第23回能楽フォーラム | この辺りの見所の者

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12月14日に大阪大学で第23回能楽フォーラムが開催されて拝聴して来ました。
沼 艸雨(ぬま そうう)氏の旧蔵演能写真から、昭和期関西能楽界を探るのがテーマです。
最初に中尾 薫氏が沼氏の旧蔵演能写真が大阪大学に寄贈された経緯とデータ化した中間報告を述べます。
演能写真数は3205枚で写真の裏側に日付と場所とシテだけが書かれているのがほとんどで、沼氏だけでは無く他の人の演能写真も幾つか含まれているとの事だということだそうです。

続けて関屋俊彦氏が沼氏が世話人になっていた大阪能楽鑑賞会の発足の経緯と、沼氏が演能写真だけではなく演能模様をスケッチしていたことを述べました。

休憩後の第二部は恵阪 悟氏による沼氏の演能写真と能評についての発表で、沼氏が能評を始めた昭和六年は、3世代の役者(幕末から明治中頃に生まれ円熟期を迎えた役者、青年期の役者、産まれた役者)と分けて、昭和期における世代間の芸の違いを、観能と能評から記した事は近代関西能楽界における貴重な資料でもあると述べました。

藤岡道子氏は沼氏旧蔵の狂言写真の観点から、その狂言評から「木六駄」の牛が舞台から見えたという評の先駆けではという見解とその写真には善竹弥五郎という名人の最後の舞台写真も含まれていることを述べます。

最後は長田あかね氏が、沼氏の新作狂言に対する意識の変化を述べる。戦後の狂言ブームが起こった背景には、学者になる狂言再認識の発信があるとし、それが昭和30年代の狂言ブームに繋がったというもので、武智鉄二を中心とした新作狂言も多数書かれて上演されたが、沼氏は当初、新作狂言には懐疑的。
しかし次第に新作狂言にも理解を示すようになってきたとのこと。
沼 艸雨氏と武智鉄二氏は交友があり、互いに認めあっていたこと、武智氏は沼氏が観能の師匠であり、沼氏の能評を格調の高いもので行間から読み取るものだと後年述べていたということが拝聴していて印象に残りました。

『沼 艸雨能評集』は自分のバイブルで、ああいう観能記を書きたいのですが全く出来ないでいます。
今回の能楽フォーラムの発表で、沼 艸雨氏の演能写真と演能スケッチの存在を知り、能楽に対する深い想いを知ることが出来ただけでも拝聴した甲斐がありました。

やはり能楽関連の研究発表会に行くと刺激を受けます。
パワーポイントに映る沼氏の演能写真からは舞台の空気感が凝縮されていました。
また、『沼 艸雨能評集』を読み直してみたくなりました。