2024/3/16
実は牛田智大さんのピアノを実演で聴くのは2回目である。
2年前のブログ↓
2年前、実家のある秋田県湯沢市の湯沢文化会館で聴いた。あの年季の入りすぎたピアノの限界ギリギリまでの音色を引き出して凄いなと思った印象。
今回はモーツァルト、シューマン、ショパンのプログラム。
▽モーツァルト:ピアノソナタ 第4番 変ホ長調 K.282
▽シューマン:クライスレリアーナ Op.16
休憩
▽ショパン:即興曲 第1番 変イ長調 Op.29。
第2番 嬰ヘ長調 Op.36。第3番 変ト長調 Op.51
▽ショパン:ピアノソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
アンコール
今回、こだわって聴きたかったのはクライスレリアーナ。シューマンのピアノ曲は、結構難しいのでないかなと音源や数少ないけど実演を聴いていて常々思っていた事ではある。
秋田のアトリオン音楽ホールは残響が結構あるので、ピアノ曲を聴く時は席を選ばなければならないと個人的に思っている。自由席ならば前の席に座る。今回、行くのを決めたのが遅かったので、10列目くらいの席。ピアノだと残響で籠りがち。(個人的主観。)
最初のモーツァルトのとき、最初はタッチコントロールで抑えた音色だったのでモーツァルトっぽいしなやかでクリアに聴こえたけど、少しテンションが上がったのか、少し力んでしまい、やや団子な音色になってしまった気がした。少し疲れもあるのかなとも思えた。
次のクライスレリアーナは、第1番の出だしのテンポの緩急が大事だと思っている。様々なピアニストに音源や動画を聞いたり見たりしたが、ピアニストの個性が見事に現れる。一気に突っ走るテンションのパッションの演奏は、どうやら好きではない事がわかって来た。
シューマンのパッションというか狂気と言うのは、前に誰かが言っていたうろ覚えなのだろうけど、知性が無ければならないと言っていた気がする。知性ある狂気と言うかパッションであり躁鬱でもある。シューマンの交響曲を聞いていると隠キャのマーラーみたいなイメージを持ってしまったりする。ピアノ曲も内に感情を込めすぎて、それが膨らんでいくような音楽。
気に入った音源のピアニストの演奏は、フランスのピアニスト、アルフレッド・コルトーとイーヴ・ナットの演奏だった。第1番の感情の揺れと躁鬱をテンポの緩急と溜めで見事に表現していて、しっくり来た。
牛田智大さんのクライスレリアーナの第1番のテンポに注目した。
始まると、緩急付いた矯めがあり、重厚な音色での構築。これは良い演奏になると確信した。
シューマンの知性ある白昼夢が表現されていた演奏であった。
休憩後のショパン。即興曲もソナタ3番も良い演奏だった。やはりショパンの音楽にはシューマン程の屈折感は無く、様式美の構築の美しさある陽キャの音楽なのだ。
シューマンのピアノ曲の実演で久しぶりに満足した演奏が聴けたと思う。
アイドルピアニストのイメージがどうしてもある牛田智大さんだけど、自分にはそんなのはどうでもいい。シューマンのクライスレリアーナの演奏を聴いて、曲の解釈の拘りを感じられた演奏であったので、歳を重ねてアイドルピアニストで無くなり、良いピアニストとして聴ける事を信じたい。
今回はスタインウェイのピアノ。自分の席からやや残響が強すぎたかなとは思ったけど、伸び代がまだまだあるねのを再確認出来た。
また、遠くない日に牛田智大さんのピアノを聴く機会ががある事を楽しみにしたい。