪華生一本」は、その先駆的存在。シンプルで、花模様以外は酒銘も、蔵名も書かれていない。呑み終わったら、花瓶になるような秀逸なデザインだ。CMで有名になった「生一本」のカップ酒。

皇国晴酒造は1887年創業の、富山の酒蔵。創業時の蔵名は岩瀬酒造。名水百選のひとつが、しかも軟水と硬水のふたつが蔵内に湧き出ている全国唯一の、恵まれた酒蔵だ。1984年に作られた「幻の瀧」で、「生一本」はセカンドブランドになったが、伝統を重んじた清酒を作り続けている。

その真逆にあるのは「ふなぐち菊水一番しぼり」だ。「大関」や「豪華生一本」の洗練なデザインと真逆の、ちょっと…なデザイン。だが、酒好きにとって有名なカップ酒だ。

「ふなぐち菊水一番しぼり」はガラス製ではなく、アルミ製のカップ酒。缶に、そのワケが書かれている。

今はあたりまえのように生酒が売られているが、生酒は熱処理(火入れ)しないと腐敗、劣化する。昔の技術で生酒を売るのはできなかった。だが、試行錯誤のすえにアルミ缶によってできた。つまり菊水酒造は、40年前の1972年に、カップ酒で生酒を出した唯一の酒蔵だ。加水調整もしてないので、19度。

醪を酒と酒粕に分けるための酒槽から出る原酒を、菊水酒造は「ふなぐち」と呼んだ。また、キリンビールは「一番搾り」を出す際に、酒銘使用の挨拶があったという。「ふなぐち菊水一番しぼり」という長い酒銘に込められたのは。

「ふなぐち菊水一番しぼり」は、缶内熟成によって半年でブランデーのような味わい、1年で中国の老酒のような味わいになるという。熟成が待てない人は、1年熟成の「熟成ふなぐち菊水一番しぼり」を。新米で作った秋季限定発売の「新米新酒ふなぐち菊水一番しぼり」、醸造アルコールを使わないで、かすとり焼酎を使った米のみの原料の「薫香ふなぐち菊水一番しぼり」もある。

菊水酒造は1881年創業の、新潟の酒蔵。皇国晴酒造と違って、伝統にとらわれないで、技術開発、合理主義で、新しい清酒を作り続けている。過去、いくども存続危機に遭ってきたからかもしれない。存続危機を、酒蔵一体となって乗り切った想いが、酒銘に込められている。

酒蔵によって考え方、拘り方が違うのは当然。だが、ふたつの酒蔵の社訓は、偶然に「呑む人のために良い酒を造る」と。一升瓶は買うのもたいへんだ。カップ酒で、ふたつの酒蔵の違いを、ぜひ、味わってほしい。

呑み比べたカップ酒
金冠ワンカップ・大関
白鶴ペーパーカップ・白鶴酒造
豪華生一本・皇国晴酒造
酔心・酔心山根本店
開運祝酒・土井酒造場
八海山・八海醸造
奥の松・奥の松酒造
ふなぐち菊水一番しぼり・菊水酒造
賀茂鶴純米酒・賀茂鶴酒造
羽陽辯天・後藤酒造店

酒呑み散歩 神田・鶴亀

神田を呑み歩く。

5店目は「鶴亀」。店頭も店内も商店街の中華屋。中華屋が酒場になったのか、居抜きで中華屋を酒場にしたのか。そのへんはわからないが、現在は昼間営業なし、ランチなしの、りっぱな大衆中華酒場だ。

料理はオリジナリティある、旨い中華料理。日本人ごのみに、日本の酒に合わせた中華料理。よくある中華酒場は、いまいち清酒や焼酎に合わない。ビールと紹興酒など、肴に酒を合わせなければならない。「鶴亀」は、ふつうの酒場料理もあって、酒を呑みながら和洋中の肴を食べられる、楽しい大衆中華酒場だ。

ホッピーセット520円、ナカ210円はちょっと高いので、ハイボ250円と酎ハイ270円を頼む。酎ハイは1杯目のみにカットフルーツが添えられる。今日はメロン。他の酒は中生380円、大瓶580円など。ハイボと酎ハイだけがなぜか安い。

神田酒場は、同じような大衆酒場に見えるが、同じではない。最近はチェーン酒場や個性ない今風酒場も増えてきたが、40年も、50年もずっと営んできた酒場は、さすがだ。雰囲気がまったく違う。そのへんを楽しみながら、ぜひ、神田酒場を呑み歩いてほしい。

「鶴亀」の隣に「あすなろ」という同じような大衆中華酒場がある。どう違うのか、どう楽しませてくれるのか。

また神田に来よう。