↑のつづき。

さて、眉山麓の春日神社。




引き続き、『春日神社』の起源を探ろう。

前回のおさらい。

元々の『春日神』は、現在の春日大社の境内にある榎本神社に祀られていた女神だった。

榎本神社の祭神は当地の地主神であり、春日大社が春日野に創建される以前から、この地を拠点としていた春日氏によって祀られていた神だった。

そして、その女神は『耳が遠い』という特徴があった。


その女神を『巨勢(こせ)姫明神』という。




全国に約1000社ある春日神社。

各地にある春日神社の現在の祭神は、
基本的には次の四神。

武甕槌命 (鹿島の神、藤原氏の守護神)
経津主命 (香取の神、藤原氏の守護神)
天児屋根命 (藤原氏の氏神)
比売神 (天児屋根命の妃)


この『比売神(ヒメカミ)』は、
天児屋根命の妃である
『天美津玉照比売命(アメノミツタマテルヒメ)』
のことだと言われている。

しかし、一説によると、その正体は
『天照大御神』だとも。。


美津玉比売命の神名には、メッセージが隠されていそうだ。


考えてみれば不思議な話で、比売神が天児屋根命の妃であるならば、「比売神」ではなく、
普通に『天美津玉照比売命』と書けば良い。


そこで、元々の春日の神『巨勢姫明神』の存在が浮かび上がってくるのだ。


神様は、隠されることはあっても、消し去ってしまうことはあまり無いかもしれない。

本当に隠したいなら消せばいいのに。。


考えられる理由は主に二つ。

①「祟り」を恐れていた。
②日本の平定の手法は「滅ぼす」ことではなく、
「取り込む」ことだった。


平定する側の神と、平定される側の神の融合である。







では、元々の春日の神『巨勢姫(コセヒメ)』とは
一体どなたなのか。

「こせ」という地名は飛鳥時代にはすでに存在していたようだ。

例を挙げると、

佐賀県佐賀市巨勢(こせ)町
奈良県御所(ごせ)市

岡山県美作市巨勢(こせ)は吉野川流域にある。

奈良県や徳島県の吉野川との繋がりやいかに。




日本書紀では、神武天皇即位より前に、
和珥(ワニ)の坂下に巨勢祝といふものありて」とある。
敵側(支配される側)として登場する
『巨勢祝(こせのはふり)』の「巨勢(コセ)」。


そして、和珥つまり、『和邇(ワニ)』。


また、「巨勢(こせ)氏」という大和国高市郡巨勢郷を本拠地とした古代豪族がいた。

大和国高市郡巨勢郷とは、現在の
奈良県御所市古瀬である

第8代孝元天皇の子孫で、武内宿禰の次男である
許勢小柄宿禰を始祖とする氏族。


神武天皇の敵側にいた巨勢祝と、
孝元天皇の子孫の巨勢氏。

つまり、滅ぼされたのではなく、取り込まれたのである。



『巨勢山座岩椋神社』
鎮座地 奈良県橿原市鳥屋町
祭神 石椋孫神 天児屋根命 倭彦命
※石椋孫神は元々『石椋姫神』だったらしい。

室町時代の文献『五郡神社記』には、
大物主神が三穂津姫を連れて、巨勢山に天降って子を生み、三穂津姫命を巨勢山に岩窟を造って祀ったと記述されている。
※三穂津姫と言えば、えびす様の総本宮
『美保神社』の祭神が三穂津姫と事代主ですね。




次に、『和珥(ワニ)氏』。

和珥氏は、5~6世紀にかけて奈良盆地北部に勢力を持った古代日本の中央豪族である。

祖先は、第5代孝昭天皇の長男『天足彦国押人命』だとされている。

『和爾下(わにした)神社』
鎮座地 奈良県天理市櫟本町字宮山
祭神 素盞嗚命  大己貴命 櫛稲田姫命
※元々の祭神は『天足彦国押人命』だとする説がある。

『和爾坐赤阪比古神社』
鎮座地 奈良県天理市和爾町
祭神 阿田賀田須命 市杵嶋比賣命
※和爾(わに)町には「和珥坂本伝承地」の石標が立っているのだそうな。

祭神の『阿田賀田須命(アタカタス)』は
和爾(わに)氏の祖とも言われている。
※「阿田」の名から、九州の隼人族にも繋がりそうだが、一旦おいといて。

和爾坐赤阪比古神社という社名の
『赤阪比古(アカサカヒコ)』は
阿田賀田須命の別名なのだそうな。


この一帯は『ワニ氏』の本拠地だったのだ。



ここまでの話で面白いのが、
『巨勢(こせ)氏』と『和珥(ワニ)氏』のどちらも、
『欠史八代』と言われる天皇が祖先だということ。
※欠史八代説とは、2~9代までの天皇って存在しなかったんじゃね❓️ という説のこと。


