ホテルマンは3年で辞めました【41.消えた銀行】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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ホテルがオープンするまでは、柴田支配人と佐竹マネージャーも法人相手の営業に出ていたが、その頃から浜田副支配人は刑事さん達と昼間から飲んでいたらしい。


それもまたシティーホテルとビジネスホテルの違いだろう。


シティーホテルならば、営業部だけでなく広報部もあり、フィットネスで一緒だった同期の田中さんは大卒だった為か、各レストランバーのキャッシャーを1年やった後に営業部にトランスファーされている。


 ある日の朝、その日は海外からの団体客もいて満室だった事もあり、朝早くからチェックアウト客が既に数人並んでいる状態だったが、8時を過ぎた時にそれは起こった。


「おいっ!早くしろよー!急いでんだよ!」と、列の後方から3人組の中にいた40歳前後のメガネにスーツ姿の男が怒鳴った。


フロントマンになって初めての事に驚いたのと同時にムカついた。


その男の順番になるとルームキーをカウンターに放り投げ、急かすように舌打ち。


領収書を渡す時も、乱暴にパッと奪い取るように掴みながら去って行った。


10%引きの法人である事がパソコン画面に表示されていたが、そこにあった社名を見た俺は目を疑った。


それは東京○○銀行。


ホテルの真向かいにある銀行だったのだ。  


えっ?銀行員ってあんな感じなの?


他に並んでる客もいたのに、よくあんな態度できるなと不思議だった。


背広には襟章も付けていただろうし、他の客や我々、もしくは我々の家族にそこの顧客がいたらとは考えれないのか。


ましてホテルは顧客じゃないのか?


俺がホテルの代表なら、すぐに取引を辞めるだろう。


それからも、そこの行員達は夜中に酔っ払ってチェックインする事が多く、皆チェックアウト時にはあからさまにイラつかせた顔をしながら去って行くのを見ると、ああ、こういう勘違いした人間が会社のイメージを悪くするんだなと思っていたが、数年後にふと気づいた時には既にその銀行は跡形も無く消えていた。


サービス業、特に人前に出る職種はいつ誰に見られているか分からない。


そんな事も分からない自称エリートとの思い出である。


〜つづく〜