15-7 院政期の文化

 

院政期(いんせいき)の文化(11世紀後半~12世紀)は、貴族社会にかわって、戦乱を経るたびに武士が成長してくる時代の文化だった。

このため、従来の貴族文化に、地方文化・庶民文化の要素が加わることになった。

 

 浄土教(じょうどきょう)の地方普及

(ひじり)上人(しょうにん)などと呼ばれた民間布教者(諸国を回遊した僧侶)の活動もあって、浄土教が全国に広がった

浄土教の地方普及の様子は、奥州藤原氏平泉(ひらいずみ)にたてた中尊寺金色堂(ちゅうそんじこんじきどう)などに示されている。

 

 今様と田楽・猿楽

今様(いまよう)とは、「現代風」という意味で同時代の歌謡をさす。

後白河法皇がまとめた『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』は今様などを集大成した歌謡集だが、これを編(あ)んだ後白河法皇は、若いころから今様に打ちこんで昼夜を問わず歌い続けたため、3度も声帯をつぶした、と伝えられている。

 

また、田楽(でんがく)猿楽(さるがく)などの庶民芸能が、貴族の間でも流行した

 

 物語と絵巻物

軍記物語では前九年合戦を描いた『陸奥話記(むつわき)』などが記され、歴史物語では『栄花(華)物語(えいがものがたり)』『大鏡(おおかがみ)』など仮名による優れた歴史叙述(じょじゅつ)が生まれた。

 

インド・中国・日本の説話を集めた『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』が成立したのも,院政期のことである。

 

また、絵と詞書(ことばがき)をおりまぜた絵巻物(えまきもの)が発展し、『源氏物語絵巻(げんじものがたりえまき)』応天門の変を描いた『伴大納言絵巻(ばんだいなごんえまき)』などの傑作が遺(のこ)されている。