ホテルマンは3年で辞めました【40.ある日の日勤】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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 ホテルがオープンして間もなくすると、日勤に女子2名、ナイト勤務に男子2名のアルバイトが入ってきた。


ナイトの男子は後藤という19歳の大学生と、山田という俺より年上の24歳のフリーターだ。


若い後藤の方は仕事の覚えも早かったが、山田の方は中々手強く教えるこっちも根気がいるもで、パソコン操作を間違える度に「何回同じ間違いすんだよ!」と、よくカウンター下で蹴りを入れていたのはBAR時代の癖か俺の性格かは分からないが、今の時代なら問題だろう。


 ある日の日勤で、いつも朝すれ違っていただけで挨拶しか交わした事のないアルバイト女子2名を、改めて橋本さんから紹介される。


佐伯という20歳の大学生と瀬戸という同じく20歳のフリーターで、どちらもおっとりした印象の普通な感じだ。


 忙しいチェックアウトの時間帯が終了し、橋本さんが締め業務に入ったのを確認すると、俺はしばし裏に引っ込んで一服。


この時代はまだ事務所内でもタバコが吸えたのが懐かしい。


「橋本さ〜ん、それ終わったらバイトの2人と休憩入る?」


「えっ、いいの?(笑)」


「いいよ〜!何も無かったらそのまま昼休みにしちゃえば?」


「はーい、ありがとう(笑)」


日勤は朝のバタバタしたチェックアウトが終わると、15時にチェックインが始まるまでの5時間位は暇だ。


日勤はいいな〜と思っていたが、ナイトはナイトで23時位から朝6時位までは暇だった。


日勤の昼食と夜勤の夜食は、別会社が運営しているレストランの方で毎日作ってくれたものを食べるのだが、デカい炊飯器が休憩室にドンッと置かれていてメニューはハンバーグやビーフストロガノフなどのほぼ洋食だった為、俺は1ヶ月もすると飽きてしまい、ナイトの時は夜中に制服のままコンビニに行って明太子を買って食べたりする時も。


それだけ夜中にバターたっぷりの洋食はキツく感じる日があった。


 女子達がそのまま昼休みに入り俺がフロントに1人立っていると、浜田副支配人がガラの悪い小太りの中年男と一緒にロビーに入って来たのが見えた。


副支配人はオープン前から法人営業に連日出ている。


と、副支配人達がそのままフロントに向かって来る。


「みんな休憩中?」


「はい!」


「あ、そう。こちら○○警察のマル暴の刑さん。」


ナント!刑事さんだったのか。


いや、マル暴というのも頷ける。


Hホテル時代は散々マル暴の刑事さん達がBARでタダ酒をかっくらっているのを見ていたが、それが実はホテルの治安を守ってくれている事に繋がっているのだ。


日中、その筋の人達がロビーでふんずり返っていた時、正面から○○警察のマル暴の刑事さんが入って来た途端、それまでふんずり返っていた男がシャキッと背筋を伸ばして座り直していたのには笑えた。


ホテルと近くの警察暑、特にマル暴の刑事さんとは密接な関係なのである。


「ヤナダと申します!」


初めて刑事さんとの名刺交換だった。


それにしても真っ昼間から副支配人の赤ら顔と、ぷーんと酒臭いのが気になった。


ん?営業とはいえ、副支配人は大丈夫か?


〜つづく〜




📕実話に勝る小説は無し📕