『欠史八代』の説は、破綻している気がします。



そして、欠史八代と言われてしまっている天皇に関連する神社は、『阿波徳島』にあるのですよ皆さん。

例えば、第5代孝昭天皇。

諱は『観松彦香殖稲天皇(ミマツヒコカエシネ』

式内社で、この天皇が祀られているのは
全国でも一社のみ、
徳島の佐那河内村に鎮座する
『御間都比古(みまつひこ)神社』だと言われている。
※「美馬(みま)」の地名も徳島にありますね。




さらに、孝昭天皇の皇子であり、
和珥氏の始祖『天足彦国押人命』は、
春日氏や小野氏、そして柿本氏らワニ系16氏族の祖とも言われている。


もしかすると、岡山県美作市巨勢の 
「美作(みまさか)」という地名は
「ミマの人が作った」からなのかもしれない。




ちなみに、歌聖『柿本 人麻呂』もまた、
『阿波徳島』の人なのですよ皆さん。
それは万葉集をちゃんと読むとわかるのです。
※この話はまた後日。



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さて、巨勢姫の話に戻ろう。


巨勢姫はが遠い女神だった。


ワニ氏の字は『和氏』。


なぜか、用いられる漢字は
「王に耳」で『珥』。


つまり、
「ワニは耳が遠い」



水の中にいるから…❓️




つまり、海神族だというメッセージだろうか。




そして、「耳が聞こえない」と言われている生物がおります。

それは、水の神様。



『龍神』のことです❗





だから、耳が聞こえないことを「龍の耳」で
『聾(ろう)』と書くのである。




巨勢姫は龍神やワニの神格を持ち合わせている可能性がある。




耳が遠い謎の神様をエビス様(事代主)ではないか…と考察した。


耳が聞こえないことを『聾(つんぼ)』とも言う。


エビス様は、『つんぼえびす』とも呼ばれるのである。
つんぼえびすには「積宝恵比須」という字が当てられていることも重要。





さて、エビスである事代主は、「旧事紀」では
「やひろワニ」の姿になって海を越えて
溝咋姫に会いに行ったとされている。

溝咋姫は、『玉依姫』と同一視される女神。

玉依姫は神武天皇の母。


玉依姫の姉『豊玉姫』は
出産の時に「やひろワニ」となった。

姉がワニなら、妹もワニ。


「事代主がワニになって姫に会う」という描写は、ワニの一族に婿養子として入ったことの比喩だとも解釈出来るのではなかろうか。



この姉妹はワタツミの娘、つまり
『海神族』である。



春日神『巨勢姫』。


その正体は、海神族と深い関わりを持つ存在なのかもしれない。




春日神社の境内に、なにやら登りの階段。

まだ時間はある。


登ってみよう。








そして、たどり着いたのが…





なんと、
『神武天皇の銅像』である❗




神武天皇の銅像は、宮崎県の日向と、
ここ阿波徳島にしかないのだそうな。



日清戦争の記念として明治30年(1897年)に建立された。



日向(ひむか)はわかりますよ。 

定説通りなら、神武東征の出発の地ですからね。



でも、なぜ徳島に神武天皇の銅像を建てたのか
ということがとても重要なのだ。



ちなみに、「日向」の名の由来は、日本書紀にその記述が見える。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
景行天皇17年の条
「直向於日出方、故號其国曰日向也」
なおく日(ヒ)の出ずる方に向(ム)けり、ゆえに、
その国を名付けて日向(ヒムカ)という
~~~~~~~~~~~~~~~~~~


第12代景行天皇が実在していたとしたら、どんなに古く見積もっても古墳時代の4世紀前半頃。

つまり、「日向」という地名は、
神武東征よりもずっと後についた名である。

神代の時代は、九州に「日向」という地名が存在しなかったということになる。
※(注)あくまでそういう可能性もあるよね~という仮説ですが。


また、平安時代中期(927年)に完成した
延喜式神名帳には、全国で3132座の神社が記載されているのだが、その内、日向(宮崎県)は7座、
九州全体で54座の式内社が名を連ねている。


ちなみに、阿波(徳島)だけで、
なんと50座もある❗



後ろから銅像。


初代天皇『神武天皇』はおそらく…




阿波出身なのですよ皆さん。




「イワレヒコ」は『アワレヒコ』なのである。





天皇像にお別れを告げ、山をくだる。





途中には、まさかの八坂神社。








眉山をどんどん下ります。

そろそろ時間もない。





滝のお不動さん。



参拝すると、


由緒書きの日付は2/28。

ワタシの誕生日だった🤣




さらにくだっていくと、やっとこさ麓。

そこには、
滝のやき餅のお店。

この春日神社に来る前に見た、錦龍水を使用している。

店員さんは、とても明るくて優しいおばさまだった。

沖縄から来たといったら、色々と教えてくれた。

店の窓から見える景色は、季節ごとに様々な顔を見せてくれるのだとか。

すごく良い店。

餅の形は菊花紋章❗


焼きたてを頂いた。

めちゃくちゃ美味しかった。

おすすめです❗




眉山春日神社は、
なんとも見所の多い神社だった。


阿波徳島は最高です❗




次回、怒涛の阿波徳島編最終回。



つづく。


ではまた❗


参考資料↓


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