「前の職場に彼女がいるんだよ。」
「それは不倫って事ですか?」
「ああ、まあそうだな。」
「相手は幾つなんですか?」
「21だよ。」
「奥さんにバレてないんですか?」
「バレてねえよ!別にバレてもいいと思ってるよ。」
「えーっ!何でですか?奥さん幾つですか?」
「女房も俺と同じ28だよ。」
「離婚したいんですか?」
「出来るならしたいな。」
「彼女と結婚したいんですか?」
「そこまではまだ考えてないけど、女房とはもういいかなって感じだしな。」
「23で結婚してるから、まだ5年じゃないですか!しかも子供がいるのに、可愛くないんですか?」
「子供は可愛いよ(笑)」
「じゃあ不倫なんてしないで奥さんだけを愛しましょうよ!」
「それはもう無理だな。」
「どうしてですか?」
「夫婦なんてそんなもんだぜ。」
「いいえ!違うと思います!」
と、俺が思わず熱くなって来たところでマネージャーが戻って来た。
「何も無かったか?」
「はい、大丈夫です」と、松田さんが答えた。
「チェックアウトが多いから、お釣りとか間違わないよう落ち着いてやれよ!」
朝6時を過ぎた頃から、ちょろちょろチェックアウトをする客が下りて来る。
落ち着いてキーボードを叩き、間違わないように釣り銭を渡す。
この動作を毎回繰り返しているうちに気づいた!
あれっ?
Hホテルならリザベーション、キャッシャー、レセプションって、それぞれカウンターが別れていたよな。
これって・・・フロントはシティーホテルよりビジネスホテルの方が大変じゃん!と。
そんな事を思いながらチェックアウトを捌いていると、7時を過ぎた辺りからはフロント前には行列が出来て、まるでスーパーのレジの様な感覚で次々に渡されるルームキーを受け取ってはキーボードを叩いていた。
平日のせいか、チェックアウトタイムである10時前には殆どの宿泊客がアウトしていただけに忙しく、最初から1時間残業となっていた。
中々ハードなナイト勤務だったが、振り返ってみればめちゃくちゃ忙しいのは21時前後と、朝の7時過ぎの2回と思えばそこだけ集中し、あとは力を抜いてやればOKだと、Hホテルのセントジョージで内田さんから学んだヤル時はヤル!抜く時は抜く!という教えを、帰りの電車の中で思い出した俺だった。
〜つづく〜
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