しみかん十二月往来 雪月花〜頼政、鵺 | この辺りの見所の者

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2024/5/26

祖師ヶ谷大藏 ムリウイ


小田急線、祖師ヶ谷大蔵駅を降りて商店街を歩く、あの木梨サイクルの近くにある、カフェスペース、ムリウイ。ビルの屋上にあった。


能役者 清水寛二師が今年から毎月一回のペースで挑んでいる、しみかん十二月往来 雪月花。



ムリウイのnoteからお借りしました。プロフィールなどはここをご覧ください。↑


室内はこんな感じ。カフェスペースなのでワンドリンクを頼む。ライブハウスで能の謡を聴くのかなと思っていた。


台の上には囃子板と2本の張扇。能の稽古をしていないので、ピンと来ないが謡の稽古の時、2本の張扇で能の囃子の小鼓と大鼓を叩き分けるらしい。曲の展開では2本の張扇で太鼓のリズムを奏でたりもする。わかりやすく言えば講談の神田伯山が良く張扇を叩きつけているけど、その能の囃子を稽古の時に奏でるものと言えばよいかな。


てっきり、素謡の会に近いのかなと思っていたのでびっくりした。

また、笛を口で言うのは唱歌だけど、1人で謡と囃子を同時にやるという、こんな事やる能役者は今までいたのだろうか。


最初は頼政。唱歌から始まり、台に座って2本の張扇で登場楽を囃す。実は後日、清水寛二師に伺いを立てたら、人によって違いはあるけど右手の張扇は大鼓、左手の張扇は小鼓との事。

登場楽(次第、一声、出端)だけでなく打切や謡ながら拍子合わせ(上歌、クセ他)や拍子合わズ(サシ謡)を一人で同時進行で進んでいく。また、登場楽の囃子は現在では、ほぼ少略して囃すのでやけに長いなと思いながら聴いていたら、本寸法の登場楽で囃していたと清水寛二しか聞く事が出来た。あまりにマニアックな話題で申し訳ない。

能のシテ方だから囃子も一通り出来るという事を認識した。


謡のツヨ吟とヨワ吟を場面ごとに使い分ける。

照明がほぼ消されて18時前で窓にカーテン。頼政を謡っている清水寛二師の背後の窓にはカーテン越しの夕日が月に見えた。頼政の場面は月夜なので、これは場所と夕日を計算したものだったとしたらさすがだ。


頼政の後に休憩。台が窓側の奥に下がり日が落ちたので窓のカーテンも開く。

天気は風が強く、どんよりとした雲が窓から見える。まるで二曲目の鵺の場面の空模様の様だ。

暗闇の室内から清水寛二師が唱歌でヒシギを唱い始まる。前半のアイの台詞も謡。本来なら一曲のみなら間狂言も語っているが、今回は二曲なので鵺の前半のアイの台詞のみとの事。ここが無いと筋が繋がらないからとの事。


後場になり、清水寛二師は台から降りて舞う。暗闇から浮かび上がる清水寛二師の顔の凄味は鵺の不気味なものそのもの。自分はかぶりつきに座っていたけど目の前に清水寛二師、いや鵺が迫ってくるので内心ビビった。鵺が頼政に討たれ、うつぼ舟に押し込められて流される様の不気味と哀しさ。


キリが終わり余韻の静寂の中、清水寛二師はドアを開け去って行った。


能役者のシテ方の凄さを垣間見た。